Interview 17.04.12

組織開発コンサルティングの島津清彦さんから学ぶ「禅とビジネスの関係性」前編

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Supershipの5つのバリュー「Super simple」「Super focus」「Super challenge」「Super honesty」「Super ジブンゴト化」。Experts Keynoteは、そのなかの「Super challenge」をテーマにして不定期に開催している社内勉強会で、毎回、外部からお招きした講師に自身の経験をもとにSupership社員のチャレンジに向けたキーワードを教えていただきます。

今回のゲストは「禅」や「座禅」をビジネスに活かす会社シマーズの社長、島津清彦さん。独立される前に勤めていた不動産会社で島津さんが成し遂げたチャレンジとは? また、禅とビジネスの関わりとは・・・?

 

■膨大な数をこなすことで見えてくるもの

――ゲストとして登壇した島津さんがまず紹介したのが「我逢人(がほうじん)」という禅の言葉。「全ての物事は人との出会いから始まる」という意味があり「今日のみなさんとの出逢いから、また何か新しいものが生まれるかもしれませんね」と明るく講演をスタートされました。

「私は今は組織開発コンサルティングをしている株式会社シマーズの社長をやっています。本日はこれまでの人生でのチャレンジと、私がどうやって禅と出会ったのかについてお話をしていけたらと思います。

最初のチャレンジは、新卒として入社した会社の人事部長時代のこと。僕が大学を卒業して入ったのは「千曲不動産(現在はスターツコーポレーション株式会社)」という会社で、当時の従業員は200人くらいでした。その後、売り上げが順調に伸び、現在では東証一部に上場し、社員数もグループで7,000名になりました。

人事の採用のマネジャーから人事部長だった5年間で私は約6,000人の方と面接をすることになりました。基本的にはすべて1対1。1日中ひたすら面接をして、採用するか否かを判断しなくてはいけません。この人はどういった配属がベストなのか、5年後10年後どういったキャリアを積むのが良いのか、営業向きなのか管理本部向きなのか・・・といった内容をすべて頭の中で考える必要があるのです。はじめは大変でしたが、やがて自分の中で6,000人分の人となりやビジネスの適性を分析できるようになりました。だいたい5分くらい目を見て話せば、その人の傾向や課題などが分かります。

私がこういった能力を身に付けることが出来たのは、この膨大な数をこなすというチャレンジがあったからだと思います」

 

■現場の人に「本気度」を理解してもらうためには

――島津さんの次のチャレンジは42歳のとき。新たにグループ会社になったビルメンテナンス事業会社の社長を任されたことです。社員は約600人。その会社は平均年齢が高く、島津さんよりも年配の方も多かったそうです。

「ビルメンテナンス会社の事業は、オフィスビルの清掃や警備、設備のメンテナンスなどといった裏方作業を請け負うものでした。そして、その企業のマネジメントを行うのが私の仕事でした。しかし、1年目にして大きな赤字を出してしまったんです。なんとか赤字を取り戻すため、当時の私は全社員の前で“次の1年で必ず黒字にしてみます”と宣言しました」

 

――宣言をしたものの、はじめのうちはなかなか状況は変わらなかったという島津さん。どのようにして、従業員たちの心を動かしたのでしょうか?

「私が宣言をしたからといって、 社内では“本社から来たばかりのサラリーマン社長に何ができるのか”といった雰囲気がありました。そこで、まず私は、現場を見て回ることにしたんです。朝の5時から作業着を着て、社員の方とビルの巡回を一緒にしたり、清掃のパートさんに“どういうことをすれば綺麗になるんですか”と聞いてまわりました。

社長といえど清掃の仕方はわかりませんし、設備のメンテナンスの知識もありません。そして、ただ数字だけをあげつらったところで誰も共感はしてくれないものです。現場について学ぼうという姿勢を理解してもらうことでようやく“この社長は会社を本気で変えようとしているんだな”と社員に認めてもらえるようになりました。その結果、1年で黒字化を達成できました。私は4年3カ月社長を務め、就任時には大きな赤字を出したものの、在任中の5期では大幅黒字5億5千万円の損益を改善することができました。

 

――社長として従業員たちとコミュニケーションを取るなかで、あることに気がついたと島津さんは言います。

「私たちが安全に快適なオフィスで仕事ができるのは、このビル会社の方たちのように清掃や設備のメンテナンス、警備をしてくれる人たちがいるからだということに気が付きました。すると、自然と感謝の気持ちが湧いてきて。その感謝の意を表すことで、社員が同じベクトルに向かって頑張れるようになっていったんです。それにともなって業績も上がりました。周囲に対して感謝を忘れないこと、これが大事なんです」

 

■苦しかった経験が次の職場でも役立った

――ビルメンテナンス企業の経営を軌道に乗せたあと、本部から受けた次なるチャレンジは、同グループで不動産仲介業を営む中核会社の社長業。こちらも同様に改善すべき点が多くあったといいます。

「ここでも現場に赴く姿勢を大切にしました。全国約百店舗を回り、キレイな店内か、お客さんが入店したときの対応はどうか、スタッフ同士で連携はとれているか、などをヒアリングしたり、その改善点を各店舗にフィードバックしたりしていました。また、新規出店や買取再販法人部門の立ち上げなどにも携わって、退任する期には過去最高益を出すことができました。9ヵ月という短期間のなかで結果を出すことができたのは、それまでの経験が役に立ったからだと思います」

 

■起業したきっかけは「3.11」

――苦難を乗り越え、社長として着実に業績をあげた島津さん。そんな彼が起業を考えたきっかけは2011年に起きた東日本大震災だという。

「私は新浦安に住んでいたのですが、震災の影響で地面が液状化し建物が26㎝も傾きました。傾いたまま生活すると三半規管がおかしくなってしまい、気持ちが悪くなるんですよね。“当たり前の日常”が崩れてしまった経験はそれだけではありません。上下水道が断水し、トイレも使えない、水も飲めない、シャワーも洗濯も出来ない状況が1ヵ月半も続きました。かなりの行動が制限されてしまい、精神的にもまいりましたね。やっと水が出た時は、本当に感動しました。水とはなんとありがたいものかと、普段いかに無駄に使っていたのかを実感させられました」

 

――当たり前のことが当たり前ではなくなってしまう・・・。その経験は、島津さんに自分の人生を深く考え直すきっかけを与えてくれたといいます。

「改めて人生について考え直してみた結果、不動産ではなく“人材育成や組織開発、人の活性化を生涯の仕事にしたい”という思いが強くなっていきました。それからの私の行動は早かったですね。退職届を出した1ケ月後には会社を辞めました。そして自分の心の赴くままに起業したんです」

 

——独立することで、さまざまな人との出逢いがあったという島津さん。その中で「島津さんの生き方には覚悟が見られる。禅に近い」という声や「お寺に行き、禅を究めてみてはどうか」といった意見があったといいます。それが島津さんと禅を結びつけるきっかけになりました。

「禅について調べてみると、スティーブ・ジョブスや安倍総理などといった世界のリーダーたちの多くは最終的に禅に辿り着いていることを知りました。他にも選択肢はありそうなものの、なんで禅なんだろう。この理由を知りたいという欲求が高まっていったんです。

そこで青森にいらっしゃる禅の師匠を紹介していただいたんです。その方とお話するなかで、実際に禅を体験してみたいという気持ちが湧き上がってきて、気がついたらその場で弟子入り志願をしていました。ここで言う弟子入りというのは出家、つまり正式に僧侶になるということ。師匠にも出家の覚悟があるのか問われましたが、直感的に禅を知りたい、自分の生き方を見つめなおしてみたいと考え、弟子入りを決めました」

 

会社の経営をしながら禅の道も探求するという、二足のわらじを履くことになった島津さん。後編では、禅の思想とビジネスの関係について詳しいお話を聞いていきます。

次回もどうぞお楽しみに!

後編はこちら

 

<島津清彦さんプロフィール>
経営・人事・組織を熱くする「発熱組織プロデューサー」。
前職スターツグループでは、取締役人事部長として急成長する組織の制度・風土構築を推進。特に評価制度を中心とした人事制度の内製化に強みを発揮。またグループ会社の経営トップとして、業種や職種を問わず、現場との粘り強い対話を特徴とした経営スタイルで事業や風土の改革を推進。
これら現場の「実践知」を日本の企業に提供すべく、コンサルタントとして起業。

まとめ
島津さんの講演の前半となる今回。たくさんのキーワードがあるお話のなかからポイントをピックアップしてみました。

①膨大な量をこなすことで見えてくるものがある
5年で6000人という数の面接をこなした島津さんは、少しの会話で人物の特徴やビジネスの適正が分かるように

②現場と向き合う姿勢を大切にする
会社の業績をのばす秘訣は現場を知り、現場の人と共感をする姿勢

③”当たり前の日常”が崩れることで見えることがある
3.11で当たり前だった日常生活が崩れたことが、自分が本当にやりたいことを考えるきっかけとなった
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