Interview 17.05.12

成功するビジネスは“不”から生まれる。インキュベータ代表 石川明氏流のビジネスメソッドとは?後編

TAGS :
  • コミュニケーション
  • セミナーレポート
  • ビジネス
  • マーケティング

Supershipの5つのバリュー「Super simple」「Super focus」「Super challenge」「Super honesty」「Super ジブンゴト化」。Experts Keynoteは、そのなかの「Super challenge」をテーマにして不定期に開催している社内勉強会です。毎回、外部からお招きした講師に自身の経験をもとに、Supership社員のチャレンジに向けたキーワードを教えていただきます。

今回のゲストは、主に社内発の新規事業開発に特化した専門会社、株式会社インキュベータの代表取締役 石川明さん。前編では、石川さんのリクルートやAll Aboutでの挑戦について伺いました。

後編となる今回は、ビジネスの本質について迫ります。


■事業=「不」を解消すること

―事業とはそもそも何なのか、働くとはどういうことなのか。第三者的な目線で事業を捉えることの大切さについて石川さんは語ります。

「事業とは”不”の解消です。ここでいう不とは、世の中の不平や不満、不便、不利、不都合、不幸など。これを解消すると誰かが喜んでくれてビジネスになる、と私は考えています。つまり、世の中にある”不”を探すことは、ビジネスチャンスを探すことにもつながるということです。ここからは、”不”を探すためのオリジナルメソッドを紹介したいと思います。1限目が国語で、2限目が算数、3限目が理科、4限目が社会。この4つのプロセスを追っていくことで、事業の本質が見えるようになればと思います」

 

■1限目:国語/””不”をしっかりと捉える

―オリジナルメソッドは「国語」からはじまります。ビジネスと国語。一体どんな関係なのでしょうか。

「国語の試験問題を思い出してみてください。典型的な設問に”主人公はなぜ●●したのでしょう?”と問うものがありますよね。行間を読んで、主人公や作者、著者といった人がどんな気持ちでいるのか慮るということが国語の本質だと思います。

これをビジネスに置き換えると、マーケティングの基本につながります。誰が、どこで、何に、どう困っているのか、これが分からないままでは、何を考えても何をしても上手くいかないはずです。ビジネスにおいてはもっとも大切な思考だと思います。

つまり、これが理解できていれば、事業価値を高めることができます。例えばAll Aboutが読者にとって”より良い”情報提供をしよう!と考えたとします。そうすると、詳しさ、解説の分かりやすさ、図表の多さ、目新しさなど、いろいろなものが”より良い”に当てはまってしまい、ガイドさんにどういった記事を書いて欲しいのか依頼しにくくなるのです。そんなときはAll Aboutが解決する”不”について考えてみるのが有効です。All Aboutが解決したいのは”検索だけでは辿り着けない悩みへの答えを提供する”ことでした。これがわかると、編集者はガイドさんにどういった情報が欲しいのか依頼しやすくなり、サイトの価値も上がります」

 

■2限目:算数/”不”の総量を測り、ビジネスになるか判断する

―続いて2限目の算数では、第1段階で把握した”不”の総量を測ります。対象とする“不”が大きいほど狙えるビジネスチャンスも大きくなります。

「”不”の総量を測るメソッドは以下の3つです。

①”不”を抱えた人の数

②頻度の高さ

③深刻さ

これらを総合して、3つの掛け算で“不”の総量に目分量をつけ、これらを解消できたらどれだけ大きな事業に繋げられるだろうか、と考えます。国語からやって次に算数という順序を間違えないことが大事です。マクロな数字から商売は生まれません。ここまで行くと『上手く“不”を解消できれば、何か商売になりそうだ』という判断ができるようになり、次の理科と社会でさらにビジネスとしての可能性を探ります

 

■3限目:理科/”不”が生じる理由を探る

―算数に続く理科の授業。ここでは、なぜこんな”不”が生じるようになってしまったのか、という理由を探っていきます。

「”不”の理由を解明するには、ロジカルシンキングが重要になってきます。”不”を分解したり、比較して、それが生じた理由を明確にしていく、ということです。理由が見つかるとソリューションも思いつきますが、ここで他社でも気付いているような理由しか思いつかないと、ソリューションも似たりよったりのものになってしまいます。そうなると大成するビジネスは生まれません。意外とこういうことが遠因になっているかもしれない、と切り口を変えて、他ではまだ気づいていない“不”の理由を探しだすことが重要です」

 

■4限目:社会/”なぜその”不”は解決されてこなかったのか

―最後の授業は、社会ではさまざまなサービスがあるにも関わらず、まだその“不”が解決できていないのはなぜなのか、ということについて考えていきます。

「理由も明らかになっていて、解消されているはずのものが解消されていない、という場合、しかるべき背景が必ずあります。その背景をおさえるのが社会です。

この背景をおさえる際によく使われるのがPEST分析です。政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの側面から見ていくと、なぜこの”不”がいまだに残っているのかという社会的背景を浮き上がらせることができます。

社会的背景には業界慣習や生活習慣がある場合もありますが、こういった大きな理由がないのに解消できていない場合は、逆に大きなビジネスチャンスになるといえるでしょう」

 

■会社でのキャリアを考えるときに大切なキーワード

―仕事とは、世の中の役に立ち、喜ばれ、その対価を得ることだと語る石川さん。それをどのように実現するかによって会社へ所属するかどうかが決めればいいといいます。

「仕事の本質は、世の中に対して貢献をしたい、役に立ちたい、といった誠意(Honesty)です。

会社というのは個人がやりきれないようなことを大勢でできる仕組みのようなものだと思います。この仕組みをうまく活かして、自分が世の中に対してどんな仕事ができるのか、ということを考えるのが企業人。これはやらされているという意識ではなかなか難しいものですね。会社の仕事を自分にとって有意義な機会にするためには、”ジブンゴト化”できるかどうかにかかっていると思います。

―また、会社での個人のキャリアを考える時に大事なキーワードは3つあるという。

「自分の” WANT”と”CAN”、周りからの”NEED”のバランスを意識しながら仕事をしましょう。自分が”やりたいやりたい”と叫んでいても周りは聞いてくれません。会社では、上司やクライアントの期待にも応えなくてはならず、自身のスキルも伸ばしていかなければなりません。

新卒で入ったばかりの頃は、WANTはあるけどCANが全然追いつかない、だからNEEDも期待されない。キャリアを積んでいくにしたがってCANがだんだんと大きくなり、周りからのNEEDも高まります。しかし、そうなるとWANTの部分を忘れてしまう人も多いのです。改めてそれを思い返すことが大事だと思います。そして、この3つの輪が重なっている部分を大きくしていきましょう。

―最後に石川さんが語るのは「自分から働きかけること」の大切さ。

「僕は今ビジネススクールで教員をしており、そこで社会人の学生さんともよく話をします。会社のいいところも、改善して欲しいところについても、頻繁に耳にします

僕としてはその組織のリーダー的立場になっていく人には、その批判を直接経営者に進言して、会社を自分にとっての良いチャレンジの場に変えて欲しいと思っています。そのためには、自分に採れる手はいろいろ試してみていただきたいです。例えば社長の挨拶などから言い回しを借りて、進言する際の言葉に混ぜてみてはどうでしょうか。そうすると相手も、自分の話を聞いているんだな、と感じ、聞く耳を持ってくれるはずです。このように、自分と会社の接合点を増やしていくことで、皆さんにとっても働きやすく、会社も皆さんのことを適正に評価してもらうための努力はいろいろあると思います。この重なっている部分のことを、僕は” 錦の御旗”と呼んでいます。会社の中なかで新しいことに取り組んでいく際には、この錦の御旗というのを掲げていくのが有効かもしれません。本日は、ご清聴ありがとうございました」

 

前編はこちらから

 

<石川明さんプロフィール>

1988年、株式会社リクルートに入社。新規事業開発室のマネージャとして、多くの新規事業の立ち上げに関わった。2000年には、リクルート社の新規事業として株式会社オールアバウトを起業。現在は、株式会社インキュベータの代表取締役を務める。著書『新規事業ワークブック』(総合法令出版)、『はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ』(自由国民社)がある

石川さんの著書はこちら↓
新規事業をカタチにする石川流メソッド「新規事業ワークブック

社内に特化した新規事業のバイブル「はじめての社内起業

まとめ
石川さんの講演の後編となる今回。たくさんのキーワードがあるお話のなかからポイントをピックアップしてみました。

①事業=世の中の”不”を解決すること

②新規事業を考える際は、4つの“不”への視点を持つ
・国語→”不”をしっかりと特定する
・算数→”不”の大きさを測る
・理科→”不”が生じている原因を探る
・社会→これまで”不”が解決されなかった背景を考える

③会社では、自分の「WANT」と「CAN」、周りからの「NEED」が重なる輪を広げよう
  • Goolgeplus
  • はてな