セミナーレポート

AI×データでマーケティングはどう変わるか!? 〜KDDI×ARISE×Supershipの挑戦〜 #デジタルマーケターズサミット2018 Winter セミナーレポート

2月28日に開催された「デジタルマーケターズサミット2018 Winter」の基調講演パネルディスカッションに、Supership マーケティング事業本部 データビジネスセンターセンター長 佐野宏英が登壇しました。

基調講演には、KDDI株式会社 バリュー事業企画本部 DMP推進部長 山本隆広様、株式会社ARISE analytics サイエンスディビジョン データサイエンティスト 桝本智志様も登壇され、「AI×データでマーケティングはどう変わるか!? 〜KDDI×ARISE×Supershipの挑戦〜」と題したパネルディスカッションを行いました。モデレーターは株式会社インプレス Web担当者Forum編集長 安田英久様が務められました。

本記事では、パネルディスカッションの内容をサマリーしてレポートいたします。

基調講演の様子

「au経済圏」最大化にビッグデータ活用は最重要ポイント

KDDIは非通信領域において成長軸を確立するために、「通信企業」から「ライフデザイン企業」への変革を推進しています。事業モデルとしては、従来の軸にしてきた通信サービスに、決済・物販・エネルギー・金融サービスなどを加えて「auライフデザイン」として総合的に提供する事で、auのお客さま基盤上の新たな経済圏である「au経済圏」の最大化を目指しています。

KDDI株式会社 バリュー事業企画本部 DMP推進部長 山本 隆広様

KDDIが提供する各サービスを横断し、データを活用したお客様体験価値の向上を推進する部署を統括する山本様によると、KDDIは「auライフデザイン」構想に基づき提供しているauスマートパスなどの各種サービスをはじめ、実店舗のauショップなど、様々なタッチポイントからビッグデータを収集し、“お客様をより深く知る”ためのAIを活用したデータ分析を、分析パートナーであるARISE analyticsとともに行っています。

AIを使った「5W1Hの最適化」でパフォーマンスは向上

KDDIでは、ウェブ、ショップ、Eメール、アプリなど、あらゆるチャネルを通じてお客様一人ひとりが求めるサービスを提供するための分析基盤として、その中心にビッグデータを据えており、ARISE analyticsはこのビッグデータを分析するパートナーとしてKDDIと協業を行っています。

株式会社ARISE analytics サイエンスディビジョン データサイエンティスト 桝本 智志様

ARISE analytics データサイエンティストの桝本様によると、「お客様とのコミュニケーションにおける“5W1H”を最適化し、心地のよい接客を実現」することがARISEのミッションなのだそうです。

5W1Hは、一般的には、いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)を指しますが、本パネルディスカッションにおいて特にフォーカスをあてて語られたのは「世の中にいろいろなサービスがあるなかで、お客様が本当に求めているものを求めているタイミングで届けるためにどういったコミュニケーションをとっていけば良いのか」という点でした。

わかりやすいイメージをあげると、お客様全員に同じ内容のメルマガを一斉に投げるのでなく、個々に適したメッセージを届けたり、平日のお昼に電話をかけても仕事で出られないお客様には最適な時間でコールをしたり、というように、お客様にとって心地よいと感じていただけるタイミングや手法を採用したコミュニケーション施策を、KDDIでは昨年の夏頃から取り入れて実施しています。

細密なコミュニケーション施策を設計するためには、AIを活用してビックデータを様々な角度から分析する必要があります。時間もリソースも必要にはなりますが、こういった5W1Hの最適化は「きちんと売上にも良い影響を与えている」そうです。

<1>ECサイトにAI分析を取り入れた事例

au WALLET Marketは、タイムセールで質の良い商品がお得に買えるECサイトです。商品の入れ替わりが激しく、すぐに売り切れてしまうことが多いサービスのため、レコメンドとして表示する商品の精度を上げるのが難しいという課題がありましたが、このレコメンドのシステムにAIを活用した「協調フィルタリング(※)」を取り入れることでこの課題を解決しました。
協調フィルタリング自体は従来より使われている手法ですが、このロジックを応用して売り切れた商品に似たものをおすすめするレコメンドエンジンを構築しました。
たとえば牛肉をおすすめするとして、松阪牛や飛騨牛の違いは見た目だけでは人間には判断しにくいものです。イヤホンでも同じく、デザインを見ただけでは機能や特長を正確には判断しにくいため、商品説明の内容や閲覧情報などを数値化して同じ特徴の商品を紐付けるようにしました。さらに、機械学習を行っていくことでレコメンドされる商品の最適化を図っています。
新しいレコメンドエンジンの導入で、昨年12月計測時点でCVRが1.3倍ほどにあがっており、サイトの売上向上に良い影響を与えることができたそうです。

時期により変動はあるものの、常時4,000以上の商品を取り扱うサイトで、かつ、2週間に1回くらいのペースで大幅に商品の入れ替えが行われるサービスだからこそ、AIの活用価値があります。

また、サービスを横断しておすすめ商品を出すことにも取り組んでいるとのこと。たとえば、KDDIのブックパスというデジタル書籍の読み放題サービスで子育て系の書籍を読んでいるお客様に、子供服やおむつをレコメンドするイメージです。「このように、サービスを横断した利用に展開が可能な点もAIの活用価値」とのことでした。

※協調フィルタリングとは、ある対象者が商品をチェックまたは購入したデータと、対象者以外がチェックまたは購入したデータの両方を用いて、その購入パターンから人購入者・非購入者同士の類似性、または商品間の共起性をアソシエーション分析(相関分析)で解析し、対象者個人の行動履歴を関連づけることでパーソナライズされた商品を提示することができる手法のこと。

<2>サードパーティデータとの組み合わせでAI分析を行う事例

ここまでは自社データを軸にしたAI分析の事例をお話してきましたが、ここからは外部のオープンデータを活用したAI分析の話に移ります。事業を拡大する上で、まだ自社製品やサービスを経験していないユーザーにどうアプローチしていくのか。そのためにはオープンなサードパーティデータを活用していくことも重要です。
こうしたサードパーティデータを潤沢に保有しているのがSupership社です。

Supership株式会社 マーケティング事業本部 データビジネスセンター センター長 佐野 宏英

たとえば、コスメ系サイトの閲覧ユーザーのように属性を推測しやすい場合はよいのですが、ニュースサイトの閲覧ユーザーといったような属性を掴みにくいターゲットを人間が分析しようとした場合、様々な切り口から根気よく分析する必要があり、時間もリソースにもコストがかかってしまいます。サードパーティデータのように膨大なデータこそAIの活用価値があると思います。
広告配信のプランニングにおいては、ターゲティングメニューを軸にユーザーをセグメントするのが一般的ですが、AIでの分析を取り入れることで、まずリーチしたいユーザーを決めたうえでそこからターゲットをセグメントしていく、といった、ユーザーありきの発想で施策を立てることができるようになります。

●AIで引越しを予測

サードパーティデータのAI活用でどんなことができるか、具体的な事例をひとつあげると、たとえば、向こう1ヶ月で引っ越ししそうな人を予測するアルゴリズムの開発・提供をしています。
引っ越しサイトを見ている人のなかには、実際に引っ越す予定がない人や結局引っ越しを見送る人などがたくさんいるかと思います。むしろ、サイトを見ている人のなかでは、実際に引っ越す人のほうが少ないということのほうが多いかもしれません。
そこで、Supershipが保有するサードパーティデータやセカンドパーティーデータを組み合わせたAI分析によって、実際に引っ越すユーザーの特徴をみつけて、引っ越しサイトを見ている全てのユーザーに広告を出すのでなく、引っ越し意欲の高い人に絞ったターゲティングが実現可能となります。

●AIで少ないデータから類似ユーザーを拡張

さらに、AIによるデータ分析の特徴をあげると、「類似ユーザー拡張アルゴリズム」というものがあります。
サイトに来ていて、かつまだコンバージョンしていない潜在ユーザーは、サンプルとなるデータが少ないためユーザー像が掴みづらく、適切なアプローチやターゲティングが難しいという課題があります。そこで、膨大なサードパーティデータとセカンドパーティーのデータをディープラーニングや機械学習で分析することで、コンバージョンしたユーザーと類似したユーザーを潜在ユーザーとして見つけ出すことができます。
こうした「拡張配信」はDSPなどで既に使われているターゲティングメニューと内容はほとんど同じですが、分析に使用する変数の規模が数十万という桁違いなボリューム量になっているので、技術は非常に高度なものです。

●AIでアプリを横断したユーザーIDの統合

もうひとつ、AI活用ならではの分析手法としてあげられるのが「イントラデバイスID推定」という技術です。
いまや1人のユーザーがPC、スマホ、タブレットと複数の端末を保持している時代ですが、これらをデバイスを横断してひとりのユーザーとして特定するID統合技術に関しては、耳にしたことのある方もいるかもしれません。
アプリやブラウザを跨いだユーザーデータの統合技術である「イントラデバイスID推定」は、これまではFacebookにアプリからアクセスした場合とSafariのブラウザでアクセスした場合ではそれぞれ別の人として見えてしまっていたものを、ユーザーベースできちんと紐づけていくことができます。
こうした技術により、これまで別人に見えている人を統合して個として特定させることができれば、コミュニケーションコストを減らすとができ、広告主様にとってメリットとなるだけでなく、しつこく同じ広告を配信してしまうことも防ぐことができるので、結果としてユーザーエクスペリエンスの向上にもつながります。

まとめ


パネルディスカッションを通したポイントとして最後に語られたのは、AI活用において陥りがちな誤解を認識することです。
「AIは万能だ」と思いこみ、とりあえず導入すればなんとかなる、という過度な期待は大きな間違いで、用途や目的に合わせて、AIが力を発揮する領域と人間の解釈が必要な領域を正確に見極めたうえで、戦略的に取り入れていくことがまず重要なポイントです。
また、「すぐに効果を発揮する」というものでもないため、長期的なプロジェクトとなります。そのため、組織として取り組んでいくためには、顧客ニーズを汲み取って還元するPDCAサイクルを短期的にまわして、小さな成果を積み重ねることでしっかりと組織のなかで仕組みを定着させていく必要があります。
そして、学習の精度をさらにあげていくために良質なインプットデータと継続的なチューニングを絶えず行うことが重要です。
そのためにはデータを集めることが大事ですが、当然ながらしっかりとお客様の同意を得ながら行って、管理にも最大の注意を払うことが必要となります。

このように、AI×データによって高度なマーケティングが実現できることは確かです。
しかし、成果の最大化を図るには以上のポイントを抑えたうえで、戦略的な活用を行う必要があります。

なかでも、AIの活用領域の正しい見極めができるかどうかがプロジェクトの明暗をわける重要なステップとなるため、見切り発車でプロジェクトを進めることのないよう、じっくりと検討してほしい、と語られ、パネルディスカッションは盛況に終わりました。

 

(写真撮影:山田井ユウキ)

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