「クライアントの利益最大化」を旗印に、戦い方を変える ── CEO稲葉が語る、Supershipのこれから

コラム

「クライアントの利益最大化」を旗印に、戦い方を変える ── CEO稲葉が語る、Supershipのこれから

KDDIグループのデータテクノロジーカンパニー・Supership。世界で進む構造変化が、日本の市場にも及びはじめた2026年に、当社は新たな体制と事業方針を掲げ次のステージへと踏み出しました。「クライアントの利益最大化に貢献する」という旗印のもと、どこで、どう戦うのか。Supership 代表取締役社長CEO 稲葉 真吾が語ります。

稲葉 真吾 Supership株式会社 代表取締役社長CEO

流通業界、IT業界、ゲーム業界などで、新規事業およびプラットフォーム事業の戦略策定・運営を歴任。2015年のSupershipグループ立ち上げに参画し、2018年10月にSupership株式会社 取締役副社長COO、2019年12月にSupershipホールディングス株式会社 代表取締役社長CEOに就任。2024年4月、持株会社Supershipホールディングスと事業会社Supershipの統合に伴い現職に就任し、グループ経営全般および事業会社経営を統括する。

Supershipのコアコンピタンスであるデータとテクノロジーを核に、「クライアントの利益最大化への貢献」を掲げ、グループの成長を牽引している。

これからの戦い方:世界で起きている構造変化が、日本にも

——2026年、Supershipは新体制へと移行しました。まず、このタイミングで戦い方を組み替えた背景を教えてください。

稲葉:ひとことで言えば、ビジネスの前提がここ数年で根本から変わってきたからです。世界全体で同時に起きている構造変化があり、そこに日本ならではの事情が重なっている。この両方を見ないと、これからどこで戦うべきか、何で勝つべきかを決められないと考えました。

——世界全体で起きている変化、というと何が大きいでしょうか。

稲葉:大きく二つあると思っています。

一つ目は、AIの浸透により広告運用そのものが変わってきていること。事業会社が自社で運用するインハウス化の流れに加えて、運用そのものをAIエージェントが回す時代に入りはじめています。配信も、改善も、AIが回す。そうなると、運用の上手さよりも、その手前にある「どんなデータを、どれだけ正しく持っているか」「どんな素材を、どれだけ早く生み出せるか」が差になってきます。

二つ目は、リテールメディアの急成長です。流通の現場、それ自体がひとつのメディアになっていく。買う直前の文脈で、消費者と直接繋がることができる場が生まれている。世界中でこの領域に投資が集中しはじめています。

——そこに重なる日本ならではの事情はどういったものですか。

稲葉:日本は今後も人口減少が続き、マーケット全体のパイが縮んでいくのは明白です。だからこそ企業も成長戦略を変えざるを得ません。これまでは「いかに新しいお客さんを獲得するか」に多くのリソースを集中させてきた企業が多かったと思います。今は、「すでにいるお客さんに、どれだけ長く・深く関わってもらえるか」「LTV(顧客生涯価値)をどう高めるか」が事業の命題になっている。世界的な構造変化に、日本特有のLTV重視が重なって、企業のマーケティング投資のあり方が大きく動いています。

——その変化を支える、表に出ない動きもありそうです。

稲葉:はい。これらの変化の土台として、「裏側のデータ整備」がますます効いてきます。AIが人の意思決定に深く関わるようになればなるほど、「そのおすすめは、どんなデータに基づいているのか」「誰のための最適化なのか」が必ず問われます。

表に出るプロダクトの差ではなく、その背後にあるデータの集め方・扱い方の正しさが競争力を左右していく。私たちが、KDDIがお客さまから第三者提供の同意を得た属性情報及びサービス利用情報を、プライバシーに配慮した形で扱える基盤にこだわってきたことの意味は、ここで一段と大きくなると考えています。

——これまでSupershipが追求してきた強みを活かしながら、市場の変化に対応するために、戦い方を変えていくということですね。

稲葉:「変える」というより、「本来やるべきことを、市場の前提に合わせて選び直した」という感覚に近いかもしれません。私たちはKDDIのデータ基盤と技術を土台に、広告からメッセージング、データ分析、リテールメディアまで幅広い事業領域を手がけ、それぞれの事業が独立して強みを磨いてきました。

だからこそ次は、その力を「クライアントの事業成果にどう貢献するか」という一つの問いに束ね直したい。個々のプロダクトを並べて売るのではなく、クライアントの課題を起点に、必要なものを組み合わせて成果に変えることに立ち返ろうと考えました。そのために、今回は「クライアントの利益最大化に貢献する」という方針を改めて明確に掲げました。

強みを発揮できる領域に、資源を集中する

——戦い方を組み替えるうえで、事業面でも大きな転換がありました。

稲葉:ここ1〜2年で、事業ポートフォリオを相当見直しました。私たちが持っている経営資源(人材、技術、資金)が、本当に強みとして活きる領域はどこか。そこに集中させて、強みを発揮しづらい領域からは思い切って引いていく。事業ポートフォリオの選択と集中を進めて、次の成長に向けた体制を整えてきた、という言い方が正確だと思います。

——具体的には、どんな組み替えをしたのですか。

稲葉:たとえばデジタル広告の領域では、プラットフォーム単体での競争から、これまで磨いてきた配信や運用の技術をCTV(コネクテッドTV)や、プログラマティックDOOH(屋外のデジタルサイネージなど)、そして小売の店頭での販促といった、新しい場に張り替えていく方向に動いています。同じ技術でも、活きる場所が変わってきている。だから、活きる場所に技術ごと移していく。

これは過去の事業を否定する話ではなく、それぞれの事業が独立して力をつけてきたからこそ、その技術と人材を、次にいちばん価値が出る場所に再配置できると捉えています。

——事業の立て直しは、組織の雰囲気にも影響しますか。

稲葉:影響していると感じます。いまは、“成長のために何に投資するか”を考えることに、組織の重心が移ってきている実感があります。

組み替えてきた事業の輪郭も、社内では具体的な動きとして見えはじめています。だからこそ、今が次のステージに向けて足場を固めるタイミングだと思っています。

軸足は、リテールメディア

——では、その「次のステージ」で、Supershipは何を軸足にしていくのでしょうか。

稲葉:リテールメディアです。先ほどお話しした世界で起きている変化と、日本特有のLTV重視が、ちょうど交差するポイントがこの領域だからです。

生活者がAIに相談して物事を選択する時代において、購入を決定する直前の文脈は、企業が「選ばれる」ための最有力の接点になります。広告運用がAIで自動化されていく流れの中でも、買い場の近くで持つデータと面がこれからの差を生むといえるでしょう。

そして、リテールメディアそのものが、世界的に投資の集まる成長領域になっています。世界の構造変化と日本市場の現実が、同時に向かう先がここにあると捉えています。

——なぜリテールメディアにそれほどの確信を持てるのですか。

稲葉:まず、これは私たちが持っているアセットの組み合わせが最も噛み合う領域だからです。広告配信の技術、データ基盤、レコメンドや検索の技術、メッセージングのチャネル、そして店頭の販促支援。それぞれ独立した事業として磨いてきたものですが、リテールメディアは、その全てをつなげて初めて本当の価値が出る領域です。

加えて、データの扱い方の正しさが本当に問われる領域だということもあります。買い物という、生活者の意思決定に最も近い場でデータを扱う。だからこそ、先ほど触れた、お客さまの同意を前提にプライバシーに配慮してデータを扱える基盤を持っていることが大きな意味を持ってきます。技術と、データの土台と、運用の体制。この三つが揃ってはじめて、流通のお客さまにも、生活者にも、安心して使ってもらえるリテールメディアになります。

——もう一つ大事にされている軸があると伺いました。

稲葉:リテールメディアを軸足に据えながら、もう一つ大事にしたいのが、クライアントに対して戦略の立案から実装、運用、改善までを一気通貫で伴走することです。「運用そのものをAIエージェントが回す時代」が来るほど、事業会社のマーケティング部門は、自分たちで内側にノウハウを蓄えて“インハウス化”を進めていくフェーズに入っていきます。

私たちが提供したいのは、その内製の動きを置き換える支援ではなく、内製では届きにくい上流の戦略設計から現場で動く実装、そしてその後の改善までを地続きで一緒にやる支援です。広告だけ、データだけ、CRMだけ、と切り分けるのではなく、クライアントの事業課題を起点に必要なものを組み合わせて成果に変える。そういう関係性をクライアントと作っていきたいです。

——リテールメディアとクライアントへの伴走支援。この二つは、どうつながっているのですか。

稲葉:その根っこは同じです。どちらも「クライアントの事業成果に、データと技術でどこまで近づけるか」という問いに対する答えで、違うのは起点となる接点です。リテールメディアは、流通の現場で、買い物の文脈の中で生活者と接する。クライアントへの伴走支援は、事業会社のマーケティング戦略の上流から入って、現場までを切れ目なくつないでいく。入口は違っても最後にやっていることは同じです。

そして、これを動かすのがSupershipの「3機能体制」です。「ビジネスコンサルティング機能」「プロダクト機能」「マーケティングアーキテクチャ機能」の3つで動かしており、ビジネスコンサルティングは稲田、プロダクトは髙橋、マーケティングアーキテクチャは松原が現場を仕切っています。リテールメディアもクライアントへの伴走支援もこの3機能が連動してはじめて成り立つもので、どれかが脇役という構造ではありません。それぞれの機能が、Supershipならではの「上流から現場までを地続きにつなぐ強み」を別の角度から担っています。

ここから先、3機能が現場でどう組み合わさっているかは、本連載で続けて掘り下げていきます。各領域のリーダーがそれぞれの方針を順に語っていく予定です。

これからのSupership

——これからのSupershipについて、いくつか聞かせてください。事業成長そのものに向けてはどのようなアプローチを考えていますか。

稲葉:有機的な成長を軸にしながら、非連続の成長を実現するためには外部企業とのアライアンスや、M&Aも有効な選択肢として考えています。足りないピースは自分たちで内製対応するより、外部企業と組むことで成長スピードや確度を高められる場合もある。そこへの感度は上げていくつもりです。

——最後にあらためてお伺いしますが、Supershipはどのような価値を提供する会社と言えますか。

稲葉:アドテクノロジーの会社というイメージを持たれている方も多いと思いますが、その技術を多面的に応用展開し、データ、メッセージング、リテールメディア、CXの設計まで、クライアントの事業成長に関わる幅広い領域を持っています。

今回、軸足をリテールメディアに置き、あわせてクライアントに戦略から実装まで一気通貫で伴走するという二つの「戦い方」をはっきりさせました。事業のどの機能も、最後はその二つに向かって組み合わさっていきます。各機能・事業・プロダクトが個別に動くのではなく、クライアントの事業課題を起点に組み合わさって、データと技術で成果に変える。その思想は新体制になっても変わらず、むしろより明確になりました。

データテクノロジーカンパニーとして、必要な組み合わせを持っている会社であること。それこそがSupershipが選ばれる理由です。

次回予告

第2回は、CRM・データを軸にクライアントの成果づくりを担うマーケティングアーキテクチャ機能から。データとCRMで、顧客との関係をどう設計するのか。「戦い方」の中身を、領域責任者の視点でお届けします。近く公開予定。

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SuperMagazine編集部です。Supershipが展開する、正確なデータとデータ利活用の知見、国内屈指の広告配信技術を基にした企業のデジタルマーケティングを支援する「マーケティングソリューション事業」と、顧客企業の生活者への接点に対して、データを用いたCX向上や新しいマネタイズ機会の創出を支援する「データソリューション事業」に関連するサービスの紹介やクライアント事例をご紹介しています。

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