サイト内検索は“お客様の声” 〜ECサイトにおける検索機能の役割と改善事例〜 #ネットショップ担当者フォーラム2018春 講演レポート
4月12日に東京・日本橋のコングレスクエア日本橋にて開催された「ネットショップ担当者フォーラム2018春 eコマースコミュニケーションDay」(株式会社インプレス主催)。
事業者やシステムベンダーなどが登壇し、独自の取り組みをeコマース運営担当者に向けて紹介しました。
Supershipからは、サイト内検索ソリューション「Supership Search Solution」(略称「S4」=エスフォー)について、マーケティング事業本部データソリューションスタジオ・スタジオ長の宇都宮 紀陽が、S4を導入いただいているネットショッピングモール「Wowma!」を運営するKDDIコマースフォワード株式会社のプロダクト開発本部 執行役員 本部長の殿前 真之様、プラットフォーム開発部の松坂 真紀様との対談形式で紹介させていただきました。
そもそも「S4」とは?
「S4」は、ECサイトなどに向けて提供している、サイト内検索ソリューションです。
Supershipでは、リアルタイム検索をはじめ、さまざまな検索技術を提供しており、KDDIが運営するスマートフォンサービス「au Webポータル」「auサービスTOP」「auスマートパス」などの検索サービスの機能開発・運用の実績があります。
これまでに培ってきた技術、知見、運用ノウハウなどをもとに、サイト内検索のソリューションサービスとして提供しているのが「S4」です。
検索結果やサジェスト機能の精度の高さに加え、コンサルタントによる分析やチューニングなど、導入サイトに合わせた最適化をパッケージとして提供しています。
これまで10年以上、インターネット上の検索事業にエンジニアとして従事してきた宇都宮は「事業者様で運用するサイトにとって、検索というものはそれ自体がお客様の声」と分析します。
その上で、「そこに寄り添った返答を行うことが求められる」と検索機能の役割を捉えています。
Wowma!における検索の役割
膨大な商品数を誇るWowma!にとって、検索は重要な導線だとKDDIコマースフォワードの殿前様は話します。
殿前様「ショッピングモールなどのトップページには、基本的にはキーワード検索の窓、特集、カテゴリー、広告、履歴からのおすすめ商品などがあるかと思いますが、Wowma!における遷移率のグラフを見ますと、特集・カテゴリー・商品に対して、検索からの流入件数は約2.5倍となっています」
「では、実際にどこを経由した購入が多いのかを示すのがこちらのグラフです。
カテゴリからの経路がコンバージョン率が一番高くなっていますが、続いて、検索からのコンバージョン率が高いという数値がみられます。
検索経由では、下位2つと比較して約1.5倍ほどの差が出ています。
1枚目のトップページからの遷移率と、2枚目の購入コンバージョンというところをかけ合わせると、検索は非常に重要であり、ここを改善することで流通経路の最適化につながるということがわかるかと思います」
では、Wowma!が検索機能に求めていたのはどのようなことだったのでしょうか?
KDDIコマースフォワードの松坂様は「シンプルに検索精度を向上させたかった」と話します。
松坂様「『精度を向上させる』と一言で言うのは簡単ですが、Wowma!にとって、検索キーワードに対して探しているものを正確に返すよう制御し続けるというのは、商品点数の多さから非常に難しい課題でした。
今回の講演のテーマと同様に、私たちも『検索はお客様の声』だと考えています。
欲しいものを探すお客様がいて、望むものを出品している店舗様がいらっしゃる以上、両者を正確に結び合わせるのがWowma!の責任と考え、検索エンジンの入れ替えを検討していました。
しかし、Supershipにお願いした理由はそれだけではなく、大きく2点、シーズナルな用語への対応と、パーソナライズした検索結果の提供というものがありました。
検索キーワードに対して正しい商品を紐づけるだけでなく、その中でもお客様それぞれが望む商品を出すということが、お客様にとっても良い体験となり、店舗様にとっても売り上げが上がる機会につながります。それに挑んでいこうと考えた時にベストパートナーとしてSupershipを選択しました」
「検索精度の向上」、そして「シーズナルな用語への対応」「検索結果のパーソナライズ」を求めていたWowma!に対し、S4では以下の4つの改善ポイントに注力しました。
検索エンジン改善ポイント
・検索指標の可視化
・個別のチューニング
・検索周辺機能の整備
・パーソナライズ
その1「検索指標の可視化」
宇都宮「S4では検索ワードの推移やボリューム、トレンドなどを計測するダッシュボードと分析基盤を構築し、提供しています」
松坂様「検索結果の指標化を行うことで、導入時にも、その後の改善でもプラスになった点がたくさんありました。
特に、ダッシュボードを用意いただいた事で、シーズナルな用語、特に春夏秋冬、四季のサイクルがファッション系のキーワードで明確になり、『いつ訴求を開始するか?』という課題に対してのアプローチが簡単にできるようになりました。
Supershipでは、切り替えの数ヶ月前から、実際にどういったキーワードで検索が行われ、どんな商品が表示されているのか、またその検索結果でどの商品が見られているのか、といったログを取っていただいていました。
ログの分析をきちんと行い、検索に対するニーズを導入当初から汲み取った形に設計したことで、クリック率を落とすことなくS4への切り替えを行うことができました。
さらに、切り替え後も導入前と同じような指標で対比できるので、どこが落ち込んだかをキーワード単位で確認でき、リリース後も効果的なチューニングを継続的に行うことができました」
その2「サイト最適化のための個別チューニング」
宇都宮「『検索指標の可視化』でサービス特性や実際のお客様の行動パターンを理解し、自動最適化のパターンを発見しながら、その部分は随時自動化し、併せて日々の手動でのチューニングも行いました」
松坂様「商品点数が多いショッピングモールならではのチューニングというのが必要な状況だったので、個別の辞書を用意するなど独自に対応していただいたのは大変ありがたかったです。
例えば、『母の日』というキーワードではユーザーが期待するものはお花だけではなくて、スイーツだったり、キッチン家電だったりします。
そういった検索に対しても、ユーザーが期待するものをきちんと返すことができるようになりました」
その3「検索周辺機能の整備」
宇都宮「検索の補助機能には、サジェストや表記ゆれ対応、関連ワードや『もしかして』検索が挙げられますが、何故これらの機能が必要なのか、という点に関しては、長年検索プロダクトの開発に携わってきた経験から導き出した答えがあります。
PCからスマートフォンへのシフトが起きたことで、世の中の検索行動自体に大きな変化が起きたのです。
スマートフォンで気軽にいつでもどこからでも検索を行うことが日常になっていく中で、Googleが提供する圧倒的な技術力を持った検索体験がスタンダードとなり、ユーザーはどの検索窓からでも同様の結果が表示されると思ってしまったのです。しかし、色々なサイトでGoogleのように検索をしても同じ体験が得られず、結果として検索体験が損なわれてしまうことにもつながっているのが現状です。
そこで、我々がGoogleとほぼ等しい検索体験を提供し続けることが、機能を使われ続けるための鍵になると考えています。
その手段として、以下の補助機能をWowma!に提供しました」
「まずは『キーワードサジェスト』です。文字入力の途中や、かな漢字変換中でも、過去に検索された実数やサジェスト候補上のCTRなど、一定の仕組みに従って選択した候補を素早く表示し、的確な検索キーワードへの誘導を行います」
「次に『関連ワード機能』です。入力した検索キーワードに対して、こちらも過去の実績に合わせ、2つ目のキーワード候補を自動で表示することで、より的確な検索キーワードにユーザーを誘導する機能になります。
そして『表記ゆれ対応』ですが、今回はゲームタイトルの『ファイナルファンタジーXV』とその略語『FF15』という検索キーワードを使用して対応状況を比較してみます」
「左側が『FF15』で検索した場合、右側が『ファイナルファンタジーXV』で検索した場合ですが、どちらも同じ結果を出すような対応を行っています」
■参考URL
「ff15」の検索結果
https://wowma.jp/bep/m/klist3?keyword=ff15
「ファイナルファンタジーXV」の検索結果
https://wowma.jp/bep/m/klist3?keyword=%83t%83%40%83C%83i%83%8B%83t%83%40%83%93%83%5E%83W%81%5BXV
「同様に、『ファイナルファンタジー15』や、半角英字で『FFXV』などと検索しても表記ゆれを吸収して全く同じような結果を返すというような機能を搭載しています」
松坂様「お客様が入力する文字というのも多様になっています。こういった検索のゆれを吸収して、正しい商品に繋げるという機能は、非常に大事だと感じています。
また、Wowma!はスマホから利用いただくユーザーがおよそ90%という割合になっています。ライフスタイルに密着しているスマホからは、色々なシチュエーションで検索が行われています。例えば、通勤ラッシュに揺られながら家族へのプレゼントを選んでいる、といった状況の時に、補助機能でユーザーの入力時間を短縮することで、短い通勤時間の間に商品の購入が決まり週末の記念日に間に合う、といった風に、さまざまな購入体験に役立っているのではないかと考えています」
その4「検索結果のパーソナライズ」
宇都宮「世の中には、男性もの、女性もの…など属性でターゲットが決まっている製品が数多く存在します。そのような製品を探しているお客様に対して、S4では属性情報を利用してパーソナライズ化した検索結果を表示できるような機能も搭載しています。そうすることでお客様の声に自然な形で答えることを目指しています。
例として、ログイン後に『春新作 スーツ』というキーワードで検索すると、基本的に女性には女性向けのスーツが、男性には男性向けのスーツやジャケットが表示されます」
松坂様「パーソナライズ化を行なったことで、特定のキーワードでのクリック率が劇的に上がりました。具体的には、ファッションカテゴリーなど、男性・女性別で対象商品が変わるものが大きく効いてきています。
例えば、Wowma!で『アウター』と検索すると現在でも36万点ほどの商品が出てきます。ユーザーは、ここから更に、色や形、ブランドなどのキーワードをいくつか追加して検索するのですが、キーワードを見ているとどんなお客様も複数入力する数は多くて2〜3語くらいです。
そうやって絞ったページでも、Wowma!の中の検索結果で見ると、平均して最初の3ページ程度しか閲覧されていません。この3ページの中でいかにお客様に合った商品を表示することができるか、といった細かい部分が、売り上げやクリック率につながってきます」
S4を導入してどのような効果が出たか?
Wowma!は、2017年の流通額でみると前年比132%となっており、急成長中です。
その背景には出店店舗数の増加なども挙げられますが、検索エンジンの改善も大きい要因であったと松坂様は話します。
松坂様「これまでご紹介いただいた機能を活用し、さらに検索としてのチューニングを積み重ねていった結果、リリース3ヶ月でクリック率は約120%まで向上しました。
これは切り替えた6月にある日突然上がったという結果ではなく、チューニングを繰り返していただいた結果の積み重ねだと思います。
その後弊社でアプリのリニューアルや、UI、操作性の向上施策なども並行して実施したことによって、リリース後8か月でクリック率は200%、約2倍を達成しています。
昨年度は132%の流通アップ、とお伝えしましたが、この中で検索エンジンが果たした役割というのはかなり大きかったと感じています」
「お客様の声」に応えるのがサイト内検索
講演の最後に、宇都宮は「サイト内検索では、お客様の声を理解し、適切な返答をすることが大事」と改めて強調しました。
宇都宮「まず現状の検索課題を可視化して実際に把握することと、検索周辺の補助機能を網羅すること。そしてサイト特性にあわせたチューニングを行うこと。この3つの改善ポイントを押さえることが、お客様の声に対して適切に答えることにつながるはずです。
Supership が提供するSupership Search Solution=S4 は世の中にある検索課題に向きあい、お客様へ最良の結果を返していきたいと考えています。ぜひお気軽にお問合せください」