Ad Generationが目指す新たな形-技術提供から販売推進まで一気通貫で支援|Supership株式会社 広告プロダクト統括部 部長 赤津 安昭 インタビュー

Cookieレス時代への移行や広告市場の構造変化という大きな転換期を迎える中、日本のパブリッシャーの収益化を10年以上にわたり支援してきたSSP「Ad Generation」は、単なるツールベンダーからパブリッシャーのビジネス成長にコミットする「伴走パートナー」へと役割を進化させます。
Supershipは本日、プレスリリースで新コンセプト『パブリッシャーの「こうしたい」をカタチに。』を発表しました。この新たな宣言のもと、Ad Generationが目指すものとは何か。サプライとデマンドの双方を知り尽くしたSupership株式会社 広告プロダクト統括部 部長の赤津 安昭が、業界の構造的課題と、その解決に向けたAd Generationの未来について詳しく語ります。
サプライとデマンド、双方から見えた業界の課題
――まず、赤津さんのご経歴と、現在の役割について教えてください。

私のキャリアは2002年、大手乗り換え案内サービスを提供するメディア企業でスタートしました。この業界での私の原体験は、広告事業の責任者として、メディアの特性を活かした独自の「検索連動型広告」を企画・開発したことです。当時はまだDFP(DoubleClick for Publishers)(※)のような広告サーバーやシステムは非常に高価だったため、「自社こそが最強の開発集団である」という会社の基本姿勢のもと、「なければ自分たちで作ろう」という発想で、エンジニアと約1年かけて企画、仕様設計、開発までを一貫して行いました。これは約15年ほど前の出来事です。
※ DFP(DoubleClick for Publishers):Googleが提供していたウェブサイト向けのアドサーバー。現在は「Google Ad Manager」に統合。
その後、ご縁がありSupershipにジョインし、プログラマティック広告の世界でDSP(デマンドサイドプラットフォーム)のプロダクトマネージャーを経験しました。その際、デマンドサイドからサプライサイドを見た時の景色の違いに愕然としました。
正直なところ、デマンド側の担当者はレポートに表示されるドメイン、CPC(クリック単価)、CPA(獲得単価)といったパフォーマンスの【数字】しか見ず、メディア個々の特性や、どの枠にどんな広告を出すかといった詳細まではなかなか見ないことが分かりました。獲得に近いパフォーマンスを重視するクライアントが多いので、どうしてもそこが重要になってしまうのです。
また、例えば、SSP側が「CTRが高い枠を集めました」といったパッケージをDSP側に提案しても、DSP側では「その最適化はこちらで自動でできるので…」となってしまうという、「情報の乖離」も構造的に生まれていました。

これは1つの象徴的な例ですが、こうしたサプライ側とデマンド側それぞれの「情報の乖離」が積み重なったことにより、オープンインターネットの世界は今、深刻な危機に陥っていると感じています。
――この「情報の乖離」が業界全体に与えた影響はどういったものだったのでしょうか?
GoogleがCookieレスの議論を始める以前から、広告業界全体では「広告単価の低迷」が大きな課題でした。単価が上がらないため、パブリッシャーは広告枠を増やし、結果としてユーザー体験を損なう事態も発生しています。
一方で広告主は、投資対効果を重視するあまり、「ウォールドガーデン」(特定のプラットフォームやエコシステム)に予算を集中させる傾向にあります。ウォールドガーデン内での配信媒体や枠の詳細は「ブラックボックス」であるため、ブランドセーフティの観点では疑問が残るものの、パフォーマンスは保証されています。
しかし、The Trade Deskの調査(2023年6月発表)によると、日本の消費者がデジタルに費やす時間の61%が「オープンインターネット」のチャネル利用であることが明らかになっています。さらに、オープンインターネットはSNSと比較してユーザーが『注意散漫になる』可能性が78%低いとの調査結果も報告されており、ユーザーがコンテンツに集中しやすい環境であることを示唆しています。
にもかかわらず、広告投資においてはウォールドガーデンがオープンインターネットの3.8倍もの予算を集めているとのことです。このような極端な投資の偏りにより、パブリッシャーは高品質なコンテンツ制作やUX改善への投資が困難になり、結果としてコンテンツの品質低下やUXのさらなる悪化を引き起こしています。これは、ユーザーにとっても、パブリッシャーにとっても、そして広告主にとっても望ましくない環境を形成しつつあると言えるでしょう。この悪循環が続けば、日本のメディアビジネスそのものが立ち行かなくなってしまう、という強い危機感を抱いています。
「技術提供」のみならず、「価値共創」へ
――そうした課題意識が、今回のコンセプト変更に繋がったのですね。
はい、特にGoogleによるCookieレス化の動きは、業界全体に代替技術への転換を促すと同時に、オープンインターネット広告が抱える「本質的な課題」を浮き彫りにしました。Googleが最終的にCookieレス化を撤回したことで、パブリッシャーは「この後どうするのか」という問いに改めて直面することになりました。
すでにオープンオークションは限界に達しており、ヘッダービディングによってSSPが保有するメディア在庫はコモディティ化しました。その結果、デマンドサイドはSPO(サプライパス最適化)を進め、サプライヤーとデマンドサイドの距離はさらに開いています。このような状況下で、従来のSSPの役割では限界があることは明らかです。SSPとして何ができるかを深く検討した結果が、今回のコンセプト変更につながっています。
――従来のSSPソリューションの限界と、新コンセプト策定で重視したことは?
従来のSSPは技術提供とDSPとの接続を増やし、オークションプレッシャーを高めて配信単価を上げることに注力していましたが、これだけではパブリッシャーの根本的な課題は解決できませんでした。その結果、パブリッシャーは「とりあえず広告枠を貼ればいい、数字だけ見ればいい」という思考に陥り、自社のメディア特性や、それを活かした広告商品の開発発想が希薄になっていました。
そこで私たちは、新コンセプトの策定において「DSPができないことをやろう。デマンド側が取得できない情報を取り扱おう」という方向性を重視しました。その「情報」こそが、パブリッシャーが保有する「ファーストパーティデータ」であり、これに大きな価値があると確信しています。DSPでは決して取得できない、より深く掘り下げられたファーストパーティデータこそが、新たな価値を生む広告商品の特徴となると考えています。
単なるデモグラフィックデータはDSPでターゲティング可能なため、それだけでは価値が見出しにくいのが現状です。多くのパブリッシャーがその価値に気づいていない「お宝」を発掘し、プログラマティックな環境でも提供できるようにすることが、SSPの重要な役割だと認識しています。
例えば、天気メディアの指数情報や乗り換え案内の検索条件に連動する広告は、純広告では商品化されていますが、プログラマティック領域ではまだ未開拓です。これらをプログラマティックで扱えるようにし、メディアを横断してパッケージ化することで、純広告ではアプローチできないような、プログラマティックを重視するグローバルな広告主にも新たな道が開かれると考えています。さらに、CookieやデバイスIDに依存しないデータを活用することは、DSPやウォールドガーデンにはできない明確な差別化ポイントとなります。
「伴走パートナー」として、パブリッシャーの「こうしたい」をカタチに
――新コンセプトに込めた思いを、改めてお聞かせください。

この言葉には、我々がパブリッシャーの皆さんの最も身近なパートナーでありたいという決意が込められています。
プログラマティックの発展は、組織の効率化を促す一方で、パブリッシャーから広告の販売組織を省力化させたり、自社で広告商品を開発する力を弱めたりする結果を招きました。このような現状に対し、SSPはパブリッシャーと共に「お宝」を発掘し、これまでの知見を活かして支援することが責務だと考えます。
既存メディアだけでなく、新たに広告媒体化することでユーザーに新しいベネフィットを提供できるような広告作りも支援していきたいです。Ad Generationは単なるツールベンダーではなく、パブリッシャーの「新しい広告収益の作り方を共に考える」伴走パートナーとして、枠を貼るだけでなく、その枠自体をどう活かすかを共に考えることを重視していきます。
――他社SSPとの明確な差別化ポイントは?
Ad Generationの最大の特徴は、従来のSSPの枠を超え、商品開発から販売促進まで一貫して支援する点です。一般的なSSPがアカウント作成とメディア運用で完結するのに対し、Ad Generationはパブリッシャーの広告収益最大化に向けたコンサルティングに近い役割を担います。
プログラマティック広告、特にヘッダービディングやラッパー事業者の台頭により、パブリッシャーと広告主の間に「断絶」が生じていました。これに対しAd Generationは、DSP、広告代理店、さらには広告主と直接対話することで、彼らの需要をパブリッシャーにフィードバックし、共同で広告商品を開発します。これはメディアレップに近い活動であり、デマンドサイドとサプライサイド双方のソリューションを持つSupershipだからこそ実現できる、他社にはない強みです。
他社SSPもデマンド強化を進めていますが、パブリッシャーの深いファーストパーティーデータを活用したパッケージングは、パブリッシャーサイドでの商品開発とデマンドサイドでの双方のキャリアを持つ人材がいなければ困難でしょう。
また、かつて私がメディア企業にいた際、競合メディアとの共同広告商品開発は、「なぜライバル企業の枠も売る必要があるのか」というメディア企業としては当然の意見により実現しませんでした。しかし、中立的なSSPが介在することで、パブリッシャー間の連携が円滑になり、単独では難しかったリーチの拡大も可能になります。
Ad Generationが提供する具体的なソリューション
――Ad Generationが提供する3つのコア機能の、戦略的な意味についてお聞かせください。

Ad Generationは、「SSP」「アドサーバー」「データ活用」の3つのコア機能を連携させ、パブリッシャーの状況に応じたサポートを提供します。
1. 純広告・PMP商品の共同開発: 多くのメディア、特にアプリメディアは純広告の商品を持たないことが多いですが、Ad GenerationのSDKに内蔵されたアドサーバー機能を活用することで、新たな開発なしに純広告やPMP商品を共同で開発できます。
2. 高精度なデータ活用支援: パブリッシャーが保有するファーストパーティデータは非常に価値が高い一方で、広告活用レベルに整備するにはコストがかかります。SupershipのDMP「Fortuna」を介してKDDIのキャリアデータを活用することで、パブリッシャーは大規模な投資なしに、高精度なデモグラデータとファーストパーティデータを組み合わせたターゲティング広告商品を作ることができます。
3. 販売推進とリーチ拡大支援: 開発した商品を販売するための推進も重要です。パブリッシャー単体ではリーチが不足する場合でも、当社がハブとなり複数のメディアをパッケージ化します。さらに、Fortunaを通じてLINEやGoogleといったウォールドガーデンへの広告配信も可能にし、ファーストパーティデータを使うメディアの価値を最大限に引き出す支援を行います。
これらの機能を組み合わせることで、私たちは従来のSSPの枠を超え、「企画から販売推進まで」を一貫して支援する体制を構築していきます。

ミライに向けたメッセージ
――では最後に、パブリッシャーの方々へのメッセージをお願いします。
パブリッシャーごとに抱える課題は本当にバラバラですが、その中には共通する部分もきっとあります。まずは対話から始めたいと考えています。皆様の組織が抱える課題から深くお伺いし、それぞれのフェーズに合わせた具体的な提案をしていきたいですね。
例えば、純広告商品はあるもののPMP商品がないパブリッシャー様には、ファーストパーティデータを活用したPMP商品の設計から支援いたします。また、単独では十分な配信量が出せない場合でも、SSPとして複数メディアをパッケージングすることで、これまで難しかった広告商品の実現をサポートします。
パブリッシャーの皆様の悩みを引き出し、共に新しい広告商品を創造し、ワクワクするような未来を築き上げていきたいと考えています。私たちは単なるツール提供者ではなく、パブリッシャーが持つ「宝の山」を掘り起こし、それを価値ある広告商品へと「カタチ」にする伴走者でありたいと思っています。
――デマンドサイドの方々にも一言お願いします。
オープンインターネットにはまだまだ素晴らしい「宝」が眠っています。ウォールドガーデンでは得られない、質の高いメディア価値をぜひ適切に評価していただきたいです。
広告枠の無理な増加によるユーザー体験の低下を防ぎ、新しい広告価値を共に創造したいと考えています。ユニークな商品や、ここでしか購入できないような商品には必ず需要があります。ファーストパーティデータを活用することで、デマンドサイドにも新たなメリットを提供できるはずです。オープンインターネットを共に豊かにしていきましょう。
◼︎関連情報
今回の新コンセプトに関する公式発表は、以下のプレスリリースをご覧ください。
【プレスリリース】Supership「Ad Generation」が新コンセプトを策定 パブリッシャーの「こうしたい」をカタチにする成長支援パートナーへ
https://supership.jp/news/2025/09/24/14027/

Most Popular
人気記事
Hot Topic
おすすめ記事
-
プロダクト
オンオフデータをシームレスに連携!店舗型リテールメディア「Supership Touch Gift(タッチギフト)」とは?
- 1st Partyデータ活用
- OMO
- Supership Touch Gift
- リテールメディア
-
セミナーレポート
minne byGMOペパボが実践:商品広告を活用した「ECサイトのリテールメディア化」で何が起きた?成功の秘訣とその成果 〜イーコマースフェア 東京 2024セミナーレポート
- S4Ads
-
セミナーレポート
【2023最新版】ゲームアプリ広告収益化のベストプラクティス(Ad Generation講演レポート@ゲームビジネスカンファレンス2023)
- Ad Generation
- SSP
- 動画リワード