2018年3月23日(金)〜24日(土)に開催されたエンジニア向けの日本最大級の技術カンファレンス「MANABIYA」で開催されたトークセッション「組織/エンジニアリングマネジメントとしての成長戦略」に、Supership CTO 山崎がパネリストとして登壇させていただきました。
エンジニアがいずれコードを書く側からマネジメント側へキャリアを重ねるための成長戦略やお悩みなどについて、事前に寄せられた質問やその場であげられた聴講者からの質問に対し、パネリストたちが自身の経験に基いてアドバイスをする形の参加型セッションとなりました。
本記事ではパネルディスカッションの様子をダイジェストでレポートいたします。
タイトル:組織/エンジニアリングマネジメントとしての成長戦略
モデレーター:
株式会社メルカリ 執行役員 VP of Engineering 是澤 太志 様
パネリスト:
株式会社VOYAGE GROUP 執行役員CTO 小賀 昌法 様
株式会社メルカリ Mercari Europe, VP of Engineering 田中 慎司 様
Supership株式会社 CTO 山崎 大輔
失敗から学ぶことは大きい。予め致命傷にならないような体制づくりを。
マネジメントしているうえで、気をつけているポイントは?という質問に、VOYAGE GROUP 小賀 様は「リスクの認識をあわせることです。」と回答。 どこまでがリスクなのか、チーム全体で意識を合わせておくことで、致命的なリスクを回避することができるとのことでした。 |
メルカリ田中様からも「失敗から学ぶことは大きいです。経験上、失敗したときほど記憶に残りやすいですし、その後の経験として活かしやすい。」と賛同のコメントがあり、Supership山崎も、「だからこそ、失敗が致命傷にならないような仕組みを組織に根付かせておくことも大事」とコメントし、3名ともに失敗を悲観することなく、そこから得られる学びに大きな価値を感じ、失敗を致命傷にしないようなマネジメントが重要であると語られました。
また、失敗を振り返る時も気をつけるべきポイントとして、「不必要なルールをつくらないことも重要」との意見も。
例えば障害を起こしてしまったとき再発防止のために次はこうしましょう、とルールを増やしていくことで、作業効率が落ちてしまう、ということがあります。
よって、失敗を振り返る際は、如何にルールをつくらずに再発防止ができるか、という点に配慮した体制づくりをしているのだそうです。
チームのパフォーマンスを最大化することを考え、環境を整えることがマネジメント
また、技術が衰えてしまうのではないか、との不安でマネジメント側に踏み出せないという悩みに対し、Supership 山崎からは、自分がどのように立ち回るのがチームのパフォーマンスを最大化できるかを考えるべき、とのアドバイスがありました。 |
エンジニアはコードを書くことで評価がされるのに対し、マネージャーはチーム全体の成果によって評価をされるようになります。
だからこそ、チームの最大化を意識したときに何をすべきかを考え、チームのパフォーマンスがあがるような仕事をしやすい環境づくりをしていくのがマネージャーに求められるスキルであるとのこと。
実際、自分もエンジニアとして若手の頃は、「やりやすい環境を整えてくれていた上司のもとにいたときに最もパフォーマンスを発揮できていた」と当時を振り返り、上司となった現在は自分が部下にそういった環境を与えられるように意識している、とのことでした。
メルカリ田中様からも、「だからこそ、マネジメントを任せる人には、きちんとその役割を明示的に与えておくといいと思う」との同意の意見もありました。
さらに、コードを書くのが難しいからマネジメントに移行する…と考える一部の意見について、マネジメントが簡単かというと、コードを書くのとは全く別のスキルで、決して簡単なものではないため、そういった意識でマネジメントをしようとすると、自然と部下にも伝わってしまうので、注意すべき、という意見が。これには全員一致で賛同をしていました。
エンジニアリングとマネジメントに求められるのは全く別のスキルのため、一気に切り替えようとしても難しく、エンジニアをしながら徐々にマネジメントの業務領域を増やしていき、1年後や2年後にエンジニアリングとマネジメントの業務量を逆転させる、といったような段階的な転向をしていくのがよい、とのことでした。
また、モデレーターのメルカリ是澤様もこれらの意見を聞き、「Willでどちらを選ぶか?マネジメントをしたいのか、コードを書きたいのか、自分のなりたい姿をはっきりとさせないと、エンジニアとしてもマネージャーとしてもどちらも中途半端になってしまう」とコメントし、登壇者の全員が各々でマネジメントをするうえでの覚悟と難しさを振り返って賛同のコメントをされていました。 |
事業のフェーズとエンジニアの技術が噛み合わない場合もある。
会場では聴講者からの質問もいくつか寄せられました。
例えば経営者の方で、社内で最も優秀なエンジニアにとっては、会社が提供しているサービスに求められる技術レベルが物足りないものであるため、意欲的でワクワクする仕事を与えられないのだがどうしたらよいか、という悩みがありました。
このお悩みに対して、メルカリの田中様からは、「事業のフェーズと、必要なエンジニアの技術、また、エンジニアの人柄や性格などの要素は、うまく噛み合うときもあれば噛み合わないときもあります。これを無理に噛み合わせようとすると、ひずみが生まれてしまう」とコメント。 |
会社が複数の事業ラインをもっていれば、技術レベルに応じてエンジニアをアサインしなおす、などができますが、ベンチャー企業など、1プロダクトの会社だとなかなか難しい場合も多いと思うので、半年、一年、などの期限付きで続けてもらうか、中長期的に解決が難しければあきらめて別の道を探ってもらうのがいいのでは?と、経験値に基づき具体的なアドバイスを送られていました。
さらにVOYAGE GROUP小賀様からも、「不必要に技術的に凝ったものを初期段階でつくったとしても、マイナス要素となる」とのことで、タイミングが合わなかった、という決断がお互いにとってよいこともあるのでは?と、真摯なアドバイスが送られていました。
最後にひとこと。
最後にパネリストの3名から会場のエンジニアのみなさんに贈られたメッセージがこちらです。
マネジメントという仕事はエンジニアに向いていると思っています。 マネジメントをはじめたばかりのころ、チームをスケールさせるのが難しくなったことがあり、その解決策として属人化を避けた仕組みを考えたり、また、それがきちんと機能しているかをチェックする、、、といったような作業が、システムのアーキテクチャを考えたり、モニタリングしていくエンジニアリングの工程と同じで、楽しく感じました。 みなさんも楽しんで、組織やチームをエンジニアリングしていってほしいと思います。 |
とにかく、マネジメントも“楽しむ”のが一番だと思います。エンジニアはパフォーマンスを出すため働く環境にこだわる人が多いので、色々な要望が現場から寄せられますが、エンジニアマネジメントはそういった環境を自分でつくっていける立場です。自分の理想とする環境を自分でつくり上げるぞ、という思いで楽しんで向き合うことが、結果的に自身のスキルや価値向上につながると思います。 |
私は、とにかく突き詰めることを諦めてほしくないですね。私は現在46歳で、25歳の頃からインターネット業界に飛び込んだので約20年ほどこの業界にいるわけですが、仮に65歳まで仕事をするとして、まだちょうど半分くらいにたったところです。年齢や状況などいろんな問題はあると思うのですが、自分の能力に勝手に天井をつけて諦めてしまうと気持ち的にローになってパフォーマンスが落ちてしまいます。みなさんまだ若いと思うので、常にチャレンジを続けていってほしいです。 |
このように、エンジニアの先輩から若手エンジニアへエールが贈られて講演は大盛況に終わりました。