目指すは業界の健全な発展!アドフラウドの実態とその対策 #Next Marketing Summit 2018 セッションレポート
4月19日にベルサール渋谷ガーデンで行われた「Next Marketing Summit 2018」。
日本最大級のスマートフォンゲームマーケティングイベントとして、およそ900名のマーケターや業界関係者が一堂に会し、デジタル広告やマーケティングに関するセッションが開かれました。
この中で行われた、アドフラウド=“広告詐欺”の実態や対策について語るセッションに、Momentum株式会社(以下、モメンタム)の代表取締役、高頭 博志が参加いたしました。
最近では、いわゆる“海賊版サイト”でその存在が確認されるなど、アドフラウドにおける問題が顕在化されていますが、今回のセッションでは対策に向けた意見が活発に交わされました。
本記事では、そのセッションのレポートをお届けします。
<登壇者>
Bulbit株式会社 CEO 山田 翔様(モデレーター)
adjust株式会社 カントリーマネージャー 佐々 直紀様
株式会社ファンコミュニケーションズ 取締役 二宮 幸司様
Momentum株式会社 代表取締役 高頭 博志
アドフラウドとは
アドフラウドとは、コンピュータープログラムを使って広告費をだまし取る「広告詐欺」です。
主な手口としては、「ボット」(自動化されたプログラム)を動かし、あたかも人間が広告を閲覧したかのように偽るものなどがあり、最近では、広告をユーザーには見えないように隠して埋め込むものがいわゆる“海賊版サイト”で発見され、「裏広告」だと話題になりました。
詐欺の手口は複雑化 どう立ち向かう?
同じ海賊版サイトでは、ほかのドメインになりすまして広告を呼び出す「ドメインスプーフィング」というものも確認されるなど、アドフラウドの手口は急速に複雑化しています。
モメンタムではこの手口をいち早く検知し、ブラックリストに追加するなど対策を行うとともに広く周知に努めました。
高頭「海賊版サイトなどで起きている現象では、そのサイトに広告が全く出ていないといった問題が起きていることが多く、広告効果が全くないという観点でも“悪”であると考えています」
二宮様「デジタル広告配信が複雑化していくプロセスの中で、さまざまなプレイヤーを介することによって管理できなくなることが多くなってきているので、『グレー』としている配信面を掲載不可にするというところが、まず我々が最初にできることではないでしょうか」
山田様「その“グレーなのかブラックなのか”という線引きをどうするのかという点が各社違う、というところに課題を感じています。弊社もそうですが、各社共通のアドフラウドツールを使うというようなところまで出来ていないこともあり、照準が定まっていなかったりもするのですが、モメンタムさんではこの課題に対して、今後取り組もうと思われていることはありますか?」
高頭「弊社のアドベリフィケーションツールは、これまでDSP事業者さんに使って頂くケースが多かったのですが、今後はSSP事業者さんやメディアさんにも利用していただけるよう、ご案内していきたいと考えています」
山田様「また、海賊版サイトの問題が表面化したことで、広告主さんから直接『こういうサイトに出ていないですよね』と確認されることがどんどん増えてきています。そういった点に広告主さんも目を光らせていただいて、お金の流れを断ち切ることも大事ですよね」
高頭「一方で、こういう流れがくると、広告主さんから『不正な広告出稿をすぐに全部無料で止めてくれ』という声が上がってくるかもしれませんが、それは難しいと個人的には考えています。広告以外の業界も全て一緒ですが、品質を担保するにはお金がかかります。プラットフォーマーは皆この問題に取り組もうとしているという前提がある中で、価値のある広告取引をするためにはコストがかかってしまうことがあるというのは、広告主さんにはご認識いただくことも必要ではないでしょうか」
また、アドフラウドには、“成果”そのものを偽るものも存在します。そのひとつが、不正なアプリを悪用し、他のアプリをインストールしたタイミングでクリックなどを偽る「クリックインジェクション」です。
adjust株式会社の不正防止機能の一つであるクリックインジェクションフィルタでは、アプリインストール前後の動きをチェックし、広告やダウンロードボタンをクリックしてからダウンロード/インストールするという通常の流れから逆行していないか、といった点から不正を検知しているということです。
クリック報酬型のアドネットワークを運営する株式会社ファンコミュニケーションズの二宮様は「広告クリックからインストールまでのコンバージョン率を監視し、平均値から大きくずれているものは不自然なものとしてチェックする」としています。
一方で、Bulbit株式会社の山田様は「何をもって不自然とするかが難しい。業界全体でその基準の統一をしなければ難しい時期に来ているのでは」と指摘します。
佐々様「adjustでは、不正防止機能を動かした後にログデータをちゃんと取れるようになっています。このうち、不正があったもののログデータは、ファンコミュニケーションズさんなど18社が加盟する『不正防止連合』(CAAF:Coalition Against Ad Fraud)のメンバーと共有するようにしています。不正なものとして検知された時に何が起きているのか、というのを実際のデータで見ていただけるという環境を構築しています。
潰しても潰しても出てくる、という“いたちごっこ”の状況にはなっているのですが、その中でも、実際のデータも見ながら潰していくということが大事だと思います」
インターネット広告が進むべき道は
高頭「ビューアビリティという観点から考えると、広告のインプレッションの単位をCPMではなく『CPH』(Cost Per Hour)でカウントしていくほうが有益なのではないか、という視点もブランディング広告の世界ではあります。そういった点も今後議論していきたいところですね。
一方で現状に目を向けると、ひとつの広告を配信するにもいくつかの工程で多くの人が関わっているために、担当者の方が“こういったマーケティングをしたい”という思いを持っていても、どこかの段階でそれがエクセルシートになってしまって最終的には数字しか落ちてこない、といったことがあったりします。そういった現状に対して、弊社ではサードパーティーの立場から、情報を端から端までを一気通貫で届けていくということを大切に取り組んでいきたいです」
佐々様「例えば、不正インストールを防止するツールを導入すると、不正としてカウントされるものは導入初期だと実は10%くらいは混じってるんですね。それに気づいた担当者さんは『今までこんなに不正があったんですね、除外できてよかったです』と喜んでいただけるのですが、その一方で、インストール総数が減ったように見えるので、それについて突っ込まれました、という話もあり、それぞれ一人ひとりの利害関係が少し違ったりします。立場は違えども、広告にかかわる一人ひとりの意識をしっかりと統一することが必要ではないでしょうか」
二宮様「広告主さんの間で『ネット広告を出すのは危険ではないか』といった風潮になってくることを危惧しています。その時に、adjustさんやモメンタムさんといった第三者のフラットな方々に安全性のチェックをしていただきたいと思っています。一方で我々のようなアドネットワークは、業界全体で不正なメディアや違法なメディアをデータベース化して、それを各社が参照できるようなスキームを作っていく努力を進めていくべきと考えています」
山田様「やはり各社さんそれぞれに利害関係があるので、まずは、“きちんとしたビジネスをするとちゃんと儲かる”スキームを考えて、良くないことで儲けるという考え方を消していくというのが一つかなと思っています。もう一つ、ブロックチェーンというものがバズワード的にこれだけ騒がれていますが、広告の領域で本気で取り組もうという人はまだいないのではないかと思っているので、ここ最近はそこについて考えているところですね。
今回こういったイベントを通して、関係者の認識を揃えることの大切さを実感しました。ただ、ここで話しただけでは全く意味がないので、これからこの4名は、皆さんに恥ずかしくないようにアドフラウドに対して積極的に関わっていくということを誓いまして、本セッションを終わりにさせて頂きたいと思います。本日はありがとうございました!」