広告主のためのアドベリフィケーション入門(第3回)〜大手企業の事例から学ぶ、“アドベリ”の先進的施策〜
コラム

広告主のためのアドベリフィケーション入門(第3回)〜大手企業の事例から学ぶ、“アドベリ”の先進的施策〜

アドベリフィケーション専業ベンダーとして代理店や広告主等に向け様々なソリューションを提供している、Supershipのグループ会社 Momentum にてHead of Business, Sales, Partnershipを務める柳谷 俊輔が、広告主にとってのアドベリフィケーションの必要性について解説する連載「広告主のためのアドベリフィケーション入門」。

これまでの記事では、アドベリフィケーションで検証する項目やアドフラウドのリスクアドベリフィケーションで広告の費用対効果を向上させるためのステップについてお伝えしてきました。

第3回となる本記事では、日本国内で広まるアドベリフィケーションの必要性や、先進的な企業の取り組みについて解説いたします。

※この記事は、「Web担当者Forum」に寄稿させていただいた記事を再構成したものです。


 

国内におけるアドベリフィケーションの現状は?

はじめに、昨年モメンタムが独自に行った意識調査の結果から、国内のアドベリフィケーションの現状について考えます。

調査は、事業会社(業態を問わず)で自社の宣伝・広報活動に携わる広告主と、メディアで自社媒体の広告事業に関わる担当者を対象に行い、あわせて382名から回答が得られました。

この調査は2017年にも実施しており、17年と18年の結果を比較することで認知度や意識が1年でどれだけ変わったかを知ることができます。

各キーワードの認知度は昨年より大幅アップ

まず「アドベリフィケーション」「ブランドセーフティ」「アドフラウド」「ビューアビリティ」それぞれのキーワードについての認知度を見ていきましょう。

「名称も内容も知っている」とした回答を2017年と比較すると、アドベリフィケーションは12%→19.7% (約1.6倍)、ブランドセーフティは14%→36.8%(約2.6倍)、アドフラウドは5%→25.1%(約5倍)、ビューアビリティは10%→24.6%(約2.5倍)となり、全てのキーワードで向上がみられました。

特に「アドフラウド」については2017年の5倍となる25.1%へ急増しています。これは「漫画村」(漫画作品を違法に公開していたサイトで、不正広告が主な収益源となっていた)にまつわる問題が各メディアで連日報道されていたことから、認知度が高まったものと考えられます。

また「ブランドセーフティ」は、「名称も内容も知っている」「名称は知っている」の2つを合わせると58.2%で、回答者のうちの半数以上となり、関心の高さが伺えます。

 

具体的な対策を取っている企業は全体の2割を下回る

一方で、具体的な対策への取り組みについて尋ねた結果、回答は以下のようになりました。

「対策をとっていないが、今後対策をとっていきたい」とした回答は、ブランドセーフティで14%→46.3%(約3.3倍)、アドフラウドは14%→48.5%(約3.5倍)、ビューアビリティは15%→45.8%(約3.1倍)と、前回調査では14〜15%だったのがいずれも3倍以上になっています。
前述の漫画村問題などをきっかけにして当事者意識が高まったことを示す数値と言えるのではないでしょうか。

 

「対策をとっていないが、今後対策をとっていきたい」と回答した方々に、対策が取れていない理由について尋ねた回答をまとめたのが以下のグラフです。

結果を見ると、「今回の調査までこのキーワードを知らなかったから」がアドフラウド26.1%)とビューアビリティ23.5%)では最も多く、ブランドセーフティ17.8%)では2番目に多くなっています。

これらのキーワードを認識していなかったにもかかわらず「今後対策をとっていきたい」と回答した人が多かった点からは、“ネット広告にまつわるネガティブな報道を見聞きしたことにより危機感は高まったものの、どうやって対策を取ればいいのかはよくわからない” という担当者の声が聞こえてきます。

また「担当するメンバーなどのリソースがないから」とする回答はブランドセーフティ19.1%)では最も多く、アドフラウド23.5%)とビューアビリティ19.6%)では2番目に多くなっています。

この点からは、社内の担当者の負担を抑えつつ不正広告への対策が取れる、アドベリフィケーションツールの需要が高まりつつある、という点が伺えるのではないでしょうか。

※ モメンタムの意識調査の詳細についてはSuperMagazineの記事も是非ご一読ください。
「アドベリフィケーションに関する意識調査2018」結果報告 〜不正広告への認知高まる、過半数の企業が対策に積極的〜

 

国内におけるアドベリフィケーションへの対策はまだ不十分!?

今回の調査からは、日本においては、アドベリフィケーションへの認知や対策の導入は徐々に拡大しているものの、対策が先行している海外企業と比べると、まだ十分ではない現状が読み取れました。

アドベリフィケーションへの取り組みが浸透していくためには、リスクや正しい知識を啓発すると同時に、広告主の間でケーススタディを共有することが必要です。

今回は、自社のアドベリフィケーションへの取り組みについて事例を広く開示している2つの広告主、富士通と米ケロッグにおける対策をご紹介します。

 

【事例1】
富士通の取り組み:ブランドリスクを大幅に減少

国内におけるITサービス提供企業大手の富士通株式会社では、マスからデジタルまで幅広いメディアに多くの広告を出稿する広告主である一方、先進的な運用型広告配信プラットフォームの提供も行っています。

自社プロダクトのマーケティングでは、施策の一環として、自社や外部のプラットフォームを活用しながら、プログラマティック広告を中心に多くのデジタル広告を出稿されていました。
しかし、数多くのプロダクトのプロモーションとしてたくさんの広告配信を行うなかで、その一部においては、ブランド毀損のリスクがある面への配信が行われてしまっていました。

このリスクの削減に向け、富士通では、モメンタムが提供する広告主に特化したアドベリフィケーションツール「Hyper Transparency for Advertiserハイトラ)」を導入しました。

実際にどのような形で導入いただき、どんな成果が出たのかを富士通のご協力のもと詳細な数字でご紹介いたします。

ブランドリスク削減には「NGカテゴリ」だけでは不十分

アドベリフィケーションベンダーが提供するツールを活用する場合、一般的に、「Pre-Bid対応」と「Post-Bid対応」の2パターンが挙げられます。

【Pre-Bid対応】
広告配信をする“”(Pre)にリスクを検知した場合、入札(Bid)自体を止めること
【Post-Bid対応】
広告配信をした“”(Post)にリスクを検知した場合、代替の広告に差し替えたり、背景色を被せたりといった対応をとること

この「リスク」を判定する際に、一般的には以下のようなサイトカテゴリ単位での判断が行われます。

アダルトカテゴリ
著作権侵害系カテゴリ
ネガティブカテゴリ(※ヘイトスピーチなど)
悪質CGM(※まとめサイトなど)

しかし、企業におけるブランドリスクはこれらのカテゴリのなかだけでなく、個々の企業や展開するサービス・プロダクトが持つ潜在的なNGキーワードなどにも存在します。

例えば自動車会社が広告主であるとすると、たとえ大手新聞社のサイトでも、交通事故の記事に広告が表示されてしまえば、ブランドの毀損につながってしまいます。

つまり、良質なメディアであっても、不適切なキーワードが含まれた記事は、該当企業の広告配信には適さないことになります。

 

NGカテゴリ×NGキーワードリストによりリスクを削減

「ハイトラ」を導入した富士通のケースでは、モメンタムがWebサイト上で行った分析をもとに、独自のリスク回避キーワードリストを作成し、広告を制御するカスタムロジックとして設定を行いました。

これを従来のブランドセーフティ対策用のカテゴリへの広告配信回避と組み合わせる形で複数のキャンペーンに導入したところ、いずれのキャンペーンにおいてもブランドリスクは1%程度もしくはそれ以下となり、もっともブランドリスクのあったキャンペーンでは、ブランドリスクが14.5%から0.47%と、国内におけるブランドリスクのNorm値(基準値、標準値)の11.2%と比較しても著しく低い値となり、非常に良い成果が出たことがわかります。

※モメンタムと富士通様の取り組みについてはSuperMagazineの記事も是非ご一読ください。
広告主向けアドベリフィケーションサービス「ハイトラ」で10%超のリスク削減に成功! 〜富士通流のブランドセーフティ活用事例〜

 

【事例2】
米ケロッグの取り組み:アドフラウドの徹底排除

世界でもトップクラスの広告主である食品メーカーのKellogg(以下、米ケロッグ)は、アドベリフィケーションにいち早く取り組んできた企業の一つとして知られています。

同社は、ブランドセーフティ、アドフラウド、ビューアビリティのそれぞれにおいて取り組みを進めてきましたが、その中でも、広告費の無駄遣いに直結するアドフラウドにさらなる改善の余地があったことから、より進んだ改善施策を行うこととなりました。

その取り組みが「優良なサイトにおけるアドフラウド除去」です。アドフラウドは一部の悪質なサイトにおいて起こるものである、とお考えの方も多いかと思いますが、実際は優良サイトにおいても発生していることがあります。

例えば、メディアがインプレッション数を確保するために第三者からトラフィックを購入した際、その中に不要なボットが含まれている「Sourced Traffic」(トラフィック誘導)という手法は、優良サイトでも見受けられるフラウド手法の1つです。

アドフラウド排除のために米ケロッグが取り組んだ方法は?

これらの対策として米ケロッグは、

1. アドベリフィケーションベンダーがインプレッション単位ですべてのキャンペーンデータを解析
2. 解析したデータを外部DMPに統合
3. DMPで無効なアクティビティに関連付けられているユーザーを検出
4. 検出されたユーザーを排除リストに追加
5. 排除リストをケロッグの広告配信に適用

という一連のプロセスを自動化し、ボット等によるインプレッションを削減することで、プレミアムなサイト群を含めたすべてのアドフラウドの排除を実現しました。その結果として、1年間で約200万USドルもの無駄な広告費の節約に成功しました。

※ 詳しく知りたい方は「ROI改善に向けたアドフラウド対策:ケロッグ、Kruxとのディスカッション」をご覧ください。

 

対策の一歩はベーシックなものから取り組む

米ケロッグの事例は、ベーシックなアドフラウド対策を行ったうえで、さらに踏み込んだ対策として実施されたものです。

アドベリフィケーションへの取り組みに積極的な企業は、通常のアドベリフィケーションに加え、企業ごとにカスタマイズしたブランドセーフティや、プレミアムサイトにおいてのフラウド除去といったプラスアルファの施策に取り組んでいます。

その結果、ブランドリスクレートの低下や広告コスト削減といった目に見える成果が表れています。

対策を行っている企業とそうでない企業での差は広まるばかりとなっていますが、焦る必要はありません。対策を行いさえすれば、成果が出る可能性は非常に高いです。

アドフラウドに対する対策をまだ実施したことがない企業では、まずは前回の記事で説明したようなPre-Bid、 Post-Bid、ブラックリスト等のベーシックな対策から取り組んでいただき、アドフラウド対策のPDCAをしっかり確立したうえで、さらなる対策に取り組んでいただくのが良いのではないでしょうか。

 


今回の記事では、アドベリフィケーションの意識調査の結果と、国内外で実際に行われた取り組みについて解説させていただきました。
重要なポイントは以下の2つです。

1. 日本においてアドベリフィケーションの認知、導入は今後も拡大が予想される
2. 対策を行っている企業とそうでない企業での差広まっていく一方となる

モメンタムでは、広告代理店向けアドフラウド・ブランドセーフティ対策用ブラックリスト提供サービス「HYTRA DASHBOARD」などのソリューションを提供するほか、アドベリフィケーションに積極的な取り組みを行う広告代理店を認定する制度「Agency Certification Program(ACP)」など、デジタル広告の健全化に向けた取り組みを積極的に進めています。

「不正なデジタル広告への対策を自社でも進めたい」とお考えの広告主の皆さまは、まず一度モメンタムへお問い合わせください!
御社の状況に合わせた対策をご紹介させていただきます。

Momentum株式会社

モメンタムは、日本語に特化した言語解析技術を基盤に日本のデジタル広告業界の健全化への取り組みを牽引するアドベリフィケーションカンパニーです。アドフラウド対策やブランドセーフティにおいて世界最高水準の認定団体である「Trustworthy Accountability Group(TAG)」より日本で初めて認定を受け、さらに「Media Rating Council(MRC)」の認定を受けたパートナーとの連携によりビューアビリティ計測にも対応し、全方位型で精度の高いアドベリフィケーションソリューションの開発・提供を行っています。

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SupershipグループのMomentumは、日本語に特化した言語解析技術と独自データを活用したアドフラウド検知技術を基盤に、日本のデジタル広告業界の健全化への取り組みを牽引するアドベリフィケーションソリューションカンパニーです。アドプラットフォーム・広告主・広告代理店など、様々な企業のニーズにあわせた「HYTRA」ブランドのサービスを提供しています。

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