2024年4月1日より、Supership株式会社は親会社であるSupershipホールディングス株式会社に吸収合併されました。
合併に伴い、存続会社であるSupershipホールディングスは社名をSupershipに変更し、新たな経営体制を発足しました。本件に関する詳細は、プレスリリースをご確認ください。

広告運用のプロ達が語る、ヘッダービディングぶっちゃけ対談会レポート② 〜アプリ編〜 ※貴重※
セミナーレポート

広告運用のプロ達が語る、ヘッダービディングぶっちゃけ対談会レポート② 〜アプリ編〜 ※貴重※

前回の記事では、日本のWebサイトのマネタイズにおいてヘッダービディングをいち早く取り入れている「アド異常者」(※褒めています)と呼ばれている方々による対談形式のセミナーをレポートいたしました。
各界から大きな反響をいただきまして、ヘッダービディングに対する関心の高さを実感しました。
ご好評にお応えし、今回は、日本に限らず海外でもまだ事例が多くないであろうアプリのヘッダービディングをいち早く取り入れた株式会社ピー・アール・オー(PRO)の小数賀(こすが)さまにお話いただいた、とても貴重な講演内容をレポートいたします。
なお、本記事は小数賀さんご本人のご好意で非常にわかりやすい解説とオマケとしてあとがきも加えていただいたものとなっております。(ありがとうございます!)
それでは、アプリのヘッダービディングに関する小数賀さんの講演をお聞きください。
(イベント取材日2018年5月24日)



PROの小数賀と申します。
PROは横浜中華街にオフィスを構える、28期目になるソフトウェア開発会社です。社員は100名弱でそのほとんどがエンジニアです。Webやアプリのシステム開発をお受けしていますので、何かあれば是非ご連絡ください(宣伝)
私が担当している自社アプリの事業は、6名の少数体制で行っていまして、ソリティアなどの定番ゲームをメインに開発・運営しています。規模感としては、アプリが40本以上、ダウンロードが累計1,100万ダウンロードほどになります。デザイナーとエンジニアを募集中です(宣伝2)
※PROのアプリはこちらから

広告マネタイズは3ステップでガッチリ!

自社用に開発したメディエーションツールによりガッチリ運用しています。
配信方法については、今まで大きく3ステップの機能アップを図っていまして、1stステップでは比率による配信振り分けのみの機能でした。アプリの配信を始めたタイミングではGoogleになる前のAdMobの1択でしたが、他にも使用できるアドネットワークが登場したことから、配信振り分けしてみようというエンジニアのアイデアが始まりです。当時まだSSPやメディエーションという名称自体があったかも知らない状態の2010年春に配信を開始しました。
2ndステップではウォーターフォールによる広告配信に対応しました。ウォーターフォールでは必須のeCPMフロアに対応している事業者が増えることを待ち望んでいて、海外事業者の日本進出などで増えてきたタイミングの2015年夏に配信を開始しました。
そして、今回お話する3rdステップでは、Amazon Publiser ServicesのS2S(Server to Server)のヘッダービディングソリューション「Transparent Ad Marketplace(以降TAM)」を使ったヘッダービディングに対応し、2018年春から配信を開始しています。ヘッダービディングのアドサーバーにはAd Generation(アドジェネ)を採用しています。

ヘッダービディングを導入した3つの理由!?

ヘッダービディング(TAM)を導入した理由は大きく3つありますが、1インプレッションごとの価値を向上できると思ったからです。
1つめはシンプルにヘッダービディングは大手の複数のビッダーがファーストプライスオークションにより一斉に入札する仕組みなので、効率よく高く買ってくれそうという期待がありました。
2つめにWebで対談された方々からヘッダービディングの導入を進めているという話を聞いて、TAMならアプリにも対応しているので検討してみようと思ったこと。
3つめがTAMはS2Sのヘッダービディングソリューションなので、TAMさえ導入してしまえば、ビッダーについては実装無しで拡張できる点と、であり、レイテンシーによるインプレッションの欠損が抑えられそうという点です。
プラスアルファとして、ウォーターフォールと比較した場合のメリットや相乗効果の期待もありました。どういうことかというと、ウォーターフォールは広告リクエストの順番とeCPMフロアを変更する際にトライ&エラーが必要ですが、ヘッダービディングのビッダーに使用することで同一条件(ファーストリクエスト・同じeCPMフロア)のパフォーマンスを確認・比較できるというメリットがあり、そして、各事業者にファーストリクエストのポテンシャルを知って頂くことで、ウォーターフォールの評価も上がるのでは、と期待しました。
ちなみに、実際にヘッダービディングとウォーターフォールの両方で使用しているアドジェネのRTB広告の売上推移を確認したところ、ウォーターフォールの収益も増えていました。

ヘッダービディング導入のポイントや注意点

PROではヘッダービディングのアドサーバーにアドジェネを採用しましたが、理由は、システム的な相性がよく、これまでウォーターフォールで使用実績があり、サポートも安心だったからです。
また、アドサーバーという役割だけでなく、アドジェネのRTB広告がヘッダービディングの1ビッダーとしても発揮できるのではという期待もありました。
導入に関しては、1ソリューションに対して、TAMとアドジェネの2社とのトライアングルの調整が必要となるので、全体像を理解するまでは少し戸惑う点がありました。
実装については、全体像を理解してしまえば、難しくありません。
ビッターの追加についても、ビッターおよびTAMとのトライアングルの調整となりますが、実装は不要ですので、事務的な調整のみとなります。
スケジュール的な面では、TAMやビッダーとの契約が個別に必要になるので、そういった時間も考慮する必要があります。
その他としては、新規導入する際に忘れがちな広告ブロックを確認しましょう。TAMビッダーについては、ビッターごとに必要なタイムアウト値が異なるので確認することをお勧めします。

システム構成の詳細は割愛しますが、最初にTAMにリクエストを送り、TAMのビッダー間で入札を行います。TAMの入札結果をアドサーバーのアドジェネに渡し、TAM勝者とアドジェネのRTB広告で競争します。入札が成立しなかった場合、弊社ではウォーターフォールを呼んでいます。

次にテストや本番の配信後に確認が必要なレポートの話です。TAMとアドジェネのデータを各々集計することになりますが、タイムゾーンと通貨が違うので、その点の注意は必要です。
TAMの管理画面には複数のレポートがあり、絞り込みなどもあり、細かく集計できます。Amazon以外のビッダーの実績も見ることができますが、収益は参考値となります。支払はビッダーからになりますので、各ビッダーの管理画面のチェックも必要です。
ちなみにPROは数多くのアプリを出しており、使用する広告が増えると集計に手間が掛かるので、集計システムを用意し、各社のレポートをAPI・スクレイピング・CSVによりインポートしています。

ヘッダービディングの導入で収益UPに成功!

前段が長くなりましたが、ここから結果のご報告です。
昨年の11月から新規アドネットワークの導入やウォーターフォールのチューニングなど広告マネタイズの強化を進めており、段階的にPROのアプリ合計収益がアップしています。
その中でも3月から開始したヘッダービディングによる伸びが大きい状況です。現在、5アプリに導入しています。その中からPROの代表アプリである「ソリティアV」の実績を紹介します。

ソリティアV

iOS版 Android版

広告サイズは320×50バナーとレクタングルの2種類あり、今回、ヘッダービディングの導入と同タイミングで広告枠などアプリの改良も合わせて実施しています。ヘッダービディングで使用したフロアプライスですが、同一条件での推移を見るために初期の設定から変えていません。

ソリティアVの収益は!?

売上は月の日数やImpによって変わりますので、eCPMの変化を中心にご紹介します。ソリティアVでヘッダービディングの配信を開始したのが3月後半となりますが、前月比で152%と大幅アップに成功しました。3月は収益性が高まる時期ですが、11月からの広告マネタイズ強化により収益がアップしていた状態にさらに大きく上乗せした形になるので、非常に満足しています。
3月と比べ収益が落ちる4月の結果が気になるところですが、前月比で4%の低下がありましたが、2月との比較では146%と好調をキープしています。

ヘッダービディングの単体では!?

3月の実績としては、eCPMが予測よりも非常に高く、フィルレートも10%弱とまずまずで、結果的にヘッダービディングの収益性が非常に高いことが分かりました。4月はeCPMとフィルレートの共に若干低下しましたが、収益性としては高い結果となっています。
ヘッダービディングのパワーを活かすには、eCPMフロアの設定も重要と考えていて、今回、その設定も上手くいったと思います。マニアックな話になりますが、フロア設定に役立ったのが、社内でウォーターフォールのパフォーマンスチェックに使用しているeCPMのフロア比(eCPMフロアに対するeCPM実績の比率)です。eCPMの目標設定とフロア比の予測を行い、そこからフロアの設定値を逆算(eCPM目標値÷予測フロア比=フロア設定値)します。eCPMの目標値は、フィルレートを考慮して高過ぎず、ウォーターフォールへの影響を考慮して低過ぎない値を設定しています。実際のフロア比の結果は、広告枠によって若干差がありますが、予測を超える200%前後の結果となりました。

TAMビッダーとアドジェネの比較!?

ヘッダービディングの中の簡易分析を紹介します。TAMとアドジェネの比較としては、eCPMはTAM側の方が高い傾向にありまして、オークション形式の違いによるものと推測しました。一方でフィルレートはアドジェネ側の入札が高い傾向にありまして、ビッドレートやオークション形式によるものと推測しました。TAMの各ビッターについてもOSや広告サイズなどで違いがみられました。
まとめるとビッターごとに特性が異なり、TAMとアドジェネについては競争かつ補完の関係にあると考えました。パブリッシャーにとっては、eCPMが高まり、フィルレートも上がるというよい関係かと思います。

導入結果のまとめ

ヘッダービディングを導入した感触としては、ポテンシャルが非常に高いと思いますし、ビッダーの追加やフロアの調整など伸び代があると考えています。
成功ポイントはご説明したとおり、アプリの改良×ヘッダービディングのハイパフォーマンス×絶妙なフロア設定の相乗効果だと思います。
導入には契約とかの手続きや、アプリなのでWebと比べるとSDKの実装などにも時間がかかるので、みなさんも早く始めたほうがいいのではと思います。

オマケ:質問されていないのに勝手にQ&A

アプリの改良内容は!?

アプリの改良としては、ゲームの結果画面がモッサリしていたのでスッキリさせて、広告サイズをバナーからレクタングルに変更しました。ゲームアプリでは、ユーザーがほっと一息つく結果画面に広告を設置すると非常に効果的ですが、従来設置していたバナーよりもeCPMが高いレクタングルにサイズ変更を行ったことも、アプリ全体での収益アップに貢献してくれた要因と思います。

インタースティシャルの結果は!?

ソリティアVでバナーとレクタンの効果は出ています。インタースティシャルを導入している別のアプリで配信した結果をご紹介しますが、ヘッダービディング相当のフロアを引いた場合、不満足な結果となっています。他の広告サイズと比べ、ビッドレートが非常に低いので、今後に期待します。

今後の要望は!?

他社さんの実績もすごく知りたいです。具体的にはKPI、フロアを設定するプロセス、そういうことをぜひパブリッシャー同士で共有していければと思っています。(フロア比も知りたいです。)
また、個人的にはeCPM(高さ)とフィルレート(幅)を掛け合わせた新たな指標が欲しいと考えています。
Amazonさんへのリクエストとしては、TAMのタイムゾーンの選択がESTとPSTなので、ぜひJSTを追加していただきたいです。あと、海外事例を知りたいのとインタースティシャルにも力を入れて欲しいです。
アドジェネさんに対しては、キーバリュー設定に関するUI向上をお願いしたいです。(本件についてはイベント終了後に対応頂きました。)
ファーストプライスオークションについても、eCPMとフィルレートが上がるのであれば是非お願いしたいです。

イベント後の感想や状況!?

イベント後にWeb事業者さんからの反応はまずまずでしたが、アプリ事業者さんには少し難しかった様です。アプリではヘッダービディングもそうですが、ウォーターフォールも使用しているところが少ないのかもしれません。また、イベント時に収益・eCPM・Impなどの実績を全てパーセントで表記していて、分かりづらい点もあったかと思いますので、この記事を読んで頂けると幸いです。
イベント後もTAMビッダーの追加(現在Amazonを含めて3社)やヘッダービディング対応アプリの追加(現在9アプリ)を進めています。現時点でもヘッダービディングの効果は継続していますので、アプリでも導入をお勧めします。

アプリでもポテンシャルの高いヘッダービディングの今後に期待しています!


Supership ジ・アドジェネ(Ad Generation統括) 池田 寛のコメント
 「今回のイベントにお集まりいだだいたオーディエンスの97%が、理解できずにフリーズした講演内容をシェアできることに、とても興奮しています。」

★前回の記事はこちら

まとめ
日本が誇る「アド異常者」達によるヘッダービディングの最前線の、さらに最前線、アプリ編を取材させていただきました。
SSPという言葉すら日本で浸透していない時代からメディエーションツールを自社で開発し、運用するマニアックぶりに脱帽せざるを得ません。
アプリでのヘッダービディング導入にあたり、注意すべきポイントなど、実践的なお話も伺えて、非常に参考になる講演でした。少しでも多くのパブリッシャーのみなさまの参考になればと思います。
ヘッダービディングの導入に関して、少しでもご興味を持たれた方は、お気軽にAd Generationサポート担当までお問い合わせくださいませ。


小数賀様、貴重なお話、本当にありがとうございました!

Ad Generation

「Ad Generation(アドジェネレーション)」は、楽しく、自由につかえる、パブリッシャー向けアドプラットフォームです。国内外の主要な広告配信事業者とのパートナーシップにより、広告の自動最適化配信や、収益レポートの一元管理を行うことで、広告収益最大化と広告運用コスト削減を支援します。
“制約なくご利用いただけるアドサーバー”という設計思想に基づき、パブリッシャーのニーズに合わせた自由度の高い広告配信設計が可能なうえ、ヘッダービディングへの対応など、最新のアドテクノロジーとサービスにより国内大手パブリッシャーを中心にスマートフォンアプリ/ウェブにおける最大規模の導入シェアを誇ります。

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