7月18日、PhybbitとMomentumの共同開催により、「アドフラウド勉強会」が開催されました。初開催にも関わらず100名の満員となった会場では、国内でアドフラウド対策ソリューションを提供する両社によるアドフラウドについての基本から対策方法などに関する講演や、アドネットワーク事業者同士の対談、懇親会がおこなわれ、大盛況の様子でした。
本記事ではMomentum代表 高頭によるアドフラウドの基本と対策方法に関する講演をレポートします。
モメンタムについて
モメンタムは、本勉強会のメインテーマ「アドフラウド」の領域に携わって4年ほどになります。関連する領域としてブランドセーフティやビューアビリティの領域を含め、これらを総称するアドベリフィケーション事業を専業でおこなっています。2017年よりKDDIグループにジョインしました。
手前味噌となりますが実績を簡単にお話しますと、アドフラウドやブランドセーフティにおいて世界最高水準のTAGガイドラインに遵守した日本初の企業として認定を受けており、電通・電通デジタル・CCIさんらと立ち上げた、アドベリフィケーション推進協議会にて日本におけるアドベリフィケーションの実態調査や対策方法など有益なデータの提供をおこなっています。また、弊社のアドフラウド対策ツールは国内の広告配信プラットフォーム10社以上に導入いただいており、国内の導入数はトップシェアとなっております。
アドフラウドって?
アドフラウドとは、直訳すると広告詐欺という意味です。広告主さまにとっては誰もいない廃墟にポスティングしているようなもので、広告費用が無駄に使われてしまうことに問題があります。しかし、こうしてかすめ取られたお金がアドフラウドを生業とする悪意ある組織の手に渡ることで犯罪の助長につながってしまうこともあります。よって、アドフラウド問題は広告業界に限った問題ではなく、国をあげて社会問題として捉え、徹底的に対策すべきではないかと私は考えています。
こちらはアドベリフィケーション推進協議会で公開したIASさんとの共同調査結果を抜粋したものですが、2017年度の国内のプログラマティック広告取引においてアドフラウドは8〜9%存在しております。
つまり、我々が納めている消費税と同じくらいの割合で無駄な広告コストを広告主は支払ってしまっている可能性があるのです。また、アドフラウドは広告効果の悪化の原因にもなっています。
以前ソネット・メディア・ワークス様と共同で行った調査によると、アドフラウド対策によって特定カテゴリーのターゲティング配信においてはCPAが7.2%、CVRが10.9%と大きく改善される結果が見られています。
(出典:<レポート> 『アドフラウド対策の実装』における実証実験/ソネット・メディア・ネットワークス株式会社)
アドフラウドの対策をおこなうことで、無駄な広告費の削減だけでなく広告効果の改善も期待できます。
どんな手口があるのか?
アドフラウドについて簡単にご説明させていただいたところで、次に具体的な手口について、最近特に多く観測されるものをいくつかご紹介させていただきます。
1.Domain Spoofing / Falsely Represented(取引情報の偽装)
「ドメインスプーフィング」とは、悪質なサイト運営者などが、故意に広告掲載先のドメインを偽ることで不正に広告収益を得ようとする、”なりすまし”による広告詐欺の手口の一つで、モメンタムでは今年4月に国内トラフィックランキングで上位に入る巨大漫画ストリーミングサイトにおいてこの手法を利用したアドフラウドを検知し、注意喚起をさせていただきました。TVや新聞・雑誌でもこの違法サイトについての特集が組まれていたので記憶に新しい方もいらっしゃるかと思います。
お知らせ:https://www.m0mentum.co.jp/news/ja/2018-04-02-domain_spoofing.html
2.Imp/Click Bot, Retargeting Fraud(プログラムされたブラウザによる広告閲覧)
プログラムにより操作したブラウザにより、インプレッション・クリックを生み出す手法です。
インプレッションのみを大量に発生させるもの、クリックを一定間隔で発生させるもの、リターゲティング広告を引き込むように一度ブランドページに訪れるもの、挙動は多岐にわたります。
Botが実行される環境についても、Data Center上のものもいれば、マルウェアに感染し支配権を握られた個人用端末上のものもあり同様に多岐にわたります。
その他、Cookie Stuffing(不正な成果の獲得のためのクッキー汚染)、Sourced Traffic(第三者からのトラフィック獲得)などのアドフラウドが解説されましたが、詳細はこちらの記事でまとめておりますのでご参考ください。
https://supership.jp/magazine/technology/1795/
三段構えのアドフラウド対策を
ここからは広告主様向けに対策方法についてお話します。
モメンタムでは、Pre(事前)、Post(最中)、After(事後)の三段構えのアドフラウド対策の実施をおすすめしています。
まず最初はPre(事前)対策です。
アドベリフィケーション対策ツールを導入しているDSP事業者さんを使うこと。
我々アドベリフィケーション事業者が提供しているアドフラウドやブランドを毀損するリスクの高いドメインのブラックリストと連携しているDSP事業者を選定して広告取引を行うことで、無駄な買い付けを事前に防ぐことができます。
次のステップはPost(最中)です。
解析用のタグを通した広告配信を行うことで、リアルタイムで広告取引をモニタリングし、解析をしながらブラックリストをつくっていきます。一度ブラックリストに入れてしまえば、次に訪れた際は広告を表示せずにダミーの広告を表示するなどで、被害を抑えることできます。
そして最後にAfter(事後)分析です。
広告配信で培った配信実績データを、機械学習に加え専任の担当の目視チェックも加えた徹底解析によってさらに詳細に解析し、アドフラウドやブランド毀損リスクの高いドメインをブラックリスト化することで、ブラックリストを随時更新していきます。
こうして、事前、最中、事後の3段構えの対策サイクルをまわすことにで、相乗効果で効果を高めることができます。
最後に、モメンタムがみなさんと達成したいビジョンについてお話させてください。
モメンタムは、「広告取引をクリスタライズする」というビジョンを掲げ、アドベリフィケーションソリューションの開発・提供を行っています。
こうして開発したソリューションを、DSP、SSP、広告主、代理店など、様々なプレイヤーの方に使っていただくことで、業界全体で一丸となって、広告取引における不純物をなくしてインターネット広告の価値を向上させていきたいと真剣に思っています。
ぜひ、みなさまひとりひとりがアドベリフィケーションに関する理解を深め、それぞれの立場でできる対策をしていただくことで、健全で透明性の高いインターネット広告の世界をつくっていければと思っています。
ご静聴ありがとうございました。