サブスクリプションや継続課金型のサービスでは、初めてサイトを訪れたお客さまに、いかにサービスの価値を伝え、申し込みまで導くかが共通の課題です。とりわけ、行動データの蓄積がない初回訪問のお客さまに対しては、属性や興味関心に応じた接客が難しく、多くの企業が一律の案内にとどまっているのが実情です。
UQ WiMAXは、KDDIグループのUQコミュニケーションズが提供するインターネット接続サービスです。初めてオンラインショップに訪れたお客さまにいかにサービスを理解いただき、申し込みにつなげるかがテーマの一つになっています。
本記事では、UQ WiMAXがこの課題にどう向き合い、成果につなげたのかを紹介します。要点は次の3つです。
- 初回訪問から「一人ひとりに合わせた接客」へ:行動データが溜まる前の初回訪問の段階から、属性に応じてWeb接客を出し分け
- データの掛け合わせで実現:SupershipのパブリックDMP「Fortuna」のデータを、プレイドのCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」に掛け合わせ
- 成果:自宅セット割ポップアップで、申込率(CVR)が約1.5倍に
こうした取り組みを、UQ WiMAXのマーケティングを担うご担当のお二人と、伴走したSupershipの担当者に伺いました。
【登場人物】
- KDDI株式会社 パーソナルコア事業本部 パートナー第1営業本部 直販営業グループ グループリーダー 鈴木 優 様
- パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社 CX事業本部 DX統括部 デジタルマーケティング部 天野 美里 様
- Supership株式会社 マーケティングアーキテクト部 CXプランニング1G グループリーダー 武村 篤史
- Supership株式会社 マーケティングアーキテクト部 CXプランニング1G 栗田 彩音
聞き手は、SuperMagazine編集部が務めます。ここからは、編集部がお二人と担当者に話を聞く形でお届けします。
これまでの取り組みと伴走体制
ーまずは、自己紹介をかねて、現在担われている役割について教えてください。

鈴木様「KDDIの鈴木です。パーソナルコア事業本部 パートナー第1営業本部 直販営業グループでグループリーダーを務め、いまはUQ WiMAXのマーケティング担当として、オンラインショップとテレマーケティングの両領域を管轄しています。Supershipさんとは長くご一緒しており、au・UQ mobile・UQ WiMAXの広告プロモーションを中心にお取り組みしてきました。2023年にUQ WiMAXのオンラインショップが私たちの部署へ移ってきて、いまはその運用を委託先のパートナーと一緒に進めています」
天野様「いま話に出た『委託先のパートナー』というのが、私たちです。パーソルビジネスプロセスデザインの天野と申します。弊社は2024年12月からUQ WiMAXのマーケティング支援に携わっています。その中で、Supershipさんにご提案いただいたKARTEの施策を動かす業務を担っています」

武村「Supershipの武村です。マーケティングアーキテクト部 CXプランニング1Gでグループリーダーをしています。Supershipは、デジタルマーケティング領域全般を担う会社で、広告プロモーションからCRM活用において、お客さまがサイトやアプリに来られた後のコミュニケーションまで幅広くご支援しています。一般的な代理店と少し違うのは、キャリアデータも活用しながら、かなり踏み込んだところまでご一緒する点ですね。今日お話に出てくるFortunaは、私たちが保有するパブリックDMPです。私自身は、そのなかでCX領域の改善提案と施策の進行を担当しています。
UQ WiMAXさんとは、もともと広告・プロモーションの領域からずっとお取り組みをしてきました。そこから2025年の夏ごろに、サイト内の改善におけるCX領域でもご提案を始めて、いまに至ります」
栗田「同じくSupershipの栗田です。私もCX領域で、いろいろなお客さまの施策の設計や提案、その後の運用までを担当しています」
課題は「来訪したお客さまの申込率をどう上げるか」

ープロモーションにおけるツールとして、なぜKARTEが導入されることとなったのでしょうか。また、KPIはどういった形で設定されていましたか?
鈴木様「勝負どころは、来ていただいたお客さまの申込率をどう上げるか、です。大きな目標としては新規契約者(新規ID)の拡大がありますが、その先にはお客さまに当社の様々なサービスをご利用いただきご満足いただく、そして長く使っていただく、つまり解約率を下げていくところまで含めて取り組んでいます。ただ、市場としてやみくもに集客量を増やす段階ではありません。だからこそ、すでに来ていただいたお客さまの申込率を引き上げることが重要になります。あわせて、Try WiMAX(15日間UQ WiMAXをお試しでお使いいただくサービス)の貸出数を増やすことも、本契約につながる大事な打ち手です。その一環として、まずKARTEを導入し、Webの行動履歴や閲覧履歴を見ながら、お客さま一人ひとりに合わせた接客を始めていました。
ただ、正直なところ、手探りの部分もありました。私たちのグループは、少人数のグループであることもあり、Webに明るいメンバーに外から加わっていただいたり、Supershipさんの力も借りたりしながら、A/Bテストを回していました」
ーKARTEの運用においては、どういった課題感がありましたか?
鈴木様「通常のA/BテストでもCVR(コンバージョン率)は上がってきます。ただ、スマートフォンとのセット訴求のような、もう一歩踏み込んだ出し分けをしようとすると、Webの行動データだけでなく別のデータも必要になってきます」
武村「もう少し構造的に言うと、特に初めて来られたお客さまだと、どんな属性の方なのか、どんな関心をお持ちの方なのか、 といったことが分からない。だからこそ、初回訪問のお客さまへの出し分けが、手付かずのままになっていました」
鈴木様「そういった部分も含め、KARTEを入れてはみたもののもっと“使い倒したい”という思いはずっとありました。行動履歴だけでも接客はできますが、そこにデータを掛け合わせれば、KARTE自体の力ももっと引き出せるんじゃないか、と。
そう感じていたところに、ちょうど今年の1月にFortunaとKARTEがつながったので、これでさらに踏み込んだ活用ができるのではないかと考えました。Fortunaは広告配信で活用していて、自社サイトの行動データだけでは届かないターゲットにも、Fortunaのデータを掛け合わせることで成果が大きく変わるのは実感していましたから、期待は大きかったですね」
Supershipのアプローチ:「KARTEを使い倒す」活用診断と「山の登り方」

ーその課題に対し、Supershipはどういったアプローチを考えたのですか?
武村「いただいていたのはKARTEを活用した申し込み率の改善でしたので、まずは『KARTEを使い倒す』ところを段階的に登っていくイメージで整理しました。最初に活用診断で、いまの使い方と成功の基準を可視化し、そのうえで、Webサイトだけで完結していた施策をマルチチャネルに広げたり、Cookieベースの行動データに外部のデータをつないで接客を高度化したりという『山の登り方』をご提案しました。そのうえで、これを順番に登っていきましょうとお話ししました。

具体的には、お客さまがサイトに来てから申し込みを終えるまでの導線を可視化して、どこから手をつけるか優先順位をつけていきました。合わせて、改善したいページに対してどんなデータが使えるかを検討しました。KARTEなら、ページの閲覧回数や滞在時間などをきっかけに接客できますから、それを一つひとつ施策に落とし込んでいきます。その中で、高度化を進める一手として、外部データ、つまりFortunaをKARTEにつなぐ、というソリューションが具体化していきました」
ー実行は、どのような体制で進めているのですか?
栗田「お客さまがどう動くかを想像しながら、『こうしてみませんか』というご提案を、クリエイティブのラフの段階から出しています。設計からラフ、配信の設定、その後の運用まで私たちが引き受けることで、お客さまには『どうするか』を決めることに集中していただけます。提案だけで終わらず、そこまで一緒にやるのが、私たちの役割だと思っています」
Fortuna接続で踏み込めた、二つの領域

ーKARTEにFortunaを接続して、これまで届かなかったどんな領域に踏み込めるようになったのですか?
武村「これまでKARTEで接客に使えるのは、基本的にサイトのなかの行動ログでした。そのため、先ほどお話ししたとおり、初めて来られたお客さまはどういった属性の方なのかが分からない。それに応じた接客もできませんでした。そこにFortunaをつなぐと、行動データが溜まるのを待たずして、初回訪問の段階から、匿名化されたキャリアデータ(属性や興味関心)をもとに『この方にはこのご案内を』と接客を出し分けられる。これが一つ目です。
もう一つは、配信結果の分析です。どの接客で申し込みに至ったのか、あるいは至らなかったのか。その結果を次の接客(配信)に反映することで、出し分けの精度を上げていけます」
ーその「分析」では、具体的にどんなことが見えてくるのですか?
武村「たとえば、20〜30代の方の申し込み率が高いと見えてきたら、その層がどんな傾向を持っているのか、といった『勝ちパターン』まで掘り下げられます。逆に、申し込み率が伸びていない層があれば、次にどんな出し分けをすれば届くかを考える。すでに申し込みが多い層をさらに伸ばすのか、伸びていない層に届けるのかという、次の打ち手が見えやすくなります。ここはまだデータを貯めている段階ですが、これから接客や配信の改善に活かしていきたい部分です」
ーデータを突き合わせると、打ち手の幅はどう広がるのでしょうか?
武村「わかりやすいのは、データそのものの広がりです。これまではKARTEの行動データしか使えなかったものが、属性をもとに、初回訪問のお客さまにもパーソナライズできるようになりました。もう一つは、分析の“深さ”です。行動だけですと、分析は『良かった・悪かった』で終わりがちです。そこに匿名化されたキャリアデータを突き合わせると、配信の結果として、どんな接客がどの層に届いたのかが見えてくる。単純なA/Bテストに、『なぜ刺さったのか、なぜ刺さらなかったのか』という視点が加わる。そこが大きな違いですね」
具体施策と成果 —— 自宅セット割ポップアップ
ー実際に、どんな施策に活かしたのですか?
武村「いま動いているのは、『自宅セット割』のポップアップです。Fortunaの匿名化されたキャリアデータをもとに、自宅セット割と相性の良い方に、行動データが溜まる前の初回訪問の段階から『UQ WiMAXとセットなら自宅セット割が受けられますよ』とご案内する。さきほどの初回訪問パーソナライズを、そのまま施策にしたものですね。同じ内容はサイトにも書いてありますが見落とされがちなので、こちらから能動的にお得さをお伝えすれば、申し込み率が上がるのではないか、という仮説で始めました」
ークリエイティブは、何パターンか試されているとか。

武村「はい、いまA/Bテストで3案を回しています。『申し込まないともったいないですよ』と損失回避に訴えるもの。毎月の割引額(月額最大1,100円)を直球で打ち出し、家計の節約を伝えるもの。そして、ご家族みんなが安くなる、という家族向けのもの。この3つです。
正直なところ、案ごとの差はそれほど大きくは出ていません。ただ、これも一つの発見で、まず『セット割がある』こと自体を知っていただくことに意味があったと考えています」
ーその「初回訪問からの出し分け」は、どんな結果につながりましたか?

鈴木様「自宅セット割をご案内する対象のお客さまのなかで、初回訪問からポップアップを出した群と、出さなかった群(コントロール群)を比べると、表示群が5.06%、非表示群が3.31%で、CVRで1.75ポイントの差が出ました。なかなかの効果だったと受け止めています」
ーこのリフトは、肌感としては大きい数字なのでしょうか。
天野様「『大きいかどうか』というより、明確な有意差が出ているところが大事だと思っています。やる・やらないでいえば、やったほうがいいのは明らかですし、そのうえで、どの見せ方がより効くのかまで試せている。そこが良いと感じています」
鈴木様「Fortunaのデータを活かせば、迷っていらっしゃる方と、初めて検討される方とで、響かせ方を変えられる。そこも良いところです。
こうした取り組みを地道に続けてきた結果、オンラインショップ全体の数字も伸びています。テレマーケティング領域も好調で、Webと電話の両面から、これまで申し込みを躊躇されていたお客さまを電話に誘導するなど、デジタルとリアルの連携もうまくワークしてきました。クロスセルの面でも効いていると感じます」
伴走の手応え:KDDIから見たSupership
ーCX改善のお取り組みがスタートしてからおよそ1年となりました。この1年のSupershipによる伴走態勢について、どのようにお感じになられていますか?
鈴木様「KDDI本体には、デジタル領域の知見が豊富なメンバーばかりがいるわけではありません。SupershipさんのようなWebのプロと日々やり取りするなかで、まず私たち自身が育ててもらっている、という感覚があります。毎週の定例でも熱量を持って向き合ってくださっていると感じます。
また、商材を細かくは知らない方の目線で『お客さまにはこう見えますよ』とはっきり指摘してもらえるのも、とても参考になります。自分たちだけだと、どうしても見落としてしまうので」
ー率直に、ほかの支援会社との違いを感じる場面はありますか。
鈴木様「支援会社さんでよくあるのは、提案はいただけるけれど『あとはお願いします』となって、なかなか手が回らないパターンです。Supershipさんは提案したうえで実行までやり切ってくださり、一緒に走りながら、ナレッジが私たちの社内にも溜まっていく。そこに最も価値を感じています。私たちと同じくらいの温度感で真剣に考えてくださるのがちゃんと伝わってきます」
天野様「施策を一つひとつ回していくのは、やはり相応に大変です。結果を見て、次を考えて、また回して……と、どうしても時間がかかる。そこをSupershipさんが別の軸からも動いてくださるので、本当に助かっています」
ーいまお話に出た「お客さまの目線」は、Supership側ではどう意識しているのですか。
武村「第三者だからこそ見える、という部分はあると思います。最終的には一般の消費者の方にどう受け止めていただくかという話ですから、その視点は大事にしています。あわせて、私たちはKDDIさん以外にもさまざまな取り組みをしているので、ほかの事業部やほかの業種ではこう進めている、といった引き出しを持ち込めるのも強みの一つだと思っています」
栗田「私はお客さまの目線で『このボタンは押しやすいか』『申し込みの妨げになっていないか』といった行動のコストを、できるだけ細かく見ています」
今後の展望

ーこれから、Supershipと一緒に取り組んでいきたいこと・期待していることを聞かせてください。
鈴木様「加速させたいのは、KDDI商材のアップセル・クロスセルですね。UQ WiMAXはグループ会社であるUQコミュニケーションズの商材ですが、KDDIのスマートフォンやau IDとつながっている部分もあります。そのつながりを生かして、私たちのサービスをより多くのお客さまに使っていただけるよう広げていきたいです」
天野様「オンラインショップにおいて、LINEを活用した施策を始めたばかりなのですが、その連携も進めていきたいですね。連携が進むと、LINE IDとKARTEのIDがつながり、LINE配信でのパーソナライズもより高度にできるようになります。すでに友だち登録をしていただいている方も一定数いらっしゃいますので、その方々のID連携をどうするかもぜひ一緒に考えながら進められたら嬉しいです」
ーSupershipとしては、その期待を受けてこれからどう発展させていきたいですか?
武村「申し込み率をどう上げるかは、引き続きご一緒したいところです。そのうえで、経営全体で見れば総合的な集客もテーマになりますので、その領域までしっかりご支援できればと思っています。
今はKARTEと組み合わせたLINE配信を準備しています。LINEをKARTEで配信する良さは、『どのページで離脱したか』『どのページを見たか』という行動を踏まえたナーチャリングができること。そこにFortunaを重ねれば、先ほどの『山の登り方』でいう、もう一段上の理想に近づいていけると考えています。
どの接客・配信が申し込みにつながったのかを見比べる分析も、これから進めていきます。データが溜まってきたら、きちんと事例として形にしていきたいですね」

まとめ
UQ WiMAXの事例では、匿名化されたキャリアデータをFortuna経由でKARTEに連携することで、初回訪問からのパーソナライズが可能になりました。これまでサイト内の行動データだけでは届かなかった領域に踏み込めるようになり、Supershipの伴走によって施策が前に進み始めています。
KARTEの運用は、データの掛け合わせだけでも、ツールの導入だけでも完結しません。CXコンサルティングによる伴走によって、現場の判断軸や優先順位づけ、運用のノウハウまでが揃って、はじめて成果につながります。
Supershipは、KARTEの活用診断から、匿名化されたキャリアデータを活用した施策設計、A/Bテストによる検証・改善のサイクルまでを、一気通貫で伴走しています。今回のUQ WiMAXの取り組みは、同じ課題を持つ多くの企業にとっても、ヒントになるはずです。
このようなお悩みをお持ちではないでしょうか?
- KARTEを活用しているが、うまく使いこなせていない
- 初回訪問者のパーソナライズに踏み込めていない
- データはあるが、改善の進め方が分からない
- CRM運用のリソースが足りず、打ち手が広がらない
- 何から始めたらいいか分からない
弊社では、専門スタッフによる無料相談を受け付けております。LTV向上・CX改善にお困りの企業さまは、ぜひ以下のフォームよりお気軽にご相談ください。
■KDDIのお客さまデータの利用について
Supershipは、KDDIグループのデジタルマーケティング事業を担う中核企業として、KDDIがお客さまから第三者提供の同意を得た属性情報及びサービス利用情報の提供を受けています。この情報には広告IDなどのユーザー識別子、性別・年齢・居住地などの属性情報に加え、KDDIサービスの加入、利用状況や端末情報が含まれています。
Supershipでは、この業界最大規模の質の高いデータ資産を活用し、分析から配信まで一貫した支援を行うことで、データ環境の変化に左右されない持続可能なマーケティングの実現を目指しています。
プライバシー保護のため、利用するデータは適切な加工処理を施しており、氏名や住所など個人を特定できる情報は含まれていません。
※詳しい情報は、KDDIの「当社グループ会社を介したデジタル広告の配信等」のページをご確認ください。
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