越境ECにおける市場開拓のポイントTOP3 #KDDI America × Artis New York × Supership 3社共催セミナーレポート
2024年、グローバル化が進む中、日本企業にとって海外市場への展開は重要な成長戦略となっています。特に、米国市場は巨大な消費力と先進的なEコマース環境を持ち、多くの日本企業が注目しています。しかし、文化や消費者行動の違いから、米国市場への参入には独自の戦略と準備が必要です。
本記事は、2024年3月28日に開催されたArtis New York, Inc.、Supership株式会社、KDDI America, Inc.の共催ウェビナー「越境ECにおける市場開拓のポイントTOP3」で解説されたポイントをダイジェストでまとめたものです。
アメリカ市場開拓のポイント/Artis New York, Inc.
本日は、越境ECを成功させるために押さえておくべきアメリカ市場のトレンドや、市場調査の重要性をお話しします。
アメリカのEコマース市場は、日本の約6倍の規模を持っています。人口比で考えると、アメリカは日本の約3倍の人口ですが、オンラインショッピングの規模は6倍となっており、非常に活発な市場であることがわかります。アメリカの消費者のオンラインショッピング習慣は、日本より約5年先行していると言われています。
そんなアメリカにおける最新の消費者行動からみる特徴は以下の通りです。
- 360度商品ビュー
- 家具などの大型商品でも、360度ビューや拡張現実(AR)技術を使用して、実際の部屋に配置したイメージを確認できます。これにより、サイズ感や実際の雰囲気を事前に確認することができます。
- 画像検索機能
- Google Lensなどの技術を使用して、似た商品や色違いの商品を簡単に探すことができます。- 「この商品は気に入ったけど、別の色が欲しい」といった要望にも簡単に対応できます。
- 詳細な消費者レビュー
- 商品名を入力すると、消費者のレビューが豊富に表示されます。使用感や実際の写真付きレビューが多く、購入の参考になります。
- 価格比較の容易さ
- Google Shoppingなどのツールを使用して、様々な販売元の価格を簡単に比較できます
- 商品名を入力するだけで、複数の販売サイトの価格が一覧表示されます。
こうした消費者行動に対し、アメリカの大手小売業者は、オムニチャネル戦略を積極的に採用しています。オムニチャネル戦略とは、以下の要素を統合したアプローチです。
- 実店舗
- オンラインショップ
- ソーシャルメディア
- モバイルアプリ
- Eメールマーケティング
- 紙のフライヤー →郵送でカードやカタログの送付
この戦略により、顧客に対してシームレスな購買体験を提供することが可能になっています。例えば、ウォルマートのCIOは「パーソナライズされた顧客体験の提供」を重視しており、Nordstromのエグゼクティブもオンオフのシームレスな顧客体験の重要性を強調しています。
さらに考慮すべきアメリカの消費者行動を読み解くにあたり、ミレニアル世代(28歳から41歳)が商品消費の主役となっている事実も考慮すべきポイントです。この世代の特徴は以下の通りです。
- デジタルネイティブ世代
- 多様性:白人層が減少してきていて、マイノリティが40.5%を占める
- 高学歴:67%以上が大学の学位を持つ
- 都市部居住:90%が都市部に住んでいる
- 価値観:物よりも経験を重視し、ブランドのストーリーや生産者の努力に興味を持つ
以上のことから、アメリカ市場ではこれらの特徴を踏まえたマーケティング戦略が重要となります。
さらに、アメリカ市場に参入する際、綿密な市場調査は不可欠です。特に、日本とアメリカの文化や消費者行動の違いを理解することが重要です。
市場参入を成功に導くポイントは大きく5つあります。
- 斬新な切り口
- 新しい技術や独自のアプローチを持つ商品は、競争の激しいアメリカ市場でも注目を集めやすい。(例:日本では一般的なマイクロバブルシャワーヘッドが、アメリカでは新しい技術として注目を集めた。)
- トレンドへの適合
- 現在の市場トレンドに合致する商品は、市場拡大の波に乗りやすい。
- 消費者が抱えるペイン(問題点)の解決
- アメリカの消費者が抱える具体的な問題や不便を解決する商品は成功しやすい。
- 明確なベネフィット説明
- 商品の利点や価値を明確に伝えることが重要。
- 適切な価格設定
- 市場調査に基づいた競争力のある価格設定が必要。
越境ECを成功させるには、これらのポイントを押さえる抑えるための市場調査が重要なフェーズとなります。
デジタルマーケティングのテストフェーズで掴む 越境EC成功へのヒント/Supership
前段の通り、アメリカ市場への参入を成功させるには、綿密な市場調査が不可欠です。国内ですでに実績のあるブランドやサービスを、海外市場にそのまま持っていっても、うまくいかないケースが多くあります。そこで、越境ECを本格的に推進する前段階として、まずはテストフェーズを設けることをおすすめしていますが、今回はいくつかの調査手法の中でも費用と工数の面で実施しやすい、広告配信を活用したマーケティングアプローチをご紹介します。
ポイントは以下の3つです。
- テストフェーズの目的設定
- 広告配信で効率的にターゲットセグメントを発掘
- データに基づきターゲットセグメントを精緻化
テストフェーズの目的設定
Supershipでは、デジタルマーケティングにより、日本とアメリカ市場におけるターゲット層と効果的な訴求軸の違いを明確にするテストフェーズをご支援しています。これにより、市場特性にあわせて戦略をカスタマイズするヒントを探ります。その際に重要なのは実施する目的を明確化することです。ここでは市場への本格展開ではなくあくまで市場適応を目的として施策設計を行うことが重要になってきます。
広告配信で効率的にターゲットセグメントを発掘
テストの目的を明確化してから、目的達成に向けた戦略設計のもと、テスト実施のフェーズに移ります。基本的には、日本市場の成功事例を踏まえ、潜在顧客の興味・関心に基づいて仮説セグメントを設定します。その後、実際のテスト配信データを分析し、セグメントを精緻化していきます。
データに基づきターゲットセグメントを精緻化
最後に、テストマーケティングの結果から得られたインサイトをもとに、アメリカの消費者がもつペイン(問題点)を特定し、そのペインを解消するための製品のベネフィットや価値提供の明確化、そして製品使用による体験価値を適切に表現できるクリエイティブの制作を行うことが、越境EC成功の秘訣です。
このように、Supershipでは越境ECを目指す企業様をデジタルマーケティングの実績と知見によりテストマーケティングのフェーズから伴走型でご支援しています。
ECのシステム連携/KDDI America, Inc.
これまでのお話から、アメリカ市場の消費者トレンド、市場調査の重要性と、テストマーケティングの手法として導入しやすい広告配信を活用したマーケティング手法をご紹介しました。
本パートでは、アメリカ市場に参入する日本企業にとって、重要なステップとなるECサイトの構築についてご紹介します。効率的なオペレーションとスケーラブルなビジネスを実現するには、適切なECシステム連携が不可欠です。
ECサイトは大きく分けてモール型と自社運営型があります。モール型(Amazon、eBayなど)は初期コストが低く、すぐに開始できます。自社運営型は自由度が高いですが、より多くのリソースが必要です。自社運営型には、Shopifyなどのクラウドプラットフォーム、パッケージソフトウェア、フルスクラッチ開発などの選択肢があります。
ECサイト(フロントエンド)と社内業務システム(バックエンド)の連携も重要な課題です。製品管理、在庫管理、顧客情報(CRM)などのシステムとECサイトを効率的に連携させる必要があります。初期段階では手動連携が一般的ですが、ビジネスの成長に伴い、自動連携ツールの導入が不可欠となります。
成功事例として、ある米国企業はShopifyの導入とUiPath(RPA)、Kitton(簡易連携ツール)の活用により、システム間の自動連携を実現し、業務効率の向上と人為的エラーの削減を達成しました。
ECシステム連携は、ビジネスの成長と効率化を支える重要な基盤です。適切なシステム連携は、オペレーションの効率化、顧客満足度の向上、迅速な意思決定につながり、最終的に競争力の強化に貢献します。
また、アメリカ市場進出において、法的考慮事項と税務は重要な課題です。個人向け越境ECの場合、主に日本の規制が適用されるため、比較的容易に開始できます。一方、小売店向け販売ではFDAやEPAなどの米国規制当局の基準をクリアする必要があります。
税務面では、越境ECによる販売は基本的に米国消費税の対象外となりますが、米国内に拠点を設ける場合は法人税や州税への対応が必要になります。特に州をまたぐ取引では、税務が複雑化するため専門家の助言が不可欠です。
製造物責任(PL)リスクへの対応も重要です。米国市場向けの専用PL保険加入が推奨され、大手小売店との取引では一定額以上の保険が要求されることもあります。
段階的なアプローチと現地の専門家との連携が、これらの課題に効果的に対処する鍵となります。適切な準備と戦略により、アメリカ市場の機会を最大限に活用することが可能です。
最後に
アメリカ市場への越境ECは、大きな可能性を秘めていると同時に、多くの課題も存在します。成功のためには、市場トレンドの理解、適切なECサイト構築とシステム連携、そして法的・税務的な準備が不可欠です。
Artis New York, Inc.、Supership株式会社、KDDI America, Inc.の3社は、それぞれの専門性を活かし、日本企業のアメリカ市場進出を総合的にサポートします。市場調査から販売戦略の立案、ECサイト構築、システム連携、法務・税務対応まで、包括的にご支援します。
アメリカへの越境ECでお困りの企業の皆様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
★セミナーの全編はこちらからご覧いただけます。(提供:KDDIアメリカ )
お問い合わせ
Artis New York(URL:https://artisny.com/)
日本企業の米国市場進出支援事業を手がけるArtis New York, Inc.では、20年以上の日本商品米国販売経験や900以上の小売店との取引実績をもとに、市場調査から販売代理・物流まで一貫したサポートを行っています。
お問い合わせ:info@artisny.com
KDDI America, Inc.(https://us.kddi.com/ja/)
KDDIアメリカは、ICTワンストップソリューションプロバイダとして、幅広いITソリューションの提供を行っています。近年はデジタルイノベーションの一環として企業のECサイト構築支援に注力しており、日本とアメリカをつなぐICTソリューションの提供支援を通じ、越境EC支援の知識とノウハウを積み重ねています。
お問い合わせ:https://us.kddi.com/ja/contact/contact-form/
Supershipへのお問い合わせ
Supershipは、KDDIのデジタルマーケティング領域を一手に担うハウスエージェンシーとして、大手通信事業者ならではの豊富なデータ活用知見を強みに、企業のマーケティング戦略の立案から施策実行までワンストップにご支援しています。