ITP1.X→2.0の影響規模はどのくらい?二次的影響は?いまさら聞けない「ITP2.0」解説 #Web広告研究会セミナーレポート
セミナーレポート

ITP1.X→2.0の影響規模はどのくらい?二次的影響は?いまさら聞けない「ITP2.0」解説 #Web広告研究会セミナーレポート

2018年9月25日(火)、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が主催する 2018年9月度 月例セミナー「ターゲティング広告の今後はどうなる?〜GDPRとITP2.0から考えるこれからのターゲティング広告〜」が開催されました。
本記事では、Supership デマンド事業部 プロダクトマーケティング室 室長 小嶋泰我(こじまたいが)によるITP02.0 を解説する講演の内容をレポートします。


Supership株式会社
マーケティング事業本部
小嶋 泰我

ITP1.X→ITP2.0へ

ITP2.0は、Safari 12.0以降に実装されているCookieを対象に作用するトラッキング防止機能です。以前のバージョン(ITP1.X)ではドメインをまたぐCookieは24時間保持されていましたが、ITP2.0では即時破棄されるようになったことで、iPhoneのSafariブラウザにおけるドメインをまたぐトラッキングができなくなる事象が起きています。
ITP機能を持つSafariブラウザでは、Apple独自のアルゴリズムでログイン情報などユーザビリティ向上のためのCookieをのぞいて、広告に使われるトラッキング用のCookieだけを判別し、即時破棄するようになっているのです。

ドメインをまたぐトラッキングとは?


ドメインをまたぐトラッキングとはどういったものか、簡単に整理します。

Cookie付与の流れ

①まず広告掲載ページで広告がクリックされると、広告配信元のサーバーに一瞬遷移します。このときにクリックタグで「広告をクリックした」というCookieを付与します。
②次にLPに遷移するとLPに設置されたリタゲタグからリターゲティング用のCookieが付与されます。
③この時点で、広告クリックCookieは「DSP-B.jp」、リターゲティング用Cookieは「ドメインC.jp」のものが付与されています

CV計測の場合

①で付与した「DSP-B.jp」の広告クリックCookieを使うのですが、CVページが「ドメインC.jp」配下であるため、ドメインをまたいだトラッキングとなってしまいます。

リターゲティング配信の場合

③で付与した「ドメインC.jp」のリターゲティング用Cookieを使うのですが、広告配信先は「ドメインA.jp」を初めとした無数のドメインが対象になるため、これもまたドメインをまたいだトラッキングとなってしまいます。
つまり、リターゲティング配信とコンバージョン計測、オーディエンスターゲティングの全てがドメインをまたぐトラッキングとなっており、ITP2.0以降ではこれら全てが不可能となっているのです。

ただし、コンバージョン計測に関しては広告LPに特別なタグを埋め込むことで計測が可能となる場合があります。(SupershipのScaleOut DSPではITPに対応したタグの埋め込みでコンバージョン計測が可能となっています)

とはいえ、リターゲティングとオーディエンスターゲティングは基本的には不可能となってしまいます。一部では、Cookieを復活させるゾンビCookieやスーパーCookie、パラサイトCookieなど、テクニカルな手法を使えばターゲティングできなくはないと言われていますが、Appleの意図に反したCookieの使い方になるため、対策としては難しい状況です。

ITPによる影響度はどのくらいか?

ITP1.0が実施されてから1年間で、iPhoneのSafariブラウザにおけるScaleOut DSPの広告配信数がどのくらい変化したのか調査したところ、約26%ほどの減少がみられました。
この26%の減少分はITP1.Xからブロックされることとなった24時間以降のトラッキング配信とオーディエンスターゲティング配信ができなくなった分の影響度と考えられます。
ITP2.0以降、24時間以内のトラッキングまで全てブロックされることとなるため、さらに大きな影響が出てくることが予想されます。

ITP 2.0がもたらす二次的な影響

コンバージョン計測ができない、ターゲティング広告ができないなどの問題を一時的影響と捉えた時、これによる業界全体への二次的な影響としてどのようなものが起こりうるのかを予想してみたところ、以下の6つがあげられます。

・アプリ面への出稿増加
・純広告・PMPへの予算シフト
・コンテキストマッチの再興
・プレミアムメディアのCPM上昇(ホワイトメディアへの出稿増加)
・GoogleやFacebookなど、メガプラットフォームのさらなる巨大化(自社ドメイン内で会員IDやメールアドレスでユーザーを識別可能/大量のユーザーにリーチできる)
・Web広告の評価モデルの再設計(事業拡大のためのKPI設計の見直し)

まず1つめにアプリ面の出稿が増えるのではないかと思います。
アプリであれば、CookieでなくIDFA(端末ID)によるターゲティングができるので、iPhoneのSafariではリーチできなくなるターゲットへのリーチを引き続き確保することができます。
2つめに、ターゲティングができなくなる分、純広告やPMP(ホワイトリスト)配信へ予算が寄せられる可能性も考えられます。
同時に、3つめとしてそうした面にマッチするようなクリエイティブを見直すコンテキストマッチが改めて重要視されるのではないかと思います。
これに連動して、4つめにプレミアムメディアのCPM(インプレッションあたりの単価)も上昇していくのではないかと思います。良質なターゲットリーチが確保できる良いメディアに出稿が増加することにより、入札競合が発生してCPMがあがるという仕組みです。

5つめに、GoogleやFacebook、Twitterなどのメガプラットフォームがさらに巨大化する可能性もあります。これまでは1stパーティーデータをプライベートDMPに格納し、プライベートDMPを通してさまざまな広告配信プラットフォームからターゲティング配信を行うことができましたが、今後はiPhoneのSafariブラウザではできなくなってしまいます。しかし、GoogleやFacebook、Twitterなどのメガプラットフォーム内であれば、クライアントが持っている1stパーティーデータをつかうことで、ターゲットにリーチすることができるからです。
ただし、既存顧客のリーチはできるものの、新規顧客へのリーチはできなくなってしまう点で大きな課題もあり、正直、iOSについては“次の技術”を待つしかないというのが正直なところです。

最後の6つめは、特にリターゲティング配信のKPIとしてラストクリックに依存したコンバージョン設計をしていた広告主がKPIの見直しを迫られるという影響です。
これまで同様のKPI設計で出稿した場合、iPhoneのSafariブラウザでラストクリックが取れなくなる分、CPAが高騰し、結果的に出稿量をどんどん絞っていくことでサービス自体がシュリンクしてしまう・・・という危険が考えられます。
今後は何人の新規ユーザーにリーチできたか、コンテンツにマッチしたメディアでどのくらいリーチできたか、サイトにどのくらい誘導できたか、滞在時間はどのくらいだったか、など、CPAに依存しないアトリビューション評価によるKPIの再設計が必要となります。

ただし、こうしたアトリビューション評価への重要度が高まるなか、大きな課題も存在します。
現代では、1人あたり複数のデバイスを保有していることが増えており、2020年には、1人あたりが所有するネット接続デバイスは6台を超えるとも予測されています。

こうした状況において、人にフォーカスした正しいアトリビューション解析をするためにはデバイスごとのIDに基づいたターゲティングや分析ではなく、IDを集約した「OneID」の概念なども鍵になるかもしれません。

以上、ITP2.0とこれによって起こりうる影響などについて解説させていただきました。
ご静聴ありがとうございました。

GDPRに関する講演レポートはこちら

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