2024年4月1日より、Supership株式会社は親会社であるSupershipホールディングス株式会社に吸収合併されました。
合併に伴い、存続会社であるSupershipホールディングスは社名をSupershipに変更し、新たな経営体制を発足しました。本件に関する詳細は、プレスリリースをご確認ください。

【レポート】クッキーレス、フェイクニュース、リスク対策、広告健全化…アドテクノロジー企業が考えるこれからのインターネット広告
セミナーレポート

【レポート】クッキーレス、フェイクニュース、リスク対策、広告健全化…アドテクノロジー企業が考えるこれからのインターネット広告

本ウェビナーの目的

インターネット自体のトレンドが変化するなか、インターネット広告を含めたデジタルマーケティングの潮流はどう変わっていくのでしょうか。広告主および広告代理店は、既存のマーケティング手法で良いのでしょうか?
本セミナーを通じて、このような問題についてある程度見通しを提示できればと考えております。

プロフィール

谷本 秀吉(SMN株式会社・ネクスジェンデジタル株式会社)

谷本 秀吉(SMN株式会社・ネクスジェンデジタル株式会社)
アドテクノロジー事業執行役員(SMN株式会社)・代表取締役社長(ネクスジェンデジタル株式会社)

1998年、総合広告会社にてマスメディアとインターネット広告のメディアプランニングに従事した後、2002年インターネット広告専業のGMO NIKKO(旧 日広)に移り、GMOインターネットグループ在籍時は、GMOアドパートナーズ(JASDAQ上場)取締役や、GMO NIKKO常務取締役など、グループの広告セグメント領域の複数社の役員を歴任。2017年、ソニーグループであり東証一部上場会社のSMN(旧 ソネット・メディア・ネットワークス)に入社し、アドテクノロジー事業の執行役員に就任(現任)。2019年より、SMN子会社のデジタル戦略エージェンシー ネクス ジェンデジタルを設立し、代表取締役に就任。

柳谷 俊輔(Momentum株式会社)

柳谷 俊輔(Momentum株式会社)
チーフエバンジェリスト

楽天株式会社でキャリアをスタートし、エンジニアからアナリストへの異動を経て開発視点での社内コンサルティングに従事。2012年にcomScore Japan株式会社に入社。ワールドワイドなデータ提供プレイヤーという立ち位置からB2Bビジネスを内資、外資問わず担当するとともに、アドベリフィケーションの日本国内での啓蒙活動に従事。 2018年4月より現職。

アドベリフィケーションの歴史

柳谷:今回、アドベリフィケーションの歴史を振り返るにあたり、時系列で取りまとめた年表を準備しました。2016年2月にロシアのハッカー集団による200億円規模のアドフラウドの被害が発生し、大きな話題になりました。

谷本:また、2017年1月にP&Gの最高ブランド責任者が「広告の透明性を強く求める」とメッセージを発したことが、YouTubeやSNSで拡散されて話題を呼びました。この件を起点に、業界全体、特に広告主の意識が大分高まった印象を持っています。

柳谷:確かにそうですね。この翌年(2018年)には、海賊版サイト「漫画村」問題について日本のテレビ番組で特集されました。

谷本:この問題もアドテクノロジー業界に大きなインパクトを与えましたね。この件を受け、アドテクノロジーの懐疑的な部分や不透明な部分をクリアにしたいというニーズが非常に高まったことによって、「広告」を慎重に考えた方がいいのではないか、という声が上がりました。我々のように漫画村問題が起きる数年前からアドベリフィケーションに取り組んでいた立場からすると、アドテクノロジーがネガティブでマイナスな評価をされたことで煽りを受ける形となりました。

柳谷:その漫画村問題のあと、2021年3月には一般社団法人デジタル広告品質認証機構(JIQDAQ)が設立されましたが、このあたりの影響はいかがでしょうか。

谷本:非常に大きいです。当然SMNも加盟させていただきましたし、子会社も現在加盟の準備をしている状況です。こういった機関が出来ることによってより厳格に、良いものは良いと推奨いただき、逆に駄目なものはきちんと排除していく動きが促進されていくことを期待しています。

柳谷:従来はアドベリフィケーションに関する第三者機関は海外機関のものが主でしたが、日本でもこういった取り組みがなされるようになったのは、デジタル広告の普及を後押しする大きな意味を持っています。

現在のインターネット広告の潮流について

柳谷:谷本さんはアドベリフィケーションの現状について、どのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

谷本:海外と日本国内を比較すると、日本の方がアドベリフィケーションに対する意識が低いと数年前までは思っていました。しかし、先ほどの話にも上がったような問題がメディアで取り上げられたことによって、特に広告主の意識の変化や、取り組みの改革が見られました。そのような背景もあり、JIQDAQ設立の動きなど、グローバルで見ても意識の高さは遜色ないと感じます。

柳谷:谷本さんの仰る通りで、我々Momentumが行った広告に関する調査の結果をご覧ください。アドバタイザー(広告主)、エージェンシー、プラットフォーマーの回答結果を分析したものですが、1つ目の質問「アドベリフィケーションの対策を行っていますか?」に対し、特にエージェンシーの対策実施率が1年前と比較して、大きくポイントアップしています。

谷本:先ほど「アドベリフィケーションに対する意識が高まっている」と言いましたが、「実際に対策を講じていること」とは意味合いが異なります。実際に対策をしている割合はまだ低い印象ですが、いかがでしょうか。

柳谷:そうですね。この調査には非上場企業の回答も含まれているので、一概に対策が進んでいないとは言い切れません。中小企業にもアドベリフィケーションの重要性を浸透させていくことが、今後の課題と捉えています。

アドベリフィケーションの取り組みにかかるコストは誰が負担するべきか

谷本:アドベリフィケーションの対策コストについては、いかがでしょうか。

柳谷:「アドベリフィケーションに取り組む際、そのコストは誰が負担すべきと思いますか」という質問に対して、アドバタイザー(広告主)とエージェンシーは「アドバタイザー(広告主)自身が負担をすべき」という回答が一番多い結果となりました。一方で異なる結果となったのが、プラットフォーマーの回答です。「基本的にはエージェンシーが費用負担すべき」と回答されており、温度感に差があることがわかりました。

谷本:これは興味深い結果ですね。現在もこのコスト負担の問題は解消しておらず、各社でスタンスが異なります。広告主負担ならば広告主が管理・運用していくものだと思うのですが、それをエージェンシーやプラットフォーマーに委託する場合もあります。アドベリフィケーションの対策が必要だ、ということは各々共通認識を持っているものの、対策とコストは切っても切り離せないので難しい課題ですね。

柳谷:このような状態で「誰がコストを負担すべきなのかわからないから、アドベリフィケーションの対策をしない」という方向にならないようにしなければなりません。

谷本:そうですね。アドベリフィケーションの対策をしているのとしていないのとでは、前者の方が広告運用のパフォーマンスは上がります。不正を防止し、本来広告を掲載すべきでない場所に掲載されないよう除外していくと、そのコストを上回るパフォーマンスを発揮出来るので、「対策をしない」という選択肢はありません。

クッキーレス時代の広告はどうなるのか

柳谷:「クッキーレス時代の広告」について、非常に話題になっていますが、今後「人」へのターゲティングが難しくなるなか、どのような点に注意すれば良いでしょうか。

谷本:当社にも「ポストクッキーや、IDFAを題材とした勉強会を実施して欲しい」といったお客様のご要望を非常に多くいただいています。Googleは、Google Privacy Sandboxの採用を1年以上延期することを発表したので、ポストクッキーの準備期間はそれだけ長くなりました。ただ、いずれにせよGoogle Privacy Sandboxの対策は講じなければなりません。
その対策として「共有IDソリューション」と呼ばれるIDを採用し、3rdパーティクッキーを使わない世界観で広告配信をするアプローチと、コンテンツマッチいわゆるメディア記事の文脈を読み込んだ広告配信や、3rdパーティクッキーに依存しないIDの活用を有効にしていくといったものがあります。
現段階で「どれがいい」という明確な答えはないですが、SMNとして考えられる手立てはすべて取り組んでいるので、その中で良い活路を見い出すことが出来ればと思っています。

柳谷:どの手段が一番有効かわからない中でも、これらの選択肢を持って対策していくということは、広告主も安心して利用できるポイントですね。

フェイクニュースの対策の現状とこれから

谷本:現場で広告主や広告代理店の方々とお話している中で、アドフラウド(広告不正)の解消の難しさを日々痛感します。
その中の話題の一つは、フェイクニュースです。「ニュースをフェイクか否か」を判断することがすごく難しく、判断基準が曖昧になりがちです。曖昧な判断によって、フェイクニュースが掲載されてしまうことも少なくありません。そこで収益を生み出すために、作為的に大量のフェイクニュースを制作し、広告枠も増加させる手口があります。このような状況もあり「フェイクニュースの対策をとにかく徹底して欲しい」というニーズは高まっています。対応が一筋縄ではいかないという事実を理解する一方で、対策をどうするべきなのか伺いたいです。

柳谷:谷本さんがおっしゃったように、フェイクニュースを「フェイク」と断定することが非常に難しい点があります。フェイクニュースの研究は、海外同様日本でも取り組まれています。「どういった事象でフェイクニュースが発生してしまうのか」「どのような人がフェイクニュースを発信する傾向があるのか」等、どちらかというと学術的な部分での調査・研究が進んでいます。
一方でそういった研究データをもとに、フェイクニュースが出ないサービスや仕組みを構築するための産業への落とし込みがまだ出来ていないことが足元の課題です。当社はニュースのファクトチェックを行うNPO団体「FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)」と連携し、課題解決に取り組んでいます。
しかしながら、FIJで判定できるフェイクニュースの数は、1カ月に10件程度年間で約120件の記事しか精査が出来ないのが現状です。

谷本:少ないという印象はありますが、それだけ精査することが大変ということですよね。

柳谷:そうなんです。
今後、当社としてもフェイクニュースと疑わしいニュ-スに関しては、リスト化して運用の際に除外するソリューションを提供したいと考えております。

広告運用は、大手のアドプラットフォームだけでいいのか

谷本:ウォールドガーデン(Google、FaceBookとAmazonといった自社のプラットフォーム/エコシステム内にユーザーを出来るだけ留めさせて、ユーザーデータや情報を保持する組織や企業)の方を、業界では「マストバイメニュー」としてラインアップされるケースは多いです。
「オープンインターネット=オープンなところは危ないのではないか、むしろウォールドガーデンの方が安心・安全だ」と誤解が生じているのではと懸念しているところがあります。

柳谷:アドベリフィケーションベンダーの視点で言わせていただくと、ウォールドガーデンの中でもソーシャルな部分においては、特に「透明性」を如何に担保するのかが非常に重要視されています。我々のような第三者ベンダーがそれを計測出来なかったり、各社がブランドセーフティなどの視点で色々な計測をしているのですが、その結果を最終的にオープンにしていないという現状があります。そのような中で、透明性という点において手放しでOKとは言えない状況だと思います。

谷本:ウォールドガーデンとオープンインターネットで、ユーザーがオンラインで過ごす時間はどれくらいなのか、という調査結果があります。オープンインターネットの割合が66%、ウォールドガーデンが34%でした。一方、市場の広告費の構成比は、ウォールドガーデンの方が60%と多い結果となっています。これらの結果からも分かる通り、ユーザーの時間の過ごし方によって、適正な見直しを図ることを我々も訴求していく必要があります。

柳谷:仰る通りですね。ウォールドガーデンのプラットフォームとしての有効性を疑うわけでは決してありませんが、シンプルにユーザーの接触時間と広告費が比例していない状況は、正直なところ違和感があります。こういった状況を是正することで、広告パフォーマンスが改善される可能性は十分にあるかと思います。
本日はありがとうございました。



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SupershipグループのMomentumは、日本語に特化した言語解析技術と独自データを活用したアドフラウド検知技術を基盤に、日本のデジタル広告業界の健全化への取り組みを牽引するアドベリフィケーションソリューションカンパニーです。アドプラットフォーム・広告主・広告代理店など、様々な企業のニーズにあわせた「HYTRA」ブランドのサービスを提供しています。

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