広告主のためのアドベリフィケーション入門(第4回) 〜「アドベリ最新事情」ネット広告に潜むリスクを調査…新たなアプローチは?〜
アドベリフィケーション専業ベンダーとして代理店や広告主等に向け様々なソリューションを提供している、Supershipのグループ会社 MomentumにてHead of Partnershipsを務める柳谷 俊輔が、広告主にとってのアドベリフィケーションの必要性について解説する連載「広告主のためのアドベリフィケーション入門」。
これまでの記事では、アドベリフィケーションで検証する項目やアドフラウドのリスク、アドベリフィケーションで広告の費用対効果を向上させるためのステップ、そして大手企業の先進的な取り組みについてお伝えしてきました。
最終回となる本記事では、Momentumが行った、ネット広告におけるブランド毀損やアドフラウドのリスクの調査の結果、そしてアドべリ対策の新たなアプローチやその今後について解説いたします。
※この記事は、「Web担当者Forum」に寄稿させていただいた記事(連載第4回・第5回)を再構成したものです。
ネット広告に潜むブランド毀損&アドフラウドのリスクの現状は?
今回モメンタムでは、単独では初めて、国内におけるリスク調査を実施しました。
この調査は、当社のアドベリフィケーション対策ソリューション「HYTRA(ハイトラ)」を導入している広告配信プラットフォーム(サプライサイド)各社の、プログラマティック広告取引をブランドセーフティとアドフラウドの観点から計測し、考察をまとめたものです。
なお、計測の対象については、広告在庫のカテゴリや属性に偏りをもつプラットフォームは除外し、代表的なプラットフォームを選出しています。
「著作権侵害コンテンツ」の割合は全体の0.4%。しかし入念な対策が必要
モメンタムでは、5つのメディアカテゴリを「ブランドリスクの高いカテゴリ」として定義しています。今回の調査の結果、5つのカテゴリのブランドリスクは、全広告在庫のうち、合わせて36.9%となりました。つまり、広告在庫の約3分の1は、何かしらのブランドリスクが疑われていることとなります。
●ブランドリスクの高いカテゴリ ポイントサイト・・・アフィリエイトなど、成果報酬型広告を掲載しているサイト 匿名掲示板・・・5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)、5chまとめなど、個人が匿名で書き込めるサイト R指定コンテンツ・・・ポルノなどアダルトコンテンツが掲載されているサイト ネガティブコンテンツ・・・事件・事故、犯罪など、広告を閲覧する人の購買意欲が削がれてしまうサイト・記事 著作権侵害コンテンツ・・・映画・漫画など著作権の所在が明確なものが無許可で掲載されている違法なサイト |
これらのカテゴリは、メディアやサイトそのものが不適切である場合はもちろん、適正なメディアであっても、その広告には適さない配信面(ページや場所)が存在することもあり(例:大手新聞社のサイトにおいて、飲酒運転による事故を伝える記事に自動車会社の広告が表示される)、細やかな対策が求められます。
5つのカテゴリのうち、最も数値が高いのは全体の13.7%を占める「ポイントサイト」です。これらのサイトは、ブランドリスクという観点にとどまらず、アドフラウドの温床になっているという側面もあり、注意が必要です。
一方、最も低いのは「著作権侵害コンテンツ」で、全体の0.4%にとどまりました。これは、海賊版サイト「漫画村」が大きな社会問題となったことが影響しているとみられます。ただ、これらのサイトに広告が表示されてしまった際のブランドリスクは非常に高いため、対策を怠ってはいけません。
どのプラットフォームにもリスクは存在する
続いて、SSPやアドネットワークといったプラットフォームごとに、ブランド毀損やアドフラウドのリスクを見ていきます。
まず、ブランドリスクについて見ると、アドネットワークはいずれも50%を超えていて、「国内SSP」「外資系SSP」と比較すると最もリスクが高いグループであるといえます。
SSPでは、国内においては匿名掲示板やR指定コンテンツの在庫が多く、外資系のものでは、特定のSSPにポイントサイトの在庫が多い傾向がありました。
また外資系SSPは、ポイントサイト以外のカテゴリのブランドリスクは、アドネットワークや国内SSPに比べると相対的に低くなっている傾向がみられます。
アドフラウドリスクについては、最も高いものは19.2%、反対にもっとも低いものは8.6%と、2.2倍あまりの大きな差がありました。
これらの調査結果からは、大小の差はあるものの、どのSSPやアドネットワークから広告在庫を買い付けたとしてもリスクは存在するため、何かしらのアドベリフィケーション対策はしなければならない、ということが読み取れるのではないでしょうか。
※なお、今回ご紹介している内容はあくまでも一部となります。調査結果の詳細についてはホワイトペーパーをご参照ください。
「日本のデジタル広告リスク」
Post-Bid対応、Pre-Bid対応に続く第3のアプローチ
「アドベリベンダーによるブラックリスト」
ブランド毀損やアドフラウドのリスクを避けられない状況にある中、広告主や広告代理店はどのような対策を進めていけば良いのでしょうか。
モメンタムの「HYTRA」は、広告主、広告代理店、そしてアドプラットフォーム、それぞれのニーズに合わせたアドベリフィケーション対策ソリューションです。
HYTRAでは、「Pre-Bid対応」「Post-Bid対応」「ブラックリスト」の3つのアプローチでアドベリフィケーションに取り組んでいます。
1つ目の「Pre-Bid対応」は、広告入札(=Bid)をする前(=Pre)に、SSPからの広告配信リクエストがあったタイミングでブランド毀損やアドフラウドのリスクの有無を判断し、リスクがあった場合に入札自体を止めるものです。入札そのものを回避するため、無駄な広告費が発生しない点や、各アドベリフィケーションベンダーと連携しているDSPであれば、広告配信時にDSP側のインターフェース上で選択するだけで利用が可能な点など、費用や工数の面でメリットがあります。
2つ目の「Post-Bid対応」は、入札した後(=Post)に代替の広告に差し替えることで、公序良俗に反する面への広告の表示をブロックするものです。
当連載の第2回でもお伝えしたこの2つのアプローチはアドベリフィケーションにおいて一般的で、一定の効果もある一方、「Pre-Bid対応」は一部の大手アドネットワークで利用できなかったり、「Post-Bid対応」はすでに広告が配信されている(表示はされていない)ことから広告入札の費用は負担する必要があるなど、利便性やコストの面でデメリットがあります。
また、広告主や代理店側で行うアドベリフィケーション施策のひとつとして、不適切な配信面のブラックリストを作成し、利用しているDSPやアドネットワークに適用させる方法がありますが、ネット上に次々と生まれる不正なサイトや公序良俗に反する記事を網羅しリストを都度更新する必要があるため、運用に工数がかかってしまいます。
こうした中、新たなアプローチとして注目が集まっているのが「アドベリフィケーションベンダーによるブラックリスト」です。
アドベリフィケーションベンダーでは、さまざまな広告配信プラットフォームと常時接続をしており、その結果として、多数のアドフラウド・ブランド毀損リスクのあるドメインや記事等の情報をリアルタイムに収集しているため、常に最新のブラックリストを生成し続けることが可能です。
アドベリフィケーションベンダーによるブラックリストを活用することで、広告主や代理店は、自分たちでブラックリストを作成するよりもより高精度で更新頻度の高いものを適用することができます。
導入手順も非常にシンプルで、各種アドネットワークやDSPの基本機能として提供されているブラックリストの設定画面に最新のリストを反映するだけで対策が可能です。
Pre-Bid対応のように連携済みのプラットフォームでしか利用できないという制限もなく、Post-Bid対応のように無駄な広告費は発生しないため、運用にかかるコストもこの2つと比べると安価になるケースも多いと思われます。
この「アドベリフィケーションベンダーによるブラックリスト」は、モメンタムで「HYTRA DASHBOARD」としてご提供しています。
「HYTRA DASHBOARD」では、ブランド毀損やアドフラウドのリスクが頻出されるドメインのリストをリアルタイムで更新し、ダッシュボード形式で広告代理店へ共有しています。
国内最多のアドプラットフォームとの連携により、月間約1億URLもの膨大なサイトを収集。日本語解析技術をベースに、まとめサイトなど日本特有のカテゴリを網羅したフィルタによる機械判定に加え、オペレーターによるダブルチェックを行った高精度で豊富なリストが特徴です。
なおモメンタムでは2019年1月より、「HYTRA DASHBOARD」を活用いただいている広告代理店をアドベリフィケーションの取り組みに積極的な代理店として認定するプログラム「Agency Certification Program(ACP)」を開始しました。
このプログラムは、広告主がパートナー代理店を選定する際の指標のひとつとしていただくことが目的で、すでにADK、オリコム、Supership、電通グループ、博報堂DYメディアパートナーズ、ハートラス、トランスコスモスといった国内大手の主要な広告代理店が認定を受けています。
アドベリフィケーションに対する意識は広告代理店各社で高まっており、今後も代理店が主導となってアドフラウドの排除やブランドセーフティ対策を行うケースは増えていくとみられます。
ブランド毀損やアドフラウドのリスクは日々増え続けていますが、対策において最も重要なのは「対策のための施策を早く導入する」ことです。取り組みが早ければ早いほど、リスクの低減や費用対効果の向上が期待できます。
電通が発表した「2018年 日本の広告費」によると、昨年のインターネット広告費は1兆7,589億円(前年比116.5%)で、地上波テレビの広告費(1兆7,848億円/前年比98.2%)に肉薄しており、今年中に追い抜くと伝えるメディアもあります。一方で、ねつ造広告や広告詐欺など、インターネット広告をめぐるネガティブな報道も後を絶ちません。
デジタル広告業界の健全化を進め、『無価値な広告をゼロにする』ため、モメンタムでは今後もさまざまなニーズに合わせたソリューションを提供してまいります。
アドベリフィケーション対策を進めたいと少しでも思われた方はまずはお気軽にお問い合わせください!