独自データを活用した高精度なターゲティング配信や媒体開示型の詳細なレポーティング機能によって、より効果的・効率的な広告運用を多様な広告フォーマットで可能にする広告主向け配信プラットフォーム「ScaleOut DSP」
今回は、2019年8月6日に発表したIntegral Ad Science Japan社(インテグラルアドサイエンス ジャパン 以下、IAS)のアドベリフィケーションソリューションとの接続を記念し、Supershipグループでアドベリフィケーション事業を展開するMomemtum社(以下、モメンタム)、Supershipでの3社対談が実現。
これまでのアドベリフィケーションの潮流や2020年から今後の予測まで、余すことなく語っていださきました!
※本対談は2020年1月に取材を行ったものです。本原稿の内容や所属は取材時のものを記載しております。
<参加者>
・Integral Ad Science Japan株式会社 エヴァンジェリスト 山口 武 様
・Momemtum株式会社 Head of Business, Sales, Partnership 柳谷 俊輔
・Supership株式会社 アドテクノロジーセンター シニアプラットフォームエキスパート 赤津 安昭
(以下文中敬称略)
ー今回はプログラマティック広告、なかでもアドベリフィケーションの分野に深く携わるプロフェッショナルの皆さんにお集まりいただきました。
まずは、それぞれご経歴と会社のご紹介からお願いします。
山口:IASの山口です。2008年にNYにあるExperian Marketing Solutions, Incに所属し、帰国のタイミングでコムスコアジャパン株式会社に入社しました。実はそのころに柳谷さんと一緒にお仕事していまして・・。
2015年にIASの日本オフィスの立ち上げメンバーとしてジョインし、営業面での企画から実行までを担う傍ら、エヴァンジェリストとしてアドベリフィケーションの啓蒙活動を行っています。
IASは、アドベリフィケーション企業の中では国内外でも最大級の規模で、グローバルでみると13カ国22都市にオフィスを構えています。
弊社では「サイエンスアドスケール」というスローガンを掲げており、「サイエンス」とは技術力を示していて、昨年末のADmantX社の買収をはじめ、テクノロジーに対するヒューマンリソースの投資は業界内でもトップクラスだと自負しています。例えば、今回、SupershipのScaleOutと接続させていただいているPrebid方式※1の技術は、弊社が業界で初めて提供を開始したものです。
一方「スケール」の部分では、ディスプレイ・ソーシャル・動画・モバイルなどの計測インプレッション数を合わせると1日に100億インプレッション、1分間に700万インプレッションを計測しており、かなりの網羅率です。
弊社では広告主のアドベリフィケーションへの投資に対して、マイナスを排除してゼロに戻すだけでなく、広告効果を押し上げてプラスにしていく意味を持っていただけるようなサービス提供を行っています。
柳谷:モメンタムの柳谷と申します。私自身のキャリアのスタートは楽天株式会社でのエンジニアリングで、その後、山口さんと一緒のコムスコアジャパン株式会社にてインターネット視聴率、アドベリフィケーション領域を担当しました。その経験を生かして、現在ではアドベリフィケーション専業ベンダーであるモメンタムに所属し、営業周りを中心にお客様との向き合いを統括しています。
モメンタムは国内では初の創設となったアドベリフィケーション専業企業です。国内ベンダーならではの日本語の解析能力に強みを持っていて、これに関しては東京工業大学との共同研究によるテキスト解析技術によって、独自のフィルタリング機能も開発しており、人力では管理が難しい広告領域においてお客様ごとにカスタマイズした安心・安全な広告配信をサポートしています。
赤津:Superhipの赤津と申します。Supershipには2018年の10月にジョインしまして、それまではジョルダン株式会社で媒体社(パブリッシャー)という立場におり、ウェブ、アプリ、PC、SPの領域全般を担当していました。また、広告主として、出稿担当もしておりました。現在は、ScaleOut DSPの機能開発や接続周りやSSPのAd Generationと連携して、Supershipのアドプラットフォームがグロースするように、企画や営業面とテック面のパイプラインの役割を担っています。
Supershipではデータの正確性と精度に優位性を持っていて、弊社で提供しているアドプラットフォームはターゲティングしたユーザーにしっかりとリーチできる点が強みです。キャンペーンごとにターゲットリーチ率を出すことも多々ありますが、いずれも高い評価をいただいています。
最近では、ブランド広告主向けに動画による広告配信にも力を入れており、ブランド価値の向上をしっかりと意識してアドベリフィケーションも取り入れた戦略をご提案しています。
※1・・・Prebid方式(入札前判定):インプレッション時にURLやIPアドレスを判定するのではなく、BidRequestの段階でアドフラウドやブランドセーフティにおける判定を行う方式。
2019年のアドベリフィケーションを振り返る
ー2019年はJAAからステートメントとして「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言」が出されるなど、アドベリフィケーションにおけるターニングポイントともいえる年になったかと思います。それぞれの立場からこの一年とこれまでをどう振り返りますか?
山口:2017年12月ごろから経済誌や一般紙でも「ネット広告の闇」といった特集が取り上げられるようになりました。このころから、徐々にアドフラウドへの関心は高まってきたと思います。
2019年には、そういったマイナスの捉え方から徐々にプラスの方向へ流れが変わっていったとポジティブに捉えています。例えば、グローバルではアドベリフィケーションツールを導入していく中で、アトリビューションを見ながらPDCAサイクルを回していくというワンステップ進んだ活用もしており、日本でも先進的な広告主の間ではそういった意識が高まっているように感じます。
柳谷:基本的には山口さんと同意見で、マイナスばかりではなくプラスに転じている部分もあると感じています。
前述の公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会(JAA)が2019年11月に発表したアドバタイザー宣言は2018年のWFAのグローバルチャート※が元になっているのですが、国内の業界団体であるJAAが発表したのは業界にとっては大きな動きだと考えています。
しかも、このアドバタイザー宣言には広告主の倫理観が記載されています。
プラットフォーム側がアドフラウド、ブランドセーフティ、ビューアビリティに関して対応していくのはもちろんのこととして、これに加えて、広告主としてもきちんとアクションをしていくことが宣言として盛り込まれた点は非常に前向きな流れではないでしょうか。
「デジタル広告の課題に対する アドバタイザー宣言」/JAA
「Global Media Charter」全文/JAA
赤津:現場ではすでに感じていた部分が、やっとメディアを通じて世の中に出てきたという印象です。昨年テレビの報道番組で放映された「ネット広告の闇」特集では、どちらかというと広告主側がアドフラウドなどの被害を受けているという部分が議論されていました。
しかし、被害という点ではパブリッシャー側でも同じで、現場では、2016年頃から業界を取り巻くプレイヤーそれぞれが形は違えどもアドフラウドによる被害を受けていると感じていて、それぞれが対策をとっていかなくてはいけないというのが当事者としての実感でした。
しかし、報道によって大きく取り上げられたことにはメリットもあり、これまで狭い世界で起こっていたことが広く世の中に伝わり、アドフラウド対策への投資をしっかりと考えるきっかけになったと思います。
IASのグローバル調査から見る、広告配信によるブランドへの影響
山口:2019年7月にニューヨークにあるIAS本社では、コンテンツ環境が広告視聴におよぼす影響を調査した「ハロー効果調査レポート」を発表しました。本調査では、同じ広告でもブランド毀損にあたる広告面で閲覧した場合とブランド毀損がない広告面で閲覧した場合、閲覧者に与える影響がどのように違うのかを脳波の変化によって調査したものです。結果としては、好感度やエンゲージメント、記憶の残りやすさなど、ブランド毀損のないサイトのほうが閲覧者にポジティブな印象を与えることが数値として表れました。
その後、本調査の展開として、世界8カ国で意識調査を実施、そのなかで日本国内でも大きな反響があったのが、34%の消費者が「低品質なコンテンツ環境に出ている広告を見ると広告主への好感度が下がる」とした点です。個人的にも驚いたのは、さらに、65%のユーザーは「そのブランドの商品の使用を取りやめる」という結果が出たことです。
調査結果からは、広告配信におけるKPIを設定する際に「数多く安く」とした場合、ブランドの評価や好感度にネガティブな影響を与える可能性もあるため、正しい費用対効果を考えた場合にブランドセーフティは重要な指標になるということがわかりました。
「脳科学から見るブランド認知~広告閲覧環境におけるハロー効果とブランド好感度への影響に関する調査レポート~」/IAS
「波紋効果~コンテンツの品質が消費者の広告認知に与える影響に関する調査レポート」/IAS
ーこの調査における日本での突出した傾向はありましたか?
山口:「低品質なコンテンツ環境に出てしまった広告は誰の責任か」という調査項目では、日本の場合は66%が広告主に責任があるという回答をしていました。日本の数値が突出している訳ではありませんが、国内の広告主にとっては驚きのある数字ではないでしょうか。
また、日本の傾向がよく分かるのは、我々が年2回出しているメディアクオリティレポートのベンチマークです。2018年上半期と2019年上半期を比較すると、デスクトップのディスプレイ広告において、アドフラウド率が1.6%から2.6%と調査国の中で上昇率が最も高い結果でした。さらに、世界で見てもダントツに低いのはビューアビリティの数値で、唯一、下降傾向になっている国なので、今後対策すべき課題だということがわかります。
「メディアクオリティレポート2019年上半期」/IAS
柳谷:弊社が国内を対象に行っている同様の調査でいうと、2018年と2019年では数値に大きな変化は見られませんでしたが、あえて言うと、ブランドセーフティが下がっている傾向となっています。
「日本のデジタル広告リスク」/モメンタム
赤津:今までは、「ビューアビリティの高い面に広告配信しよう」「ブランド毀損に相当するサイトには配信しないようにしよう」という流れはあっても、その根拠は明確になっていなかったと思います。今回のIASの調査で数値として可視化されたことによって、広告主の意識もより高まってくるのかなと思っています。
ー広告主もこういった数値があればアドベリフィケーションを推進しやすくなると?
赤津:具体的な数字があれば、いくら損するのか、あるいは売り上げ相乗効果はこれくらい出るというシミュレーションがしやすくなるので、マーケティング担当者が経営層へアドベリフィケーションへの予算投下を掛け合ったり、あるいは代理店が広告主への対策導入への説得材料として活用したりと、一定の効果はあるのではないでしょうか。
柳谷:そうですね。弊社のクライアントである大手総合ITベンダーのキャンペーンでも、ブランドリスクのある面とそうでない面への配信を比較すると、結果としてCPAには数十パーセントの差がありました。そういった数値の根拠があると、ブランドセーフティに対しての考え方をクライアントにきちんと理解していただくことができると感じています。
ー今後、あらゆる顧客接点がデジタル化することでデジタル広告のあり方も変わってきます。そんな「ネクストスクリーン」の時代へと転換したときに、アドベリフィケーションも変わっていくのでしょうか。
山口:もちろん変わってくると思います。デジタルとはいえ本質的には広告なので、世間的にはテレビと同じ感覚で、規制や尺、フォーマットが一定なCMと同様に安心・安全なブランディングを消費者に届けられる場所という安心感があるのでしょう。だからこそ、アドベリフィケーションへの対応が浸透するのに時間がかかっている訳ですが、反面、デジタルにも同じ質を求めているからこそ、今後はアドベリフィケーションがもっと重要になってくるのではないでしょうか。
ー顧客とのあらゆる接点がマーケティング媒体になったときに、プラットフォーマーとしてはアドベリフィケーションへの対応は可能なのでしょうか。
赤津:ネクストスクリーンの市場自体がまだまだこれから形成されるものではありますが、コンテンツ量が増えて市場が確立されたときには「対応しないといけない」ということになると思います。
山口さんのデジタルにも広告の本質が求められるというお話を伺いながら、これからの市場ではネガティブ・ポジティブどちらも対応すべき領域や手法が変わるのではないかと感じています。
ネガティブな面では、例えば、今現在のドメインスプーフィングのような「なりすまし」による問題。今後も必ず同じような問題は、形を変えながらも起こりうるので、プラットフォーム側も予測をしながら対策していく必要があります。
ポジティブな面でいうと、今のディスプレイ広告だけでない面にも広告価値が出てくるので、メジャーメントに対する意識の変化は顕著ではないかと思います。例えば、5Gやネクストスクリーンでは「見た・接触した」というようなセンシング(感覚)に対して計測を行うことも出来そうです。従って、広告効果や購買行動とどうつながっているのかが、さらに明確になる可能性は多分にあり、これは非常にポジティブな変化になるのではないでしょうか。
山口:現状ではデジタル広告において「ブランド毀損を0にする」「アドフラウドを100%防ぐ」というのは難しいですよね。一方、テレビCMや雑誌広告といったトラディショナルな広告はそれらが完全にゼロであると判断ができている。
トラディショナル広告は効果測定が肌感や推測になってしまう部分があるにも関わらず、ブランドが担保できることで多大な信用力がある。デジタルにおいてもこの流れを汲んでいかないと成長が鈍化してしまう可能性もあります。
ー広告効果の測定やアドベリフィケーションの定義そのものを考え直さないといけないフェーズに来ているという印象ですか?
山口:考え直さないといけない部分もあるかと思います。
日本のアドベリフィケーション対応はグローバルと比較して、決して遅れているというわけではないと実感しています。
アドベリフィケーションの計測自体はグローバルと比較して日本が一番活用していません。一方、弊社の機能である閲覧時間・閲覧回数とコンバージョンとの紐づけの分析は他国と比べて日本が一番活用しています。
日本のマーケターはロジカルなマーケティングを推進していて、指標をきちんと追いながらPDCAを回している。つまり、指標やKPIがアドベリフィケーションが関わるものにシフトされれば、アドベリフィケーションにおける測定ももっと進むはずです。
柳谷:これまでのCPCやCPAという課金モデルだけではなく、これからのデジタル広告を担っていく新しい指標では、対策と効果をワンセットで見ていくために一部をアドベリフィケーションが担っていくイメージではないでしょうか。
赤津:キャンペーンごとのKPIを定義づけている広告主の場合はそこから逆算して戦略を組んでいますが、KPIがしっかりと定まっていない広告主の場合、例えば、CPCやCPA重視になり、本来重要であるはずの「クリックやコンバージョンの先がどうだったか」が分からないことが多いと思います。
企業の経済活動という面では、広告の先の購買行動や売上、さらにその先の顧客のロイヤル化へ紐づけて考えることが重要なので、マーケティング部門が経営とより密になっていくと、おのずとKPIの考え方が醸成されていくように感じます。
ScaleOutDSPはIASとモメンタムの2社を搭載したDSPに!
ー話題は変わりますが、ScaleOut DSPのIAS接続についてお話を聞かせてください。ScaleOut DSPはすでにモメンタムを標準搭載で提供しているにも関わらず、IASと接続した背景は?
赤津:もちろん既存のモメンタムの機能が不足している訳ではなく、広告主や代理店などのユーザーから「IASの機能を搭載してほしい」という声が増えてきた結果です。プラットフォーマーとしてScaleOutが選ばれるプロダクトになっていくためには、ユーザーの要望に答えていく必要がありますし、グローバルブランドからもアドベリフィケーションソリューションとして指名されることの多いIASとの接続はプロダクト戦略を考えると自然な流れでした。
ーIASとの接続でScaleOutがアップデートした内容を教えてください。
赤津:一番変わったのはビューアビリティターゲティングの部分だと思います。
IASのビューアビリティで広告主が広告配信をコントロールできるようになるのは、ROIの観点からも非常に大きいアップデートかと思います。
山口:ビューアビリティターゲティングの詳細についてお話しすると、MRCが定める「広告ピクセルの50%が、スクリーンに1秒以上(動画の場合は2秒以上)表示された広告インプレッション」というビューアブルインプレッションの定義に加えて、弊社では、Prebid方式を採用しています。
Prebid方式では、インプレッションが発生する前の入札前段階でビューアビリティの高い広告枠かどうかをデータを使って判断しています。通常は事後の判断となることが多いビューアビリティをこれまでの計測データをもとに広告配信前に判断することで、効果が高い広告枠に配信することができるようになります。
ビューアビリティパフォーマンスの底上げが出来るようになったSacleOutは、アドプラットフォームとしてとても強いソリューションになるのはないでしょうか。
赤津:ほかにも、ブランドセーフティ対策はモメンタムでも対応していますが、両社ではそれぞれカテゴリーや判定基準が違っているため、グローバルで展開するIAS、日本語解析に強みがあるモメンタムの双方を導入することでブランドセーフティへの対策を盤石にすることができると考えています。
山口:ビューアビリティに関していうと、海外ではプラットフォーム自体が算出している数字や計測ツールを見ながら、弊社などのアドベリフィケーションベンダーが提供するツールを併用しているクライアントもいます。赤津さんのいう通り、モメンタムと弊社では基準や見方が異なるところがあるので、複数利用する価値はあると思います。
柳谷:その点ではモメンタムも同意見で、取得している認証や基準以外で見ても、弊社は日本のクライアントのニーズを汲み上げて日本のインターネット文化に特化したブランドセーフティのカテゴリーを用意しており、IASと弊社の両ツールは良い形で共存が出来ると思っています。
2020年、アドベリフィケーションは次のステップへ
ー最後に、各社の2020年の戦略をお話いただけますか?
赤津:ScaleOut DSPは今年IASとの接続が完了しましたが、今後も必要に応じてアドベリフィケーションベンダーとの連携を図っていきたいと考えています。
プロダクトの思想として、広告主によい面を提供しながら、媒体によい広告を提供する、という三方よしの考え方が根幹にあるので、そういった部分をパートナーと強化していきたいですね。
こうした整備ができてくれば広告主は本来の意味でのマーケティング活動に集中できますし、2020年はその土台をしっかりと作っていきます。
また、ScalOutDSPでは動画広告に注力していくことも考えています。消費者への訴求効果ではやはり静止画より優れている部分が多いので、ブランド広告を中心に今後も提供の幅は広げていきたいですね。
ーアドベリフィケーションベンダーのお二人はいかがでしょうか?業界の展望も交えて教えてください。
山口:2020年のアドベリフィケーションはこれまでとは変わってくると思います。
まず、計測の範囲は確実に増えていくでしょう。もしかすると、日本でも国内で取引されているプログラマティック広告の100%を計測できる世界観が、2020年から2030年にかけては実現するかもしれません。
弊社としては先の話にもあった通り、アドベリフィケーションがマイナスをゼロにする対策ツールとしてではなく、ゼロをプラスとするマーケティングの重要指標として活用してもらえるよう、さまざまなサービス展開やそれらに紐づいた調査等を発表していきます。
また、私自身はIASのエバンジェリストを務めていますが、会社の枠にとらわれずにアドベリフィケーション業界全体の啓蒙活動を続けていきたいと考えています。アドベリフィケーションについての認知は2019年前半の調査でも約2割と言われています。認知がまだまだ低いなか、業界全体で成長をして底力をあげていくことが必要だと考えているからです。
柳谷:弊社は、2019年度はエージェンシーを対象にHYTRA DASHBOADというブラックリストを共有するサービスを展開しました。自社の資産ともいえるブラックリストを解放したのは、やはり、業界全体でアドベリフィケーションという課題に取り組む必要があるからだと考えたからです。
また、2020年1月にはモメンタムが共同開発した「アドフラウド保険」が損害ジャパン日本興亜保険株式会社よりリリースされました。アドフラウドを保険という形で補填するサービスは初の試みです。山口さんもおっしゃっていた通り、アドフラウドを100%防ぐことは難しいと思います。そのなかで一定の被害が出続けたときに、救済ができるような仕組みが必要だと考え、賛同いただいた損保ジャパンさんと1年以上かけて商品を作り上げました。
2020年の展開としては、今後ニーズが高まる動画メディアに対してもプロダクトを提供していければと考えていますし、先日すでにリリースした、インスタグラムのインフルエンサーなどにみられる水増しのフォロワーを広義の意味でのフラウドと捉えたインフルエンサーフラウド検知のサービスなど、幅広い価値を提供していきます。
ー以上、ここまでは2020年1月に行った取材でお話いただいた内容となります。
プレス発表に合わせて本取材の公開は8月になりましたが、改めて1月にお話いただいた内容を振り返りながら、2020年の展望についてのアップデートと、withコロナ時代におけるアドベリフィケーションについて、それぞれコメントをいただきました。
山口:鼎談から半年ほどたちますが、コロナ禍はもちろん、米国各地で勃発した大規模なデモなど、世の中全体が大きく変わっていく様を実感しています。
デジタル広告の世界でも、出稿の停止・減少から、消費者の在宅時間が増えたことによるインターネット利用の増加まで、良い悪いを問わず随所に変化が見られました。5月に実施した弊社の「新型コロナウイルスによる消費者のネット利用実態調査」では、消費者はコロナ禍での広告の一斉自粛を求めていない一方、ブランドや商材によっては匙加減も求められていることが浮き彫りになりました。
IASは、ブランド適合性ソリューションや、YouTube、Facebookとの連携強化など、変化に対応する新しいソリューションをリリースしてきました。ブランド適合性は従来の「セーフかアウトか」というブランドセーフティの二軸を超え、ブランド毎の独自のアイデンティティや時事に沿った対応を可能にします。すでに国内でもクライアントにも「感染病」に関する「ネガティブ」なニュースや、「人種差別」や「暴動」に関する記事を避けながら、複雑化する世界情勢の中での効率的なキャンペーンの継続にお役立ていただいております。今後は日本特有の「自然災害」や「政治」に関するトピック、ブランド毎の「業種」+「ネガティブ」な感情を連想させるコンテンツの除外など、多種多様なご利用が予想されます。
柳谷:取材後のいま、いわゆるコロナ禍の状況では、世の中の生活やそれに伴う消費行動など、あらゆるものが変化しつつありますが、モメンタムとしては「無価値な広告をゼロにする」というミッションのもと、スタンスを大きく変えることなく時流に合わせたプロダクトを提供し続けています。
例えば、インタビューの最後で触れた動画対応については動画広告におけるブランドセーフティ対策ソリューション「HYTRA Safe Video List」をローンチし、巣ごもりの中で接触の機会が増えたYouTubeに対して安心安全な広告配信を実現すべく、すでに大手広告代理店様でも導入いただいております。
また、モメンタムが共同開発し損害ジャパン日本興亜保険株式会社様が提供する「アドフラウド保険」に続き、アドベリフィケーション対策への新しいアプローチとなる枠組みを超えた取り組みは今後も積極的に展開していく予定です。
モメンタムでは2020年後半も、これからもアドベリフィケーション対策の基本となるソリューション提供を基盤に、これまでのアドベリフィケーションの概念を超えたさまざまなチャレンジを行っていきます。
赤津:この取材のしばらく後に、新型コロナウィルス感染症の世界的な感染拡大により、まさしく人々の行動は大きく変わらざるを得なくなったわけですが、デジタルマーケティング自体は一部では変わってきた点もありつつも、いまだ大きくは変わっていないように感じます。
広告主の業種は、コロナ禍特有の事情もあり変化は生じています。特徴的なのは巣ごもり消費関係で、ECやデリバリー関係の需要が高まっていたり、テレワークに必要なものの訴求が増えたりしたことでした。当初は一時的な影響とも思っていましたが、短期間では解決しない問題になってきている以上、広告主の商売やサービス提供の方法を変えざるを得ないようになってきているように思います。マーケティング手法を変えていくのは、この商売、商品、サービスが変化した後になるのではないでしょうか。
さて、このコロナ禍の中、アドベリフィケーションへの対策にも変化が生じているように思います。象徴的なのは、ブランドセーフティの機能が積極的に使われ、とかくコロナ関係のネガティブなニュースが世界中で溢れている昨今の状態では、ネガティブな事象への敏感な反応と、その対策としてのコンテキストを活用したブランドセーフティが多く見受けられました。コロナ禍による新しい日常の生活は、恐らくそれ以前の生活よりも、インターネットを活用したメディアに触れる機会が増えていると思いますし、マーケターにとっても自ずとアドベリフィケーションの必要性が増しているのではないでしょうか。
最後に、コロナ禍だけではなく、この間、プログラマティックの世界は、CookieやIDFAなど取り扱いに関わることをはじめとした、大きな変化が起きています。
それらも含め、デジタルマーケティングに関わる全てのプレイヤーは、これから起こる世の中の行動や事象の変化に対応し、自らも大きく変わる必要性がある分岐点に立っているように思えます。
ーアドベリフィケーション業界を牽引する、IASとモメンタム、2020年も広告取引のさらなる透明化を宣言するSupershipによる鼎談でした。
貴重なお話をありがとうございました!