niconicoアプリの収益性UP!ドワンゴ流Ad Generationの使いこなし術 #Supershipお客様事例
公開日 : 2017.08.07
#Supershipお客様事例では、Supershipが提供するプロダクトを利用いただいているお客様の生の声をお届けしてまいります。
第1回目となる今回は、媒体社向けの広告配信プラットフォーム「Ad Generation(アドジェネ)」を導入いただいている株式会社ドワンゴ様にお話を伺いました。
参考記事:スマホ向け国内最大級SSP 「Ad Generation」の現状と今後の展望について
eCPM前年度比65%に落ち込んだ運用型広告の大幅改善
ドワンゴが提供する日本最大級の動画サービス「niconico」では、スマートフォンアプリ(iOS / Android)にとどまらず、オフライン領域でも「ニコニコ超会議」の企画・開催をするなど、幅広いビジネスモデルを展開されています。
なかでもデジタル広告は、自社構築したアドサーバーを介して、純広告の配信をメインに、残りのインベントリを運用型広告でマネタイズするというハイブリッド型のマネタイズが行われています。
当初、スマートフォン領域の運用型広告は、アドネットワーク数社のデイリーレポートを担当者が取りまとめ、その日の夕方の会議でパフォーマンスに応じた配信比率を決定し、自社アドサーバーにて手動調整する形で行われていました。
しかし、2016年半ばから徐々に各社の広告単価が下がりはじめ、アドネットワークの平均eCPMが前年度比65%にまで落ち込んだことから、広告運用体制を抜本的に見直す改善プロジェクトが立ち上がりました。
その結果、いくつかのフェーズを経て、現在はなんと前年度比134%にまで成長したという運用型広告の改善事例についてお話を伺いました。
広告識別子を使った高単価なRTB、各種ターゲティング案件の配信に対応
改善プロジェクトでまず始めに行ったのが、広告識別子IDFA/ADIDをつかった高単価な広告配信への対応でした。
niconicoでは、アプリ面も自社アドサーバーを介して純広告を販売している為、SDKでの実装ではなく、アプリにおいてもウェブサイト向けのJavaScriptタグによって広告配信が行われています。
しかし広告識別子は、通常SDKによって受け渡しがされており、SDKを介さずにJavaScriptタグでも独自に広告識別子を受け渡すには、独自の仕組みをアプリ側に組み込まなければなりませんでした。
niconicoがSDKを使用しない理由を営業本部広告営業部 第4セクション セクションマネージャの永山隆浩氏は次のように語ります。
「純広告と運用型広告の配信は、なるべく自分たちの開発した仕組みでまとめて管理したいニーズがありました。その理由は、SDKを入れてしまうと純広告を含めた全てのオペレーションを変更しなければならず、運用コストが増えてしまうからです。
またSDKを入れると、SDKとniconicoアプリの機能が干渉するリスクも考慮しなくてはいけません。広告が表示されないだけならまだしも、アプリの挙動自体にも影響が出てユーザー様にご迷惑をお掛けしてしまうケースも十分に考えられ、検証に多くの時間を要してしまいます。それらのリスク、工数と得られる収益を天秤にかけて検討した結果、アプリ面の広告枠においてもJSタグを使用することにしました」(永山氏)
アプリ側で広告識別子を取得出来るようにする等、JSタグを使用しての広告識別子によるターゲティングを実現するにはアプリ側にも手を加える必要があり、実装するためには開発リソース確保にも苦労したそうですが、低下してしまった広告収益を改善するため、まずはその対応に踏み切ったのだそうです。
広告識別子対応により収益性は少しずつ改善するも、3つの課題が浮上
広告識別子を使ったRTBや各種ターゲティング広告への対応により、各社の広告単価は少しずつ回復し始めました。そして次なる一手として行ったのが配信アドネットワーク・SSPの追加です。
これまでの運用により、少数まで絞り込んだアドネットワーク・SSPを一気に7社にまで拡大し、さらなる収益性の向上を試みます。しかし、ここで新たに運用リソースに関する2つの課題が出てきました。
各広告事業者から取得する配信レポートが、特に海外事業者だと1日遅れで更新される場合もあり、各社で更新タイミングが異なるレポートを一通り取りまとめるだけでも一苦労です。また、管理・運用している広告枠は数百枠に及ぶため、毎日2〜3時間ほどの作業工数がかかっていました。
配信比率調整は、配信レポートの更新が遅い広告事業者にあわせて、前日のレポートを元に行なっていました。しかし、時間ごとに広告単価が大きく変動する運用型広告において、1日遅れのデータで意思決定を行うことは、ドワンゴ様にとって理想的な運用体制ではありませんでした。また、手動で行う配信比率調整の作業自体にも時間がかかるため、何か急な状況の変化があると即座に対応することが難しい状況でした。
配信比率調整の取りまとめを行う営業本部広告営業部 第4セクションの大石優造氏は、当時を次のように振り返ります。
「アドネットワーク事業者の方から、『広告単価を特別に調整したので、配信比率を当社に寄せてみませんか』と提案されることが多くあります。しかし、その日の配信比率調整が終わった後に連絡をいただくことが多く、当日中に再調整出来ないことがほとんどでした。本来なら刻々と変わる状況にもっとフレキシブルに対応する為、配信比率調整のタイミングを増やすことも検討しましたが、あまりに手間が掛かるため1日1回の調整が精一杯でした」(大石氏)
そんななか、プレスリリースをきっかけにAd Generation利用を検討
手間がかかるアドネットワーク7社の手動運用を、なんとか気合いで乗り切っていた時期に、ちょうど目に止まったのが、2017年1月に発表されたAd Generationのプレスリリースです。
その内容は「Ad GenerationがSDKだけではなく、JSタグでの広告識別子をつかったRTBなどのターゲティング広告の配信にも対応したこと」を伝えたものでした。
そしてドワンゴ様は、ポリシー上SDKの実装ハードルが高いniconicoでも、実装可能であるAd Generationのテスト利用を開始します。
テスト利用で早くも収益性向上を実感
はじめはネットワーク広告事業者の1つとして、他社と同じ比率で配信していたAd Generationですが、収益性は順調に上昇していきました。
その大きな要因は、Ad Generationのサーバー間連携技術により実現した海外アドネットワークの高パフォーマンスな広告配信効果でした。
当時の状況を大石氏は次のように語ります。
「Ad Generationの広告配信を開始してしばらくすると、レクタングル枠のCPMが急激に上昇しました。上昇理由を確認したところ、Ad Generation経由で海外アドネットワークのAppLovinの配信が始まったと聞いて驚きました」(大石氏)
ドワンゴ様では以前から海外の広告事業者であるAppLovinに注目していたそうですが、AppLovinの導入にはやはり基本的にはSDKが必要となるため、niconicoでは利用出来ませんでした。
しかしAd Generationを介すことで、SDKなしでもAppLovinの広告配信が可能になり、また同時に、RTBによる高単価な広告配信によってさらに収益を底上げすることが出来たそうです。
Ad Generationの利用を開始したのは、例年閑散期となる2月でしたが、徐々にAd Generation経由の広告配信を増やした結果、平均eCPMは前月を大きく上回ったそうです。
Ad Generation本格利用開始へ
こうしたテスト利用の結果、他のネットワーク広告事業社と比べてパフォーマンスが高かったことから、ドワンゴでは次の利用ステップとして、アドサーバーとしてのAd Generationのフル活用へ踏み切ります。
これまで自社のアドサーバーで行ってきた運用型広告の配信をAd Generationで一括管理するというものです。
その結果、このような効果が得られたそうです。
自由度の高いアドサーバーというプロダクトコンセプトにより、Ad Generationでは連携アドネットワーク以外の直アカウントのアドネットワークの配信レポートも管理画面でまとめて集計が可能です。その結果、各アドネットワークのレポートを手動で集計する作業をする必要がなくなりました。
「Ad Generationが配信結果をまとめてくれるので、担当者が手分けをして1日がかりでレポートを作成する必要がなくなりましたし、チームの残業時間削減にもつながりました」(大石氏)
“タイムリーな配信比率調整”が出来ないという課題も、Ad Generationによって解決しています。各社の収益性にもとづき、Ad Generationが1時間に1回のタイミングで配信比率の自動最適化を行うため、高収益な広告をタイムリーにキャッチ出来るようになりました。
配信比率の自動最適化は、広告単価の上昇だけでなく、マネージメント的な観点においても有効だったと永山氏は語ります。
「数字を元に配信比率を自分たちで判断していた頃は、数字の変化を見落としてしまい、収益のチャンスを逃してしまうこともありました。収益機会の損失はメンタル的にもダメージを引きずるので、自動最適化でそれを防げるようになったことは大きいです。また、比率調整を効率化することが出来たことで、次の収益を生むための新しいアクションにリソースを投下出来るようになりました」(永山氏)
さらなる収益性を求めた結果辿り着いたのは、ドワンゴ流“セミオート”運用術
これまで手動でやってきた作業が完全自動化され、収益性にも手応えを感じた永山氏と大石氏ですが、同時に全てが自動化されることへの不安も感じていました。
そこで二人はある時、Supershipに訪問し、Ad Generationの設定や機能について事細かなレクチャーを担当者から指南を受けた結果、ドワンゴ流の“セミオート”運用術を見出します。
“セミオート”運用術とは、たとえばRTB広告のフロアプライス設定を手動/自動で切り替えたり、上位アドネットワークグループを何社に設定するか、その上位グループで配信比率を何に設定するかなど、その時期に応じたかなり細かいチューニングを行うものです。配信比率の調整をデフォルト設定で行う利用者様が多い中で、ここまでの姿勢で取り組む企業はそう多くありません。
「配信比率の調整はこれまですべて手動で行ってきたので、Ad Generationによって完全自動化されてしまうことの不安が正直ありました。そこで、Ad Generationの挙動や機能をちゃんと理解した上で、自動運用とマニュアル運用、それぞれの良さを活かした“セミオート”的な運用をしたいと考えたのです。Ad Generationでは、自由度の高い広告配信チューニングが出来るので、非常に納得感のある運用が出来ていますし、その成果はeCPMにもはっきりと現れています」(永山氏)
今後も広告事業者とのサーバー間連携とスピーディーなサポート体制に期待
このように、完全にAd Generationのパワーをものにしたドワンゴ様に対し、『ジ・アドジェネ』ことAd Generationのサービスを統括するサプライ事業部 事業部長 池田寛はこうコメントします。
「まさかここまでAd Generationを使いこなしていただけるとは思いませんでした。
ドワンゴ様の生々しい広告運用の実態にフィットしたプロダクトになっていて光栄です。
なんだかパワーが湧いてきました。
昨今、『透明性』というキーワードを良く目にします。
これはヘッダービディングをはじめとした公平なプロセスで入札される仕組みであったり、広告主が量より質を重視する傾向が顕著になっている中でのアドフラウド対策、そして、媒体社様自身のブランドセイフティー対応であったりと、まだまだやるべき課題はたくさんあります。
このような潮流の中で、Ad Generationは媒体社様の負荷を減らしながら、広告主にも安心していただけるような、本質的な広告取引を行えるプラットフォームを全速力で目指しております。
そして何より、エンドユーザーがその広告を楽しんでもらえるような『三方良し』の環境を作れれば言うことないですね」(ジ・アドジェネ)
「はい、Ad Generationはアプリ向けの広告配信では国内最大級のシェアとのことで、世界各国の広告事業者から接続オファーが来ると聞いています。是非海外のパフォーマンスの高い広告事業者とも積極的に接続して欲しいですね。
サーバー間連携による技術力の高さや、スピーディーで細やかなサポート体制にも助かっています。今後も、ヘッダービディング、PMPなどのトレンドにもユーザビリティを考慮したAd Generation流のやり方で対応してくれることを期待しています」(大石氏、永山氏)
すべてのユーザー、すべてのインプレッションに対して、楽しんでもらえる広告を提供していきたい
niconicoでのAd Generation導入から半年が経過した現在、eCPMはさらなる上昇トレンドにあり、順調な広告運用が続いています。また現在、スマートフォンアプリ「ニコニコ漫画」においてもAd Generationを導入しており、こちらでも順調な広告収益が得られています。
今後の展望について、永山氏は次のように語りました。
「広告って邪魔なものとして捉えられがちですが、いつかはすべてのユーザーの、すべてのインプレッションに対して、喜んでもらえる広告を提供出来るようになればいいなと思います。Supershipの力も借りながら、そのような世界を実現してきたいと思います」(永山氏)
- まとめ
- ドワンゴ様、この度は取材にご協力いただきましてありがとうございました。
Ad Generationに少しでもご興味を持っていただきました媒体社様は、是非お気軽にお問い合わせください。