9月4日に開催されたApp Annie主催の定期セミナーDECODE における講演をレポートしております。
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調査データからみる、日本のビデオストリーミングアプリ市場とその特徴は?:App Annieセミナーレポート
本記事は、「広告主から見るモバイル時代のメディアとの付き合い方」についてのパネルディスカッションから抜粋してレポートします。
パネルディスカッション全体を通して挙げられていたのが「お客様目線」というキーワードでした。
キリンの島袋氏によると、キリンでは現在「お客様主語のマーケティングに注力をしている」とのことで、データドリブンな環境構築とデジタルならではのコミュニケーション事例としてLINEとのコラボレーションで展開している取り組みが紹介されました。
●キリンとLINEのコラボ自販機「Tappiness」
首都圏、関西圏ほか全国都市部で設置されているキリンのTappiness対応自販機でLINEの画面をかざしてドリンクを購入すると、ドリンクポイントがもらえるというこの企画。支払い方法には現金、ICカードなどの電子マネー、LINE Payのほか、15本で1本無料となるドリンクチケットがあり、ドリンクチケットはLINEを通じて友だちにプレゼントすることも可能。位置情報を使って近くのTappiness対応自販機を探すこともできます。
キャンペーンサイトはこちら
◀キリンのLINE公式アカウントと友だちになるとスムーズに遷移できるようになっている。 |
2017年春から開始したこの取り組みで、自動販売機とLINEがつながったことにより、今まで以上により顧客の姿が見えてくるようになったとのことです。
従来からのECサイトや店舗経由の商品購入であれば、購買者の情報などを取得しようとすることは、いまや当たり前で可能だと思います。しかし、自動販売機経由の場合は把握するのが難しかった。そこで、LINEを活用することで、LINEの登録情報(顧客が許諾してるデータのみ)から、より具体的なデータを扱えるようになったのは、「顧客を理解する」というマーケティング活動の上、革命的ともいえます。
LINEを活用することで、「認知」だけでなく直接「購買」までつなげることができた今回のような取り組みを、今後は他の企業とも一緒に展開していきたいと語られていました。
弊社の中村からも、「ユーザー不在のマーケティング」に対する危機感が語られました。
例えば「デジタルとテレビで予算のアロケーション(振り分け)をどう振り分けるべきか?」という広告主からよくいただく相談には、質問自体にずっと違和感を感じているとのこと。
テレビとデジタルの予算配分は、どのユーザーとコミュニケーションしたいかによって判断すべきもので、これまでの結果のみを指標に決定すべきものではありません。
まず「ターゲットとなるユーザーがどんな人なのか?」という原点に立ち返り、「ターゲットがどういうシーンでどのようにモバイルを使うのか?」「そもそもターゲットはモバイルを頻繁に使う人なのか?」という可能な限りユーザーを知る努力をして、マーケティングの全体像を描いてから一つ一つの施策に落とし込んでいく必要があります。
「ターゲット像を想像で設定すること」と「しっかりと裏取りをして理解したうえで実施すること」では、明暗がくっきりと別れることは経験上明白なのだそうです。
例えば「ファッションブランドが若い世代向けのプロモーション動画を制作した」として、ターゲットとなるユーザーが毎月パケットをかなり節約しながらスマホを使っている場合は、スマホよりも店舗に無料WIFIをつけるなどのサービスが好評なのかもしれません。
このように、マーケティングデータから生活者の姿をつまびらかにし、マーケティングの全体像をしっかりと押さえたうえで個々の施策を行うことがポイントであると語っていました。
両名とも口を揃えて「とにかくユーザーの視点に立ったデジタルマーケティングができているかを今一度見直すことが必要」とのことでした。
中村は朝起きて一番最初に触れる端末として、枕元に置いてある(ことが多いであろう)スマートフォンはコミュニケーションの入り口として非常に強力であるものの、テレビの影響力は未だに大きく、実際中村のお子さん達がテレビを見なくなる未来は想像できなさそうだな、と日々感じているそうです。
スマートフォンの広告に関する課題としても「まだまだPCの延長に感じるフォーマットが多い」と感じており、今後、スマートフォンならではの広告表現が確立されてくるとますます発展していくし、我々もそこを目指していきたい、とスマートフォン広告市場のさらなる成長に向けての期待感を語り、パネルディスカッションは大盛況に終わりました。
取材にご協力いただきましたApp Annie様、キリン株式会社様、本当にありがとうございました。